66話 ギルド認定クエスト
リルの言葉に笑みを見せた王ディーン。
暫くリルたちを見つめていたのだが……。
「リィドをここに」
「はっ!」
傍に居た男性にそう言うと彼は頭を下げ謁見の間を去っていく。
一体なにをさせるつもりなのか?
それはもうすでに分かっていることだ。
だが……答えが分かっていても初めてやるクエストはわくわくしてくるのだ。
「私の自慢の部下と戦ってもらう」
「これが確か昨日言ってたクエスト? だよね」
ベールはそう確認してくる。
当然リルは頷き彼女の方へと目を向ける。
先ほどまでの悩みは仲間と共にクエストをすることで多少は紛れてきたのだ。
「うん! ギルドを作るためのクエストだよ」
「これさえクリアすれば皆転職もできるはずよ」
そう言えば、そんな話を聞いたなっとリルは首を傾げる。
言われた時は特に気にしなかったのだが、何故ギルドと転職が関係あるのだろうか?
それを聞こうと思った時――。
「王よ、お呼びとのことでしたが……」
決してきらびやかではない。
だが、しっかりとした鎧に身を包んだ青年は王へと向け頭を下げた後、リルたちへと目を向ける。
すると溜息をついた彼は――。
「おうよ、まさか、こんな少女達と戦えと?」
騎士はリルたちへと再び目を向けると首を横に振る。
「王の言葉とあらば従わざるを得ません……ですが、相手は少女です、手加減をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「………………なんか私こういう人嫌い」
どこか、いや……確実に見下している。
そんな気がしてリルは笑顔を作りながらも口元をヒクヒクとひきつらせる。
「分かるわ……手加減なんて無用よ無用」
そう言うのはカナリアだ。
彼女もまた面白くないと感じたのだろう。
いや、彼女たちだけではない。
「リルちゃんは凄く強いんだよ!!」
両手を拳を握り訴えるように頬を膨らませるのはベールだ。
唯一、一人――。
「いや、手加減してくれるならその方が……」
クロネコだけは苦笑いをしていた。
彼女は自分に自信がないのだろう。
しかし、リルはそんな彼女へと目を向け――。
「大丈夫! クロネコなら絶対につかまらないよ」
「その良くわからない、期待はプレッシャーになるんだけど知ってたかい?」
笑みを浮かべながら怒っているクロネコを見て、リルたちは微笑む。
その見た目から可愛らしくしか見えなかったのだ。
それに気がついたクロネコは――。
「怒るよ?」
と言うが、本当に怒るつもりはないのだろう。
「さて、どうする? わしの部下と戦うか?」
暫くあちらの方でも話があったらしく、勝手にクエストは進んでいた。
リルは王の言葉に頷きつつ答える。
「勿論、戦います」
それ以外の選択などないのだ。
そう言うと騎士は大げさな動きをし、ため息をつくがリルはそれを視界から外すと王へとその瞳をしっかりと向ける。
「おお! そうか、受けてくれるか!」
王はよほど決闘が楽しみなのだろう。
笑みを浮かべ立ち上がると――。
「ならばすぐにでも準備をせよ! お主たちの準備が済み次第、決闘を開始する!」
ニコニコと笑みを浮かべた王はそう口にすると謁見の間を去っていく……。
対し残っていた騎士は……。
「王の命がある……手加減はできない。もし恐れるのであれば……いや、そうでなくとも棄権をしてくれ」
そう言った後、去って行った。
その背中に対しベールは無言の圧力を向け――。
「あのNPCは結構な嫌われ者よ……」
「確か卑怯な手を使ってくるとか言う噂もあるみたいだね」
カナリアの言葉に続きそう言うのはクロネコだ。
その情報は仕入れていなかったリルは目を丸め彼女を見る。
「本当?」
「ああ……でも大丈夫、タイミングは知っているから、教えるよ」
「助かるよ!」
やはり彼女を引き入れてよかった。
そう感じるのだった。




