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54話 阿吽

 空中を飛び回り、グールを撃ち抜くリル。

 一見爽快に見えるが、本人はそうでもなかった。

 事実、カナリアの理解が出来ない。

 という言葉に「ん?」としか返せなかったのだ。

 

 矢を撃つタイミング、そして罠を設置するタイミング……それらを計算しつつ罠と矢の残数にも気を使わなければならない。

 多めに持ってきていたとはいえ、持てる量には限度がある。


「……っ!」


 矢の残量を確認しつつ、リルは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。

 残りが少なくなってしまったのだ。

 そして……罠も当然数が少なくなってしまっている。

 このままでは今の機動力を保ちながら戦うこと言う事は難しくなるだろう。


「でも……!」


 地上で戦っているカナリアたちには分からない事ではあった。

 しかし、リルは空を飛びグールたちの動向を確認できていた。

 だからこそ、出来るとも確信していた。

 その理由は……。


 数は凄い……けど一度倒したらリポップしてない!


 そう、グールはその数を一切増やしていないのだ。

 これならば倒しきることは十分可能だ。

 とはいえ、第二波、三波とこないとも限らないのだが……。


 そうこう考えている内にリルの矢はそこを尽き、罠も残り一回分となってしまった。

 リルは最後の罠でカナリアたちの元へと向かうと……。


「カナさん! 支援よろしく」

「あら、切れちゃったのね……」


 リルが戻ってきたことに特にあわてることなくそう言ったカナリアはリルへと魔法をかけていく……。

 そして、彼女の表情を見ると――。


「どう?」

「突破できると思う、大分数減らしたし……」

「そんなこと言っても、まだこんなにいるんだけど!?」


 リルの言葉に否定的なクロネコだったが、リルはにっこりと微笑む。

 確かにリル一人では無理だろう。

 だが……。


「クロネコはベールの事をしっかり守ってね」

「え?」


 ここにはカナリアがいる。

 その事がリルの自信にも繋がってた。


「久しぶりにやるわよ?」

「うん、思いっきり暴れるからね!」


 リルはそう言うと駆け抜け、フェンリルを構えるとグールを再び切り付けていく……。

 当然突っ込んできたリルを狙うグールだが……ギリギリのところでリルはその攻撃を避けていく。

 しかし、全てを避け斬るのは無理だ……。

 だが、それらの攻撃を弾く障壁が現れリルへのダメージが軽減されていく。

 どうやら、何度も同じ個所にダメージを受けない限り四肢欠損はない。

 リルはその事にほっとしつつもできるだけ回避をするように集中し……。

 それをサポートするようにカナリアは動く。

 まさに阿吽の呼吸と言ったところだろう。

 全体的なステータスは底上げされているだけではなく、障壁、回復とそのタイミングは恐ろしいほどにぴったりだった。

 それもそのはずだ……。


「懐かしいわね」

「そうだね!」


 ある程度数を減らしたところでリルは後ろへと下がり一息つく。

 そして、カナリアの方へと目を向けた。

 そう……二人はよく一緒に遊んでいたのだ。

 だからこそ、カナリアはリルの望むタイミングで魔法を放つ事が出来る。


「それにしても本当気が楽ね、ゴリ押しで支援しなくていいってのは」

「それ、前も言ってたけど……ゴリ押しの支援ってどういう意味?」


 あははは……と乾いた声を上げるリル。

 それに対し、微笑んで見せたカナリアは……。


「そんなの底を尽きないMP任せに決まってるでしょ?」


 と腕を組んで答えるのだった。

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