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24話 愚か者の村

「こちらです」


 森の中を歩く二人はNPCの少女について行く。

 彼女の名前はミリーというらしい。


「それで装備無くなっちゃうの?」

「うーん……まだ、分からないな」


 困り果てるリルだったが、不可解な点はまだあった。

 先ほど手にいれた恐らくはイベント限定武器だと思っていたフェンリルについてだ。

 装備の情報はほとんどなく、加えてボス討伐後も彼女に回収されないのだ。


 リルとしてはありがたいのだが、これ以上町から離れてしまってから回収されたら流石に困る。

 何故なら、今リルは丸腰もいいところだ。

 フェンリルの隠されたステータスが強力だという事は分かるが……。

 装備の影響かリルのステータスは???という文字が書かれているだけになってしまった。


「バグ……じゃないよね」


 装備を外すと確かに元の数値に戻る。

 だが、装備をすると???となってしまう事から恐らくは仕様なのだろう。


「冒険者様、あちらです」


 暫く歩き続けたところでミリーは振り返り小さな村を指さした。


「あそこが君の村?」


 リルは一応尋ねてみる。

 するとミリーは頷き。


「はい、フールの村です」

「……なんかすごい名前だね」


 リルはあはは……とひきつった笑みを浮かべる。

 しかし、ベールの方はよくわかっていないのだろう首を傾げるだけだった。


「凄い名前?」

「フールってタロットとかの0番でもあるんだけど、愚か者とかはじめの一歩とかそういう意味合いなんだよね」


 後者の方だろうと思いたいが、まだ何も分かっていない状況では前者ではないと言い切れないのだ。


「それに……」


 リルはフェンリルをじっと見つめる。

 そしてアングルボザという名らしい服をつまみ上げた。


「どっちかと言うと愚か者の線が濃いかも」

「どうして?」

「アングルボザもフェンリルも神話に出てくるロキって言う人に関係があるんだよね」


 そう、リルは知っていたのだ。

 フェンリルはロキの息子であり、アングルボザはそのフェンリルの母だ。

 そして、もし残りの武具があるのなら……。


「ミドガルズオルム……もしくはヨルムンガルド、ヘル、そしてロキ……なんか呪われそうな装備だなぁ」


 ロキと言えば神話上オーディンの敵になる存在だ。

 だからこそ、何か良くない事が起きるのではと思いつつも隣に居る少女の影響でもしかしたら……。

 とも考えてしまう。

 それもそうだろう……彼女は運が良い、らしいのだから。


「何の話ですか?」

「いや、手に入りそうな武具の名前かな?」


 あくまで予想ではあった。

 しかし、恐らくそうだろう……。

 リルはそう思いつつNPCの後へと続く、村の中に入るとイベントのNPCの一人であろう中年の男性は――。


「ミ、ミリー!? どうして……」


 彼女が戻ってきたことに驚いているようだ。


「この冒険者様たちが助けてくれたの」


 どうやら親しい仲なのだろう、ミリーはやけに砕けた口調になっていた。

 すると中年はリルたちを見つめ。


「これは……娘を助けていただきありがとうございます……私が町長です」

「「ここ村でしょ!?」」


 どこかで聞いたようなセリフを聞きリルは思わず突っ込みを入れ、ベールもまた村を見て思わず声を出してしまったようだ。

 しかし、NPCはそんな事を気にすることもなく会話を続けていく……。


「我々ではさらわれた娘を助ける事などできませんでした」

「ああ、いえ……偶然、ですよ?」


 あまりにも人と変わらない様子にベールは戸惑いながらもそう答え。

 それが少しおかしく感じリルはクスリと笑う。


「な、なに?」

「いや、私もそうだったなぁって……」


 そうなの? と小さく口にしたベールは暫く小首をかしげていたが、なぜか嬉しそうにし始めた。

 リルはそれに疑問を抱えつつもNPCへと尋ねる。


「あの――」


 だが、NPCはリルへと近づくといきなり肩を抑え――。


「それは!」

「ひゃい!?」


 大きな声を出されてしまったリルは思わず素っ頓狂な声を出す。

 まさかこんな行動をしてくるとは思わなかったのだ。


「アングルボザ……奪われてしまったものです! まさか、あのホブを倒したのですか!?」

「ちょ、ちょっとリルちゃんを離してください!」


 肩を揺さぶられるリルを案じ、ベールは必死に男性の手をどかそうとするが、どうしても静電気のようなものを感じ触る事が出来ない。


「あ……ひゃい……」


 リルは目を回しながらもなんとか答えると男性はようやく手を放し……。


「おお! なんと素晴らしい!」


 変なポーズを決め始め――。


「これはこの村に伝わる伝承なのです!」


 どこかで聞いたような前文句で語り始めたのだった。

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