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78話 フレンド登録

「あっつい……」


 がっくりと項垂れたのはクロネコだ。

 彼女はどうやら暑いのが苦手のようだ。


「でも、確かに暑い……」


 リルはパタパタと手で自分の顔を仰ぎながらそうつぶやいた。

 VRではそれなりの暑さは感じる。


「流石よね」


 カナリアはそう言いながら涼しげな表情だ。

 そう、一人だけ涼しげなのだ。

 おかしい、そう思ったリルは彼女をじっと見つめてみる。

 するとカナリアは何かを持っていることに気がついた。


「それなに?」


 リルが訪ねると彼女は微笑みながら――。


「この前手にいれたレアドロップね冷風石、本来は腐るアイテムとかを保存しておくためのものだけど……便利ね?」

「い、いいなぁ」


 そんな便利なアイテムがあるのかとリルはじっとそれを見つめる。

 するとカナリアはリルへとその風を向け、心地よい風が吹いてきた。


「わ、私もお願いします!」


 ベールはリルの横へと近づき、その風に当たる。


「あー気持ちいい……」

「これ一つ欲しいねー」


 二人はあまりの心地よさに溶けたような声を出し――。


「あのさ、目的忘れてない?」


 クロネコは呆れたようにため息をし、恨めしそうにリルたちを見る。

 するとトートは笑い。


「いいじゃないか、にぎやかなほうが楽しいよ」

「トートは相変わらずだなぁ……普段ソロなのに」

「い、痛い所をつくなぁ」


 彼はあはは……と言うと口元を引きつらせる。

 ソロとはそのまま、ネットゲームでも一人で遊ぶことを主にするプレイヤーだ。


「そう言えばなんでトートさんはソロなんですか?」


 リルが訪ねると首を傾げるのはベールだ。

 彼女の様子に気がついたリルは彼女の疑問に気がつき……。


「ソロってのは一人で遊ぶプレイヤーだよ」


 そう言うと合点が行ったのだろう。


「トートさんはお友達が居ないんですね?」


 恐らく彼女はネットゲームの友人がいない、という事だろうが……。

 その言葉は深く刺さったようで彼はうずくまってしまう。


「いや、まぁ……そうだけど」

「そうなんですね!」


 笑みを浮かべているベールはやはり悪気がなかったのだろう。

 しかし、いたたまれなくなったリルは――。


「あ、あの……フレンド、登録しておきます?」


 彼へと尋ねる。

 しかし彼は――。


「い、いや、君は女の子なんだし、そんなすぐにフレンド登録は……」


 何を言っているのだろうか? とリルは疑問に思ってしまったが……。

 すぐに騎士の事を思い出し、彼のような人もいるのだろうと不安に思いつつ――。


「あ、う……」


 言葉を詰まらせてしまう。


「今は性別がすぐに分かるから、その点は昔の方が良かったのかもしれないわね」


 カナリアはそんな事を口にし、ため息をつく。

 彼女にも覚えがあるのだろう。


「とにかく君たちは女の子なんだし、自分でも気を付けたほうが良い」

「いや、まぁ……そうだろうけど……」


 クロネコは苦笑いをする。

 そんな話をしていると……。


「まぁ、とにかくついたしとりあえずはレベル上げかな?」


 目的地に着いたようで彼女はリルの方へと目を向ける。

 その視線に気がついたリルは慌てて頷く。

 だが、その脳裏にはやはりあの騎士の事が思い浮かんでしまい……。


 大丈夫……あの人はBANされたんだから……。


 そう思っても彼女の中に芽生えた恐怖という感情は意志に反し膨れ上がっていく。

 それもそうだろう。


「リルちゃん?」

「……う、うん! 頑張ってレベリングしよう!」


 ベールが心配そうな声を上げ、リルは慌てて顔を上げそんな事を言う。

 だが、その声は明らかに震えており……。

 カナリアとベールは首を傾げるのだった。

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