38話 情報屋との出会い
「大丈夫?」
震えるリルを見て不安そうに声をかけるベール。
そんな彼女に力無く微笑むと――。
「う、うん……」
男性が苦手というわけではない。
学校では普通に話すし、実際に友人も居たりする。
だが……。
「なんとか……」
あの剣士だけはダメだ。
そう頭の中で警告がされていた。
気を取り直そうとリルは頭をフルフルと横に振り小さくため息をつく。
そして、掲示板の方へと向かう。
「ここに情報が色々あるみたい」
町の掲示板にはこれまで攻略した情報なんかがあるらしく、いちいち検索する必要もない。
何故なら欲しい情報を目の前に立って思い浮かべるだけで手に入るからだ。
「えっと……魔法使いの装備は……」
リルが呟くとちょんちょんと突かれる。
ベールだろうか? それにしては遠慮がちだ。
そう思って振り返ると――。
「……誰?」
そこには自分よりも小さな少女が一人リルを見上げていた。
「ふふん! いいのかい? 掲示板なんて頼ってさ」
変な子だな? とは思わなかった。
掲示板に立つリルは一見初心者とは思えない装備だ。
そんな人に話しかけてくるのは大抵。
「情報屋?」
「じょうほうやって……そんな職業なかったよね?」
リルが訪ねるとベールが疑問を投げかける。
それに答えようとすると――小さな少女はやれやれと大袈裟な態度を取った。
「おいおい、初心者さん、もしかして情報屋って知らないのかい?」
「知ってるも何も……なかったよね?」
ベールはそう言うと情報屋はひきつった笑みを浮かべる。
それもそうだろう。
確かに情報屋という職業はない。
選べる職業の中には……だ。
「こういったゲームの中には情報を集めてそれを商品にする人もいるんだよ、それが情報屋」
「そう、そういう事だ!」
彼女はリルの言葉に頷くと自身の胸を手の平で叩く……。
「そして、この私が情報屋クロネコ!」
「…………へぇ」
特に興味はないのだろう。
ベールは一言漏らすとじっとリルの方へと目を向ける。
「お、おい! 折角人が良い情報を――」
「それなんだけど、ごめんね?」
騒ぐ情報屋クロネコへとリルは申し訳なさそうにそう伝えると彼女の目線へと合わせる。
そして、その手を彼女の頭に置き――。
「私達、昨日始めたばっかりなんだ、だから、その……お金、ないの」
「はぁ!?」
リルの言葉に驚いた様子の彼女はリルの手を払うと……。
二人をじろじろと見始める。
そして……。
「なら君たちの情報を売ってくれれば、いい情報を売るよ」
「私たちの情報?」
二人は彼女の言葉に首を傾げ、お互いに見つめあう。
装備の事だろうか?
そんな事を考えていると――。
「そうだね、リアルの年齢とスリーサイズ……美人や美少女アバターの子のって売れるんだよね」
「「はぁ!?」」
思ってもみない言葉に二人は同時に声を上げ――。
「う、売るわけないでしょ!?」
「そ、そうだよ! そんなの絶対売らないからね!」
「結構高いよ?」
「「お金の問題じゃないよ!?」」
なぜか、納得いかなそうな少女に対し、リルたちは反論をする。
すると――当然周りには人が集まってきており……。
二人は顔を真っ赤にしながらその場から離れ――。
「って、待ってよ! まだ情報を買ってない!」
「売らないからね!?」
追いかけてくるクロネコにはっきりというもののなぜかクロネコはにひひと笑いついてくるのだった。




