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60話 見た目はストーカー

「ギルドのクエストは……これ、かな」


 リルは記事を見つけじっと見つめる。

 そこに書いてあるのはクリスタルの勲章を手にいれるにはオーディンの王に認められる必要があるとのことだ。

 そのためには騎士団長に勝つとのことだ。

 勿論、敵は一人ではない。

 だからこそ、仲間を連れてきていいという条件はあった。

 しかし……。


「うーん……推奨レベルが20かぁ……」


 上限が50となっている現状で20レベルはそこそこ高い方だ。

 しかもリルは15レベル。

 まだまだ推奨には足りない。

 そして、ベールに至ってはもっと低いのだ。


「……とはいえ、装備はしっかりしてるし」


 仲間を思い出してみると支援能力に優れたカナリア。

 回避はまだまだではあるが速度だけならリルをも追い抜くクロネコ。

 そして、魔法攻撃力物理、それらを含め現状最も火力が出せるベール。


「……いけなくはないか」


 後はクロネコたちが詳しい情報を知っているだろう。

 そう思ってリルは仲間達が来るのを待つ事にした。

 しかし、昨日カナリアに教えてもらった場所に行くのは気が引けたのだ。

 何故なら、弟の言葉が引っかかるからだ。

 生意気でも弟は弟だ。


「……こういう事で嘘は言わないよ」


 あれで意外と心配性なのだ。

 だからこそ、リルは――。


「……素直じゃないなぁ」


 そうつぶやくと後ろを振り向く。

 恐らく声は聞こえないだろう。

 だが、それでいい。

 もし聞こえたのなら、きっと彼は去って行ってしまうからだ。


「……ぅぅ」


 ただ、その姿は明らかに目立っており……傍から見たらただのストーカーである。

 何故なら彼はそのアバターの見た目が昔のオタクで……かなり太っていると言ったほうが良い姿だったからだ。

 現実ではそれなりにカッコいい方だとは思う。

 実際にモテているのかは興味ないが……。


「……ねぇ、まずくない?」

「でも、通報しないし、ウィンドウ操作もしてないみたいだよ?」


 周りの女性がこそこそと話すが、それもそのはずだ。

 通常であれば、ストーカー行為による忠告がリルに出てくるはずなのだ。

 そう、彼女を守るために……。

 だが、その表記は一切ない。

 何故なら彼の正体を自分の弟だと知っていたからだ。

 そして、その目的さえも簡単に理解できていたからこそ、嫌悪感を感じないリルの前に忠告が現れることはなかった。


「……でも、うん気になる」


 溜息をつき、リルは適当に街の中を歩く。

 すると当然のようにバレバレの尾行をする弟……。

 一応忠告したほうが良いだろうか? そう思いながらリルは困りつつも話を切り出せなかった。

 とはいえ、このままではストーカー容認とも思われそうに思ったリルは思い切って振り返ると――。


「ねぇ、お姉ちゃんが心配なの分かるけど、はっきり言ってストーカーにしか見えないよ!」


 そう後ろに居る弟、秋也のアバターを睨みながら伝える。

 当然周りに聞こえる声でだ……。

 するとひそひそと話していた人たちは目を丸め――秋也のアバターは見る見るうちに赤く染まっていく……。


「あーだから、忠告出てなかったんだ……」

「お姉ちゃん好きなんだね、可愛いー!」


 そんな声が聞こえてくる中――。


「っ!! ち、違うからな! たまたま見かけて声をかけようか考えてただけだからな!」


 彼はそう言うとゆっくりと息を吸い――。


「そんな変な事を言うなら今日は飯抜きだからな!!」

「いや、今日はお母さんが作るでしょ……」


 弟は料理が好きだ。

 だから余裕のある日や土曜日は彼が食事当番になっている。

 だが、日曜日は母が必ず作ってくれるのだ。

 その事を知っているリルは当然呆れたような表情を作り……。


「今度飯抜きな……」

「それは勘弁して?」


 次の言葉にはすかさずそういうのだった。

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