55話 発覚した事実
腕を組むと目立つ胸をねたむように見つめたリルだったが、無理やりその視線を外し、グールへと目を向ける。
残りはわずかとなったそれらへと近づき、切り刻むと――。
「沸いてこない、みたいだね」
魔物達の襲撃は終わりを迎えたのか、先ほどまで聞こえていたグールの唸り声は聞こえなくなっていた。
それを確認しつつベールの方へと向くと、なぜか彼女は頬を膨らませており……。
「ど、どうしたの……」
なんで不機嫌なのか? リルは疑問に思い尋ねてみると彼女は「うー」とうなり声をあげる。
対しリルは首を傾げ……。
「随分と仲が良いんだね……」
ようやく絞り出した声にリルは眉をひそめた。
確かにカナリアとは仲がいい。
それは当然の事だ。
何故ならかつては相方として一緒に遊んでいたのだから……。
「昔から一緒だったってだけよ……でも今はもう相方にはなれないわね」
くすくすと笑うカナリアにリルは首を傾げる。
それもそうだ。
何故相方になれないのか? その理由が分からなかったからだ。
「リル……何キョトンとしてるの、こんなにかわいい相方がいるじゃない!」
「……ああ、そういう事」
もしかして嫌われたのでは? と心配になっていたリルだったが理由が分かりほっとする。
確かにまじめな彼女の事だ、相方が一人いたら無理に一緒に遊ぼうとは思わないだろう。
それが理解できたからこそ納得できたのだ。
確かにリルにとって今の相方はベールだと言えるからだ。
「そうだね、今の相方はベールだから……」
「あら、酷いわね振られちゃったわ」
「……自分で言った癖に」
リルはそう言うと呆れたように笑い。
ベールの元へと近づく、そして毒につけられている杖へと目を向け。
「まだかかりそう?」
そう尋ねると――。
「え? えっと……」
顔を真っ赤にした彼女はおろおろとしている。
もしかしたら、いや確実に達成条件が分からないのだろう。
そう思ったリルは――。
「クエストログを開いてみて、開き方は――」
丁寧に教え始めるとベールはこくこくと頷きながらリルの言う通りに操作をこなしていく。
すると――。
「あ、達成ってなってるよ?」
「じゃぁ杖を回収しよう」
リルがそう告げるとベールは慌てて杖へと手を伸ばす。
しかし――。
「待って!」
カナリアがそれを止めてしまったのだ。
キョトンとするベールに対し片目をつぶった銀髪の女性は自身の顔の前に指を一本立てると――。
「毒、あるかもしれないでしょ? 耐性高めておかないとね」
と告げた後、ポーションを二つベールへと手渡す。
「これは?」
「アイテム名どおり、毒耐性ポーションと解毒ポーション、もし毒になっても毒の効果が落ちるから、慌てずにこっちを飲んでね」
ベールはカナリアへと礼を告げるとポーションを一つ飲み、顔をしかめる。
それを見てリルは少し慌てるのだが……。
「苦い……」
「あー……苦いんだ、それ……」
何故ポーションに味を付けたのか? そう疑問を感じつつベールが杖を毒から取りだすのを見守る。
宝珠の杖と呼ばれていたそれには蛇が巻き付いたようにも見え、その宝石の上には竜の彫刻が付け加えられていた。
「ど、どう?」
本当に強化がされたのだろうか?
リルは疑問に思いつつベールの言葉を待つ。
「えっとね、見た目だけじゃなくて名前がフリッグ《ニブルヘイム》? からニブルヘイムだけに変わったみたい、それとなんかね? 蛇だけじゃなくてドラゴンを呼べるみたいだよ? それと人に渡せないって書いてあるよ?」
「……また、凄い名前ね……それにドラゴンって……初心者サモナーじゃなくても欲しいスキルね」
「そうなんですか?」
二人の会話を聞きつつリルは首を傾げる。
なぜか……その理由は簡単だった。
「サモナー? ベールって魔法使いじゃ……?」
「うん、魔法使いだよ!」
笑顔で頷くベール。
だが、カナリアは首を横に振る。
その理由は……。
「呼べるって言ったわよね?」
「うん、呼べるって書いてあるよ?」
「いや、うん……呼べるっていう表記はサモナースキルにしかないんだよ……サモナーも初期魔法だけは普通の魔法取得できるから」
そして、クロネコが呆れたようにそう続き……。
「「……え?」」
リルとベールは固まってしまう。
そして、ベールは首を傾げながらリルへと向き直り……。
「私ってサモナーなの?」
「いや、私に聞かれても……最初何を選んだのかは分からないよ……」
ベールのアイコンを見ても杖が記されているだけだ、これでは何も分からない。
するとベールは考え込み……!
「あ……そういえば、可愛い動物が呼べると思って選んだ……かも」
そう口にしたのだった。




