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22話 フェンリル

 新たに手にいれたフェンリルという短剣を装備したリル。

 情報をしっかりと確認しておきたかったが、ユニークであることとこの武器がフェンリルという名前であること以外は分からなかった。


「だけど……」


 ここで渡されたという事は何か強力な武器だというのには間違いがないだろう。

 そう思ったリルは、いやそれしか方法がないと言ってもいいがフェンリルで戦う事を決意したのだ。


「これで、壊れたらシャレにならないなぁ……」


 少し不安を感じつつもナイフを握る手に力を籠め、ゴブリンリーダーへと短剣をふるう。

 するとゴブリンリーダーは身を守るようにその大きな鉈のような剣を振るったのだ。

 当然はじかれてしまうリルだったが、それは確信へと変わった瞬間でもあった。


 武器が壊れるのであれば身を守るなんて言う行動をとらないだろう。

 少し切らせてしまえば相手の攻撃手段を奪う事に繋がるのだ。

 いくらNPCだと言ってもそれぐらいの行動はしてくるだろう。


「連撃!!」


 リルは体制を整えるとスキルを使い攻撃を試みる。

 パリィをされた後ではあったが、攻撃に転じられたのははじかれた時の対処は別のゲームで慣れていたからだ。

 ダメージを与えると同時に血が飛び散りナイフや服を汚すが、酸の血というバッドステータスは効果を発揮していないようだ。


「よし!」


 攻撃手段を得た彼女は魔物を睨み――。


「ベール、大丈夫もう攻撃が通るよ」


 もう一度仲間の名前を呼ぶ。


「は、はい!」


 今度は反応を返してくれたことにほっとした。

 恐らくはリルがダメージを与えたことで敵を倒せるかもしれない。

 そう思ったのだろう。


「な、なんですか?」


 声の方へと目を向けると相変わらず腰を抜かしてはいるが、しっかりと杖は握っている。

 あれならば戦う事が出来るだろう。


「魔法を! 狭いからなるべく杖の効果は使わないで!」


 それだけを伝えゴブリンリーダーへと向かっていく。

 いくらフェンリルという強力な短剣を得たからと言っても魔法のダメージにはかなわないはずだ。

 恐らくヘイトを稼ぎやすいのはベール。

 このままではターゲットが移ってしまうだろう。

 だからこそリルは攻撃の手を緩めないようフェンリルをふるう。

 しかし、相手もただやられるだけではない。

 HPの3割を切った所で方向を上げ――。


「人間殺ス、殺ス!!」


 そう口にすると鉈を捨てリルへとつかみかかろうとするではないか……。

 彼女はそれに対し慌てて避けようとするが……間に合わない。

 こうなったらパリィしかないとリルはフェンリルで攻撃を受け流す。


「っぅ!?」

「リルちゃん!」


 何とかパリィには成功した。

 しかし、腕は痺れてしまい……。

 とても次はパリィが出来る状況ではない。

 いや、それどころか現状では回避も辛くなってきた。

 何か反撃の手段を考えなくては……。

 リルはそう考えるが――。


「人間殺ス!」


 ゴブリンリーダーはすでに次の攻撃へと移っていた。


「ファイアボール!!」


 それを見て声を張るのはベールだ。

 彼女はリルを守るために魔法を放つ。

 瞬間、ゴブリンリーダーは彼女を睨み――。


「ひっ!?」


 ベールは小さな悲鳴を上げる。

 それに気分を良くしたかのように笑ったゴブリンリーダーは一歩また一歩とベールへと近づいて行き――。


「ベール!!」


 リルは慌てて彼女の方へと向かう。

 腕のしびれはある程度はとれた。

 しかし、リルの連撃ではHPを削り切れないだろう。

 そんな時だ……。


『ユニークスキル ビューレイストを取得しました』


 無機質なアナウンスと共に告げられた新たなスキルをリルは祈るように確認する。

 そこには特に大した説明はなかった。

 だが……リル向きのスキルであることは十分に伝わったのだ。


「ビューレイスト!!」


 リルは新たに手にいれたそのスキルでゴブリンリーダーへと攻撃を仕掛ける。

 1撃、2撃……続いて行く攻撃は4撃目を与えたところで止まり――。


「魔法を!!」


 仲間へとそう告げたリルは――ベールが大きな火の玉をゴブリンリーダーへと向け放つのを見てほっと息をつくのだった。

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