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30話 ゴブリンキング

「おい、人間……」


 流暢な言葉遣いでそれは喋る。

 だが、そんなことはどうでもいい……。


「っ!!」


 相手は話しかけておいて会話をするつもりなどないのだ。

 振り下ろされた剣を慌てて避けたリル。

 しかし、確かに攻撃はよけたはずだった。


「あ……」


 HPは一気に減っていく。


「リルちゃん!」


 初めてダメージを受けた。

 その事に驚きつつ、リルは斬られたと思ったのだが……その痕はなかった。

 どうやら、攻撃の中に衝撃波があり、それにダメージ判定があるようだ。


「どうした? 小さな人間……」


 ゴブリンの長はにやにやと笑い、ダンっと地面を踏む。

 それはまるで本物の化け物に脅されているかのような錯覚を……いや、本当にそうなのだ。

 だが――。


「……っ!」


 リルはポーションを飲み干し、立ち上がった。

 相手は魔物だ。

 会話が出来るクエストではあるが、敵であることには間違いない。

 その大きさにも驚いたが、気を取り直し魔物を睨んだ。


「戦うつもりか? お前なんて喰っても大してうまそうではないが……」


 ゴブリンの言葉に思わずびくりと体を震わせるリル。

 それもそうだろう。

 ここまでリアルなゲームをしたのは初めてなのだ。

 ベールほどではないとしてもそれなりの恐怖はあった。

 いや、確かに手は震え、膝も笑っていたのだ。


「リルちゃん、大丈夫?」


 だが、ベールはリルのそんな気持ちを察したのか、それとも偶然かは分からないが彼女へと近づき手を取った。

 先ほどはゴブリンにおびえていた少女がだ。

 それに対しリルは目を丸め――。

 次の瞬間飛んできた攻撃に対しベールの手を引き、ほぼ反射するように避けた。

 慌てて自身と彼女にポーションを使ったリルは物陰に潜みながら彼女を見つめる。


「大丈夫、ってベールは大丈夫なの?」


 尋ねてみると首を全力で横に振るではないか……。

 リルは乾いた笑い声をあげつつそれを見ていたのだが……。


「でも、あいつは嫌い! リルちゃんを脅したりするし!」


 感情をむき出しにする彼女を見て、そんな表情もできたのかと考える余裕が出来たのだ。


「……ゲームだよ」

「ゲームでも!」


 リルが答えるとそれに対し怒る少女。

 そんな彼女に感謝をしつつリルはいつの間にか震えが収まっていることに気がついたのだった。


「ありがとう……なんか安心した」


 リルはそう言うと空いている手を握ったり開いたりと繰り返す。

 もう大丈夫だ。

 リルはゆっくりと深呼吸をすると物陰から飛び出す、

 すると、オークは腕を振り下ろす。

 ただ避けただけでは衝撃波によるダメージを受けてしまう。

 しかし、リルは先ほどよりも距離に余裕を持ち回避を試みる。

 風圧は感じたがHPは減ってはいなかった。


「遠い……!!」


 ノックバックを受けているわけではない。

 だが、距離を稼がなければリルのHPでは二発と持たないのだ。

 まさにプレイヤースキル殺しと言って良い魔物に対し――。


「序盤に出てくる敵じゃないって!」


 文句を言って見せるが、短剣では勝ち目がないと理解をしたリルはヨルムンガルドを手に取る。

 近づけないのであれば、遠距離から攻撃をする。

 それがアサルトの利点だ。


「リ、リルちゃん……っ!!」

「お願い! 氷の魔法を使って足止めして」


 リルの言葉に頷いたベールは力強く頷くと――。


「アイスランス!!」


 杖を光らせるといくつもの氷の槍がゴブリンキングへと向かって飛び始める。

 対しゴブリンキングは咆哮を一つ上げ、周りに居たゴブリンはまるでキングを守るように集まったが……。

 しかし、無数の氷の槍の前には意味もなく……キングの足元を貫き氷漬けにしていく――。


「ベール、ナイス!!」


 リルは笑みを浮かべると――弓へと矢をつがえ弦を引き――。


「ファールバウティ!!」


 スキルの名を叫ぶのだった。

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