6話 決闘準備
リルが道具屋でいらないアイテムを売っているとおどおどとした少女は声をかけてきた。
「大丈夫、なんですか?」
「あーうん、なんとかなる、かなぁ?」
あははと乾いた笑い声で答えたリルはそう言いつつ先ほど装備した服へと目を向ける。
「…………」
と同時に彼女は目を丸めてしまった。
何故ならそこには信じられない効果があったからだ。
狩人の服 ユニーク
装備制限 アサルト専用
ドロップ条件
一人のPTでかつジョブはアサルト、Lv10以下の状態でホブゴブリンを討伐することが条件。
また、大半のHPを弓での攻撃で削り取らなければならない。
この装備は破壊、売却、譲渡、ドロップが出来ない。
AGIとDEXに現在のLv×2の補正値を得る
AGI能力値÷3の値を弓と罠の攻撃力に加算する。
DEX能力値÷3の値を短剣の攻撃力に加算する。
「嘘、ユニーク? しかもこれ……専用装備って事は今回追加されたばっかりってことじゃん」
そう、彼女がたまたま手にいれたのはアサルトの専用装備だったのだ。
しかもユニーク装備。
つまり、一品物のまたとないレア装備という事だ。
「しかもぶっ壊れ……コレ修正きそうだなぁ……」
誰から見ても強力すぎる装備にリルは苦笑いをする。
そして改めてステータスへと目を向ける。
【リル】
アサルト Lv12
HP176 MP67
STR1
VIT1
AGI74+24
DEX42+24
INT1
LUK1
ATK5+114/7+114
レベルは12になっており新たにポイントが12増えていた。
どうやら11から4ポイント貰えるようだ。
HPは176と低めだが避けるのであればあまり関係はない。
だが――。
「あはは……なにこの攻撃力……」
もう笑うしかない。
レベルがたったの12だというのに攻撃力が110を超えている。
ジョブが固定され、装備も変えられないとはいえ強力すぎるのだ。
「あの、どうしたんですか?」
「な、何でもない……」
これからはAGIを上げてもDEXを上げても弓が強くなるという装備だ。
運営がそれだけ弓職を気に入っているという事だろうか? なんにせよリルにとってはこの仕様が変わるまではありがたいものであり……。
何より、これから決闘を行うというのだから運が良すぎるとしか思えなかった。
「これなら今回はAGIに全振りしよう」
このステータスで戦うとなれば、最早相手に勝ち目はないだろう……申し訳ないという気持ちにはなったが、仕方がない。
リルとしてはそもそも許すつもりはなかったが、去ってくれればそれでよかったのだが……。
このままではリルはともかく、ベールまで犯罪者扱いにされてしまうのだ。
相手は間違いなく掲示板に書き込むつもりだろう、いや、寧ろもう書き込んでいるかもしれない。
そして、正義は自分たちにあり、と制裁を下すつもりなのだ。
まぁ、実際にリルたちのやり取りはオープンでされていたわけだから、事実を知る人物はいる。
逃げたり、準備を整える時間を作ってくれた剣士の人もその一人だ。
下手をすれば彼すら仲間だと言われるかもしれない。
助けてくれた人に迷惑はかけれない、そう思いつつポイントを振り分けAGIを86にする。
当然装備の効果で攻撃力は短剣、弓共に6点増え……。
ATK5+120/7+120
という数字が目に入る。
「……これって強いんですか?」
「多分、ううん絶対こんなLv12居ないよ、この世界に」
自分の事ではあったが、呆れるしかない。
しばらくしたら絶対に修正が来るであろうことを予想しながら、そうなった時の事はその時考えるしかないかと顔を引きつらせながら。
「すみません、罠と矢をください」
NPCから必要な物資を買い足すのであった。
『私全作では運全然なかったのに……なんで急にこんなバカみたいな装備手にいれてるの? 怖いんだけど……』
彼女は知る由もなかった。
表情をこわばらせる彼女の傍に居る少女がとんでもないリアルラック持ちだという事を……。
その彼女自身は首を傾げつつ変な様子のリルを見ては自身のストレージを見て「ん~?」と可愛らしい声を上げるのだった。