7話 笑いもの
準備を終えたリルは横目でベールを見る。
どうやら彼女も装備を更新したようだ。
と言っても杖だけだが……。
まぁ、最初にお小遣い程度のゴールドが支給されているからそれで購入したのだろう。
だが、武器を真っ先に選ぶとは思わなかった。
初心者用の武器にしては大きな宝珠がついており特徴的だなぁ……と考えていたが、そんなことはすぐにどうでも良くなった。
「よぉ」
あの三人がにやにやと笑いながら目の前に姿を現したからだ。
「逃げるつもりなんてないけど?」
彼女がそう言うと大笑いをする男たち。
彼らも装備を整えたのだろう。
見た目が変わっていた。
随分とお金がかかってそうな装備だ。
しかし、そんなことはどうでも良かった。
「それで、街中で決闘する気?」
へらへらと笑う男たちの中、一人は一歩前へと歩みでる。
そして、リルを値踏みするかのようにじろじろと見つめてきた。
思わず嫌悪感を感じたリルの前の前には新たなウィンドウが現れ『性的不快感を感じました。通報しますか?』という文字が書かれていた。
この場ですぐに押してやってもいい! そう思ったのだが……。
「へへ、冷静に見て見ればお前達二人とも中々かわいいじゃん、中身が不細工かもしれないけどさ、アバターと声は良いし……そうだ負けたら飼ってやるよ」
どこまで人を馬鹿にすればいいんだこの人は……。
リルの中でふつふつと湧き上がった怒り。
そこまで言うなら手加減無用で叩きのめしてしまおう……そう考え、通報をしないことにした彼女は――。
「こっちが勝ったら二度と顔見せないでくれる?」
怒りに声を震わせそう伝える。
すると男たちは笑い始め――。
「こ、声震えてるぞ!!」
「こ、怖いんですぅ……許してください! ってか?」
「あはははははははは」
怒ってるんだよ!! そう叫びたかったが、それを言っても余計笑うだけだろう。
とにかく今は――。
「それでここでやるの? やらないの?」
相変わらず怒りのせいで声は震え、男は笑うが……。
「ここじゃ、やらねぇよ……こっちだ!!」
どうやら大通りの方でやるみたいだ。
おとなしくついて行くことにすると――。
「私、あの人達嫌いになりました……」
そうつぶやく声が聞こえた。
ベールだ……彼女の顔もまた怒っているように歪んでいる。
寧ろ今まで嫌いじゃなかったのか? と疑問ではあったが――。
「大丈夫、負けないし……人が多いところできっかり負けてもらうから」
リルは自信満々にそう伝えると彼女はリルの方へと目を向けてきた。
そして、えへへと笑い始める。
『うわぁ……なにこの子なんか分からないけど妹みたいで可愛いかも』
実際、彼女に妹はいない。
しかし、いたらこんな感じなのだろう。
そう思いながら……。
「そうだ、フレンド登録しておこうか」
「フレンド……? もう友達ですよね?」
何を言ってるのだろうか? と考えていそうな彼女に対しリルは仕方がないなぁ……と思いつつ。
「フレンド登録っていうのは、linkと同じだよ、お互いにつないでれば分かるし、そうじゃなくてもメールを送る事が出来るんだよ」
「便利ですねー早速しましょう!」
ニコニコと笑う彼女とフレンド登録を交わすと改めて前を歩く男たちへと目を向ける。
装備が更新されていることから、油断だけはしないよう気を付けないと……と警戒するのだった。