46話 トッププレイヤー
「あら、呼んでおいておいてくつもり?」
そう口にしたのはリルのよく知る人物だ。
いや、知らないはずがない。
先ほど彼女自身が呼んだのだから……。
「そ、そういうわけじゃないよ!」
リルは慌ててそう言うと彼女はクスクスと笑う。
知っているのだ……リルがそんな事をするわけがないと、だが――。
「酷い妹ねー……ねーベールちゃん?」
「え? あ……はい?」
ベールに賛同を求め、少し悪戯っぽく笑って見せる。
そんな彼女を見てリルは頬を膨らませると――。
「そんなことしないし……」
と口にする。
勿論、本気で怒っているわけではない。
彼女もまたカナリアが本気でそんな事を言うとは思っていなかったのだ。
「…………」
だが、そんな彼女たちのやり取りを見ていたクロネコは呆然としている。
もしかして、これが言い合いに見え、頼んでいたプリーストがいなくなることを懸念しているのだろうか?
リルはそう思って彼女の顔を覗き込む。
すると――。
「待って……知り合いのプリってカナリア?」
「……? そうだけど」
どうやら、呆然としていた理由は別にあったようだ。
わなわなと震えだした彼女はカナリアへと指を差す。
対し、カナリアは微笑むだけだ。
「ト……」
「と? とがどうしたんですか?」
よく聞こえずベールが聞き返した際。
ゆっくりと息を吸ったクロネコは――。
「トッププレイヤーじゃない!?」
驚きの声を上げる。
「そんなに驚く事かな」
リルはそう口にする。
トッププレイヤーと言われても、まぁ……そうだろうなぐらいにしか思わなかったのだ。
何故ならカナリアは神たそでもそうだったからだ。
支援に限りだが、回復、補助そのタイミングが優れていた。
勿論補助ツールを使わないで、だ……。
更には魔法ごとのシステムの穴を把握し使いこなすことまでしていた。
だが、それをできるのは何もカナリアだけじゃない。
「だって、その人臨時で引っ張りダコなのしらないのかい!?」
「知らないのかい、って言われても今日あったばかりです」
ああ、と頭を抱えるクロネコ。
もしかして、なにかまずいのだろうか?
リルは少し不安になったのだが……。
「それにどのギルドも彼女を欲しがってる……だってのに、そんな人をあっさり呼ぶって何者?」
「……そう言われても、困るんだけど」
「まぁ、昔からの友達、としか言えないわよね?」
二人の発言にクロネコは「はは、ははは……」とひきつった笑みを浮かべた。
その後――。
「だから、異様に強いんだ……」
「なんの……話?」
リルは首を傾げるが、クロネコはそれを気にするそぶりはなかった。
そして、リルたちを見回すと――。
「分かった、分かったよ……君が自信満々なのは十分わかった」
「……なんとなく、傷ついたよ?」
リルはクロネコにそう言うが、やはり気にしてはくれないみたいだ。
それどころかため息をついた彼女は――。
「それじゃ行こうか? ヘルヘイムへ」
と言い出し、まぁ当初の予定だから良いか……とリルは考え、頷く。
今はベールの装備強化をしたかったからだ。
自分だけ手伝ってもらって強くなったのでは面白くない。
これでベールも強くなればクリスタルの勲章もずっと手に入りやすいはずだと彼女は考えたのだ。
「それじゃ、必要なアイテムを買って出発しよう!」
そう口にしたリルはカナリアとクロネコにPT要請を飛ばすのだった。




