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68話 決闘!

 兵士のHPが見る見るうちに減っていくが、その勢いは次第に失われていきリルはその場から離れるように大地を蹴った。


「流石に一発は無理かー」


 いくらリルの攻撃力がトップに食い込むと言っても高難易度のクエストのエネミーだ。

 そう簡単に倒せるわけがなかったのだ。


「リル! 支援をかけるわ!」

「分かった!」


 カナリアの声に従い、リルは後ろへと下がる。

 魔法には効果範囲が当然ながらある。

 それ以上離れてしまえば意味がないのだ。


「ブレッシング!!」


 希望の光、神のご加護を意味する言葉だ。

 だが、ゲームではその言葉は魔法となりリルのステータスを上昇させる。


「ありがと!!」


 リルは彼女に礼を告げ再び走り始め、先ほど攻撃を加えた兵士へともう一撃浴びせる。

 底上げされた攻撃力でもまだ倒れない。

 しかし――。


「ファイアボール!!」


 放たれた巨大な火の玉は兵士たちをなぎ倒し……。


「……嘘」


 クロネコは呆然としてしまう。

 それもそうだろう。

 いくら魔法攻撃力の方が|1秒あたりに与えたダメージ《DPS》が上回ると言ってもリルとベールはまだレベルが低いのだ。

 出せるダメージには限度がある。

 そう考えていたのだが、しかし二人はそれをあっさりと超えているのだ。


「いや、あの二人にあんな装備渡しちゃダメだって……」

「あら、そのおかげで楽が出来るのよ?」

「そりゃ……そうだけど」


 なんか納得いかない。

 そう言いたげなクロネコだったが、楽が出来るという言葉には首を縦に振るのだった。


「何にせよ……」


 リルはそう言うと前へと目を向ける。

 そこには次々に倒れていく敵の姿があるではないか……。

 それを見つめリルは笑みを浮かべる。


「ベールのお陰で先に進めたみたいだね」


 クエストのログが更新され、リルは目を向けると同時に騎士は剣を引き抜く。

 兵士の大半が倒されたことによりイベントが進んだのだろう。

 リルは彼を睨み腰を低く保つ。


「待って!!」


 クロネコはそんなリルへと静止の声をかけた。

 異変に気がついたのだ。


「おかしいわね……こっちのリソースがある程度削られなければ来ないはずよ……」


 そしてその異変はカナリアも気がついた。

 そう、カナリアが言っている通りまだ騎士が来ることはないのだ。

 通常であれば兵士が減れば追加で招集をかけ、プレイヤーがある程度消費したところでようやく騎士が動き出す。

 そして、騎士は決して弱いわけではなくしっかりと実力を伴っている。

 だからこそ、彼は卑怯者とも呼ばれていた。


「……どういう事?」


 リルは二人の様子から慌ててクエストを確認する。

 するとそこには――。


《ギルド認定試験》


 君たちは圧倒的な力で並の兵士たちでは太刀打ちできないだろうことを示した。

 騎士リィドは手を抜くことはないだろう……。

 彼を倒し、王と騎士にその力を示せ。


「つまり……今までのクエストでは手を抜いてたって事?」

「それにしては卑怯だって噂が――」


 クロネコがそうつぶやいた時、騎士は剣を構え前傾姿勢を取る。

 対しリルはも駆け始め――。


 金属音が鳴り響く……。


「きゃぁ!?」


 クロネコは思わず悲鳴を上げる。

 それもそうだろう……彼女の近くで金属がぶつかり合う音が響いたのだ。


「は、速い!?」


 カナリアは目を丸め、ベールは口を手で覆い固まってしまった。

 だが――。


「……刀?」


 リルは冷静だ。

 彼の使っている武器を見ておかしいと思ったのだ。

 構えから、抜刀……剣ではあの速度を保ったまま攻撃などできない。

 その理由がはっきりとし――同時に何故二人が知らなかったのかを理解した。


「追加されたんだ! 新ジョブテスターと同時に!」


 雰囲気が変わった騎士はリルの発言など気にするそぶりもなく、再び刀をふるう。

 それに合わせフェンリルを振り、得意のパリィで攻撃を反らすリル。

 だが……。


「――っ!?」


 剣線は曲がり、間一髪のところで身をひねり刃を交わす。


「クロネコ、離れて!!」


 このままでは追いつめられる。

 リルはそう思いクロネコにはなれるように言うと、自身もまた騎士から距離を取る。

 その際にふと客席の方へと目を通すと戦いの様子を見ている者が何人もいた。

 ここで自分の手札が知られるのは嫌ではあった。

 しかし、このままでは勝てないことも理解していた。

 何故なら――確かに距離を離したはずだ。

 だというのにもうすでに目の前に騎士は居り、胴を切り裂くように真横に刃を振ろうとしていたのだった。

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