23話 連続クエスト
今回ばかりは危なかった。
リルは自身のVRゲーム歴の中でも結構な難所を越えたと自覚していた。
「リルちゃん、大丈夫!?」
ベールは怯えながらも近づいてきて……。
リルは「あはは」と乾いた笑い声をあげた。
大丈夫か? と言われればギリギリとしか言いようがない。
だが、それを言うにはリルは少々強がりだった。
「へ、平気……」
とはいえ、これだけ集中したのだ……。
彼女は座り込み、フェンリルという短剣を見つめた。
「これが無かったらきつかった」
そう言うとNPCへと目を向ける。
そこには座り込む少女の姿があり……。
彼女はゴブリンリーダーが倒されたことでイベントが進んだのだろう、突然立ち上がるとリルたちの元へと駆け寄ってきた。
「冒険者様、ありがとうございます!」
「ああ……うん、それより大丈夫だった?」
リルは座ったまま受け答えをする。
すると彼女は頷き――。
「はい、おかげさまで」
「け、怪我とかないですか?」
対しベールは彼女を案じたのだろう。
触れようとすると――。
バチリと静電気のような痛みを感じ慌てて手を引っ込めた。
「な、なに!?」
「NPCは基本向こうから接触するか、護衛クエスト以外では触れないの、変なことしないようにってね」
「え? でも今のは」
護衛クエストとではないのか?
そんな疑問を感じていたのだろうベールにリルは笑みを浮かべながら答える。
「護衛だろうけどモンスターは倒したし、それで触れられなくなったんだろうね」
そう告げた彼女の手をNPCが取り……。
「この度は本当にありがとうございました」
感謝の言葉を告げる。
「むぅ~」
自分が触れなかったのにリルが大丈夫なのが気に入らないのか、それともリルが触られたことが嫌だったのか?
他の理由があるのかは分からないがベールはどうやら不満のようだ。
「あら?」
だが、相手はNPCそんなベールの気持ちは関係なく会話は進んでいく……。
「その服はもしかして……」
「服?」
リルは自身の服を確認する。
それは昨日手にいれたばかりの狩人の服だ。
「ええ、それはゴブリンに奪われた村の武具の一つアングルボザです……神が残してくれた物なのですが……」
「…………えー」
折角手にいれたユニークシリーズではあったがこの流れは村に戻さなければならないのか?
そう思ったリルは思わず嫌な顔をしてしまった。
それもそうだろう、リルのステータスはこの装備で大幅に上がっているのだ。
「でも、上位互換が手に入るかもしれないし……ってこれ以上あるのかな?」
「どうしたの?」
ベールは状況を飲み込めてないのだろうリルに尋ねるが――。
「どうか、村に一度来ていただけませんでしょうか?」
少女の言葉と共にリルの前に近隣の悪夢2というウィンドウが現れる。
それを見ていたベールは首を傾げながら……。
「またクエスト、ですか?」
「うん、条件はこの服を所持してること、みたいだね……」
リルは少し迷ったが仕方がない、と考えると受諾を選び――。
「ありがとうございます、私一人では村に帰るのも不安だったのです」
喜ぶ少女を見て、ひきつった笑みを浮かべる。
対しベールはそんなリルを見てふたたび「どうしたの?」と聞くが……。
「この装備、手放さなきゃいけないかもしれないの」
リルが服をつまんでそう言うとベールは「え?」とだけ言い、呆けてしまった。




