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27話 巫女の祈り

「では巫女様杖を持ち祠の中へと……」


 村長はそう言うと先に祠の中へと入っていく、リルたちもまた彼の後を追う。

 すると――。


「これが……」


 リルは辺りを見回した。

 そこには蛇の形をした模様が描かれている深緑の弓、黒い靴に深緑の外套が置かれていた。

 特別レアアイテムのようには感じられないが、これら全てがユニークだというのだからリルは高揚感を感じた。


「それで、私は何をすればいいんですか?」

「まずは冒険者殿、そこの台座へフェンリルを……服はそのまま来ていて大丈夫だ。そちらの台座に立ってくださいますか?」


 他に防具を持っていなかったリルはほっと息をつく。

 何故なら装備を外せばインナーになってしまう。

 アバターであってもそんな姿になるのは恥ずかしいと考えて当然だろう。


「巫女様はそちらの魔法陣の中で杖を掲げてください」

「は、はい」


 リルは言われた通りに武器を置き台座の上へと立つ。


「ほほう、これは良いふともも」

「絶対あいつだセクハラ神……」


 村長のセリフにかつての仲間の姿を確信した彼女は半眼で睨む。


「……このゲーム、変じゃないですか?」


 そして、ベールもまた彼の発言に気持ち悪さを覚えたのだろう。

 現実では見たこともない表情だ。


「開発者に知り合いが絶対いる……変態のが絶対」


 リルがそう言うと――。


「え……リルちゃんそんな人と――」

「昔のネトゲ仲間だよ、現実で会った事なんてない」


 そしてアサルトという職業を入れたのもあの新しいジョブの説明。

 恐らくはその人の仕業だろう。


「とにかく、さっさと終わらせよう? ベールその魔法陣の中へ」

「うん……」


 ベールは魔法陣の中心で杖を掲げる。

 すると杖は優しい光を放ち……。

 その光は五つに別れ台座へと降り注ぐ。

 そして、同時に装備からは闇が放たれ杖を蝕み始めた。


「わ、わ……」

「……大丈夫落ち着いて」


 リルはバッドステータスはPTリストから分かるという事は調べていた。

 だからこそ、彼女に落ち着くように声をかける。

 何故なら掲げた杖を下ろしそうになったからだ。

 それも無理はない。

 杖を蝕む闇は現実では絶対に見る事のない光景だ。

 だからこそ、恐ろしく……彼女は助けを求めるようにリルを見つめる。


「リルちゃぁぁん……」

「ぅぅ……もう少しだから、ね?」


 だが、それを助ける術を持っていないリルは罪悪感を感じていた。

 すると――。


「ぅぅ~~~!」


 涙目で訴えられ、リルは罪悪感に耐えられず。

 装備を外しベールの元へと近づく。


「リ、リルちゃん!?」

「ほ、ほら! ね? 大丈夫だから」


 杖を掲げる彼女の手に自身の手を添えるが、いくらアバターだとはいえ恥ずかしい物は恥ずかしい。

 耳まで真っ赤にした少女は早く儀式が終わってと祈るばかりだった。

 ぎゅっと目を閉じ、待っていると――。


「おおー! 素晴らしい……」


 村長の声が聞こえ、リルはゆっくりと瞼を開ける。

 すると光と闇は収まっており……そこには顔を真っ赤にしているベールがいた。


「何でベールが顔を赤くしてるの?」

「だ、だって……」


 目をそらされてしまった事に少し心が痛んだリルではあったが、自身の姿を思い出し慌てて彼女から離れると急いでアングルボザを手に取り装備する。

 そして、咳ばらいを一つした後……。


「忘れて……?」

「……多分、無理……凄く綺麗だったし」

「…………っ」


 呟かれた言葉にリルは再び耳まで朱に染めるのだった。

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