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51話 毒の泉

「これが言ってた扉?」


 リルは扉を前にカナリアの方へと向く。

 カナリアはリルに向かって頷き、クロネコも少し考えるそぶりを見せ――。


「間違いないね、ここが進行不能エリアだったはず」


 彼女たちの言葉を聞いたリルは恐る恐ると扉へと手をかける。

 進行不能であれば扉は開くことはない。

 だが、もし仮にこの先に何かがあるのであれば……。

 そう思いつつ、ぐっと扉を押してみると……。


「あ、あかない……」

「引いてみるのは? 先が階段なら押して開けるんじゃないかも?」


 ベールの言葉に頷きリルはゆっくりと扉を引く。

 すると今度はあっさりと動き……。

 ベールの言葉通り、先には階段があった。


「この先にベールの武器を強化する毒液があるんだね」


 一歩一歩と階段を降りていくと、リルは肌寒さを感じる。

 と言っても、あくまで少し寒いぐらいだ。

 雰囲気作りというもので多少の寒暖差は感じるようになっているのだ。


「静か、だね?」


 ベールはモンスターが出てこないことに安心しつつも不安を感じたのだろう。

 辺りをきょろきょろとしている。


「まぁ、こういった階段で襲われたら面倒だけどね……」


 昔の2Dや3Dタイプであれば特に問題はないだろうが、現在のVRでは面倒極まりないのが階段だ。

 敵が出てこないのであればそれに越したことはない。

 リルはそう思いつつも更に下を目指す。

 恐らくここは安全地帯になっているのだろう、階段を降りた先には再び扉があった。

 それを開けてみると――。


「うぅ!?」


 喉にまるで熱い飲み物を飲んだかの様に熱さを感じた。

 慌ててHPを見るが減少はないようだ。

 しかし、なにが原因かはすぐに理解できた。


「毒の……泉、ね……」

「うん……」


 目の前に広がっているのは毒々しい色の泉だ。

 だが、足場もあり、まだ奥がある。


「あそこにつければいいんだね?」

「まって!」


 ベールは早く帰りたいとばかりに前に出ようとするが、それをリルは慌てて止める。

 確かにあれも毒であろうことは分かっていた。

 しかし……。


「多分もっと奥にあると思う」

「……え?」


 リルの言葉にベールは首を傾げる。

 毒は毒……同じだと考えていたのだろう。

 だが、リルはこれが求める毒ではないと考えたのだ。


「えっとね、ヘルヘイムには毒が滴る場所があるはず……多分そこが目的の場所」

「だね……あっさりしてる。ここまでくる程度なら簡単だし……」


 クロネコもリルの意見に賛同してくれるようだった。

 これは一連のクエストの最後を飾る物だろう。

 そう思ってみるとやはりこれだけで済む、なんてことはないとも思えたのだ。


「進もう」


 リルはそう言うと奥へと歩きだす。

 だが、奇妙なことにまだモンスターの姿がない。

 それがかえって不気味だ。

 いや、こんな毒まみれの場所を生きられる生物なんていないのだから正しいといえば正しい。

 だが、これはゲームだ。


「気を付けておいた方がいいわね」

「そ、そうなんですか?」


 カナリアの警戒を促す言葉にベールは杖をしっかりと握り締め尋ねる。


「ボスかそれともイベント戦……どちらにしても一筋縄じゃいかないはずよ」


 だが、ボスの姿も見えず、リルは予想通り毒が滴る場所を見つける。

 その下にはまるで水瓶の様に樽が置いてあり……。

 そこからあふれ出た毒が周りに広がって泉を作っていたようだ。


「……あったよ、ベール」


 あれにつけることでベールの杖が強化される。

 リルは彼女の名前を呼び、ベールは頷くと杖を持ってそこへと行く――。


「気を付けてね?」


 そう言いつつリルは周りに警戒をするのだった。

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