84話 迷子の迷子のベールちゃん2
「疲れた……」
ソファーにぐったりと倒れこんだリル……いや、冬乃は眠気に襲われつつもスマホを操作する。
linkの通知が来ており、須藤鈴からのフレンド希望の連絡だ。
そう言えばまだ繋がっていなかったなぁと思いつつ彼女は承諾を押す。
「鈴だからベールって事かな」
そう呟きながらもうとうととし始めた冬乃。
彼女の耳にはパタパタという足音が聞こえてきた。
誰が来たんだろうか?
そう思いつつも瞼を閉じかけると――。
「こんなところで寝るなよ」
「ぅぅ……」
弟である秋也だ。
彼は呆れつつも冬乃へと目を向け――。
「部屋に戻る……」
リルはゲーム内の事を思い出し、顔を赤らめると部屋へと戻っていく……。
不安と恐怖があったとはいえ、大勢の前であんなことになってしまった。
その上、弟に助けられた。
その事が恥ずかしくなってしまったのだ。
部屋へと戻った彼女はベッドの上へと倒れこみ、ゆっくりと目を閉じる。
「この二日で色々あったなぁ……」
たった二日だ。
だが、凄まじい勢いで色々と起きた。
濃厚すぎる休みに満足感と不安を感じつつ、眠気に抗う事も出来ずゆっくりと眠りの中へと落ちていく……。
翌朝、なんとか起きれた彼女は電車に乗りつつ欠伸をする。
「眠い……」
思わずそうつぶやいた彼女は眠気に抗いながらも学校へと向かう。
辿り着いた学校の中を歩き、通いなれた教室へと向かい。
自身の机へと向かう中……。
「あれ?」
いつもなら着ているはずのベール……いや、須藤鈴がいないことに気がつき首を傾げる。
彼女は学校からそれなりに遠いはずだ。
だから、いつも早く来ていると言っていたのを覚えていたのだ。
あまり絡んだことがこれまでなかったのによく覚えているなぁと思いつつ不安になった冬乃は――。
「大丈夫かな?」
そう思いlinkアプリを起動するとすぐに彼女へと連絡を取る。
思いもよらないほど方向音痴の彼女の事だ。
通いなれた道でも迷うかもしれない。
そう思ってしまったのだ。
するとすぐに返事が来たのだが……。
『寝過ごして、知らない駅に来ちゃった……乗り換え分からないよー!』
その返事に冬乃は苦笑いを浮かべた。
本人は本当に困ってしまっているのだろう、冬乃は通話ボタンを押し――。
『リルちゃぁ……ん』
「今どこの駅に居るの?」
通話とチャットを使い彼女を学校へと道案内するのだった。
休み時間に入ると鈴は冬乃の席へと向かってきた。
「えへへ。今日はありがとうね」
「う、うん」
ゲームの中では特に気にせず話せたが、普段は彼女と話すことはそこまで多いわけではない。
だからこそ少しぎこちなくなってしまい。
「あれ? 珍しいじゃん」
とクラスメイトに言われる始末だ。
「あーうん」
「冬乃、緊張してるし」
学校ではよく話す方の友人である雛に笑われてしまい。
冬乃は少し顔を赤くする。
「えっと、それでね?」
鈴は周りを気にしつつ冬乃へと話しかけてくる。
恐らくはアスカレイドオンラインの話だろうと冬乃は察したが……。
「ね、鈴ちゃん今日帰りさー」
彼女へと話しかけるクラスメイト。
見て見ればいつも鈴と一緒に居る人だ。
「呼んでるよ?」
「うう……」
彼女には彼女の友人がいるのだ。
常に冬乃と一緒なわけではない。
そう思っていたのだが……。
「ご、ごめんね、今日はリ……」
「リ?」
「……冬乃ちゃんと約束あるの」
鈴はそう言うと友人へと向け頭を下げ、冬乃はその対応に驚いた。
「え? でも……普段灯さんと話さないでしょ?」
「う、うん、実は金曜日にちゃんとお話ししたんだよ、ね?」
「あ、う、うんそうだけど……」
いいの? と彼女へと目を向けると彼女はその視線に気がつき首を縦に振るのだった。




