71話 予想外の突破方法
リルのスキルは8連撃という今までにないダメージを叩き出し――。
騎士のHPを後一撃という所まで削った。
しかし、トドメをさせていない。
このままでは再び負けるの可能性が高くなる。
しかし――。
「まだぁぁぁぁああ!!」
リルはスキルの最後に罠を踏み抜いた。
ビューレイストの前に一つだけ設置していたのだ。
だが、設置したのはいつものホッピングトラップではない。
リルが設置したのはマイントラップ……。
つまり地雷だ。
リルのHPは当然罠のダメージを受ける。
しかし、近くにいる騎士もその巻き添えをくらうはめになる。
「リルちゃん!?」
ベールはリルの予想外の行動に驚きを見せるが、リルはお構いなしだ。
スキルの硬直をダメージ判定によるのけぞりで凌いだリルは再びフェンリルをしっかりと握り締め――。
「連撃!!」
今度こそ騎士へとトドメを刺すのだった。
「あんなん、ありかよ……」
「いや、無いって……確かにスキル硬直よりダメののけぞりの方が短いって言われてるけど……」
呆然とするのは観客たちだ。
たったの数日……それも三日以内で有名になっていたリルたちの騎士との戦いを見るために来ていた彼らは負けると思っていた。
しかし、リルたちは予想外の方法で突破したのだ。
さらにはたったの4人という少数でだ。
「カナリアはトップ……子犬とフェンリルはスーパールーキーだと言っても……」
そう呟く彼らの視線の先にはクロネコの姿があった。
彼らは何故彼女がそこに居るのかが疑問ではあったのだ。
「あいつって確か寄生猫だろ?」
「ああ、確かクロネコだったっけか?」
そう、クロネコはこの戦いの中生き残った。
いくらカナリアの支援があったとしても彼女ではかなり厳しいクエストのはずだ。
だというのに彼女は生き残っていたのだ。
それも、攻撃を一切しない上、一切のダメージを受けることなくだ……。
「あいつ、もしかして……面倒だったりする?」
「かもな……確か対抗戦って次のイベントだろ?」
彼らはリルたちを見つめ、大きくため息をつく。
それもそうだろう。
リルの見込んだ通り、クロネコはまだ荒い物の回避に専念させればリルをも超えるのだ。
それに気がついたところでもうすでに彼女はリルの仲間になってしまっている。
もうすでに彼女を誘う機会など無くなってしまったのだ。
「キツイ! 辛い! 新人苛め!!」
クロネコはゼェゼェと息を荒げながらリルへと訴える。
だが、リルは笑みを浮かべて――。
「それだけ元気があれば大丈夫だよ」
「怒ってるだけだってわからないのかい!?」
「でもだいぶ慣れて来たでしょ?」
リルの手助けをするようにそう言ったのはカナリアだ。
彼女は微笑みながらクロネコを見つめると――。
「それは……まぁ」
彼女は頷き始める。
その様子を見てリルは満足そうに笑みを浮かべるのだが……。
そんな中、頬を膨らませる一人の姿があった。
「ベール?」
リルは彼女の名前を呼び、近づく。
すると彼女はますますその頬を膨らませ――。
「私、怒ってるからね!」
となぜか宣言をし始めた。
どうしたんだろうか? リルは首を傾げるのだが……。
そんな彼女に対しベールはますます頬を膨らませプイっとそっぽを向いてしまった。
「ど、どうしたの!?」
何かしてしまったのだろうか?
だが、何かしたつもりはなかった。
リルは当然慌てふためき、ベールの視線の中に入ろうとするも彼女はかたくなにそっぽを向く。
やはり自分が何かをしてしまったんだ。
リルはそれに気がついたのだが……。
わ、分からない……私ベールに何か悪い事したっけ?
その理由が分からず彼女は呆然とするだけだった。




