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86話 些細な要望

 リルがシィの所に行く理由は単純なものだった。

 昨日はあの後すぐに落ちてしまい装備の更新をしていなかったのだ。


「どんな装備を作ってくれるかな」


 リルはそう呟きながらわくわくとしていた。

 ベールの事とはいえ、この三日間、ずっと彼女と一緒にいるのだ。

 そんな彼女が強化されて嬉しくないわけがない。

 何せいまだ彼女はNPCが売っている装備のままだ。


「ベールはどんな装備が良い?」

「どんなって……うーん」


 そう言われベールは悩むそぶりを見せる。

 そして――。


「でも、ゲームなんだし見た目ってそんなに自由なの?」


 現実であれば自分の好みの服を見つけることは可能だ。

 お金さえあればオーダーメイドという手もあるだろう。

 しかし、これはゲーム。

 あくまで仮想世界。

 いくら周りに現実の人間が居たとしてもそれは変わらない。

 そう思って当然だろう。

 しかし、リルはそれに対し――。


「それがこのゲームのいい所なんだよ、ある程度なら自分でデザイン出せるんだって、勿論職人任せって事もできるよ」

「そ、そうなの?」


 リルの言葉に対し驚きつつも嬉しそうに表情を明るくするベール。

 すると彼女は自身のはいていた短めのスカートを少し握り――。


「な、長いのが良いなぁ……」

「自由を気にしてたのに案外素朴な要望だね」


 恥ずかしそうにしているベールに対しリルはそうつぶやく。

 すると彼女は――。


「い、いくらアバターでもここまで短いのは恥ずかしいよ!?」

「そう言えばベール学校でも膝がギリギリ見えるぐらいだもんね」


 真面目だなーっと思っていたリルだったが、そう言った理由があったのか……と理解をすると乾いた笑い声をあげる。


「リ、リルちゃん! 私にとっては重要なんだよ?」

「いや、短い方が可愛いと思うよ? 似合うし……」

「可愛くても恥ずかしいの!」


 どうやら相当な様子だ。

 確かにゲーム内の今の装備はかなりきわどいと言って良い。

 通常であれば全く別の自分であるから気にすることもないのだろう。

 しかし、二人は現実の姿とほぼ同じだ。 

 それもあって恥ずかしさが際立つのだろう。

 ベールは顔を真っ赤にすると腕をぶんぶんと振りながら訴えてきた。


「ご、ごめんって……」


 それに対しリルは申し訳なさそうに謝ると目的地に着いたことに気がつき――。


「それじゃ、その要望しっかりと伝えないとね」


 そう言いつつも、似合うのになぁ……とリルは自身の心の中でつぶやき。

 シィの店の扉を開けるのだった。

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