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18話 魔法

 油断した! リルは舌打ちをしながらそう思った。

 なぜもっと早く気がつかなかったのか? フィールドでは血が飛び散るなんてことはなかったのだ。


「ベール、普通の魔法を使って!!」

「は、はい!」


 もしもの時にと考え、売らないで置いた初期装備を手に取ったリルはそのまま走り出す。

 カナリアの言った初心者向きではないというのはこういう事だろう。

 動きに慣れていないものは奴らの血を浴び、装備をロストする。

 身を固めても何の意味もないのだ。

 回避型が難しいVRゲームでは難関と言ったほうが良いかもしれない。

 だが、これもカナリアの言う通り中級者には確かに向かない。


 何故ならハイゴブリンは少し頑張れば初心者でも倒せるステータスだからだ。

 いくらボスがいるとは言えこのダンジョンは中級者以上が来る理由はないだろう。


『それに、装備がなくなるかもしれないデメリットが強すぎる』


 破壊不可の装備が現状どれだけあるのかは分からない。

 だが、それが序盤に出るようなことはそうそうないだろう。

 それこそ異様な運を持っている人物以外は……。

 そう考えるとここにはやはり低レベルで来たほうが良いのだ。


「っ!!」


 リルは攻撃をはじきつつ、相手にダメージを与えることはできない。

 足元には先ほどのハイゴブリンの血が広がっている……。

 しかし、時間経過とともに効力は失われたのだろう。

 それはまるで何もなかったかのように綺麗に消えていく……。


「ファイアボール!!」


 ようやく自由に動けるようになった時、上擦った声で魔法が唱えられる。

 狭い洞窟内ではあったが、リルは迫る火球を避けハイゴブリンが倒しきれなかった時に備え弓を構える。

 幸い杖の効果を使わなくてもハイゴブリン程度なら一発で倒せたようだ。

 ほっとしつつも、ベールの方へと振り返ったリルは――。


「続けて!」


 彼女へと短く伝えると再び走り始めた。

 目の前に居るのは後3体。

 この調子で狩ればなんとかなる。

 そう思い、リルは壁に徹しベールの魔法に頼りハイゴブリンを見事討伐するのだった。





「か、勝った?」


 最後の一体が消えていくのを見てペタンと座り込むベール。

 たいし、リルはふぅと息を一つ吐き出すとベールへと近づき腰を落とした。


「ちょっときついかな……というか、ここはベール頼りだね」

「え、えと?」


 リルの言葉に戸惑いを見せる彼女。

 それもそうだろう。

 まだゲームを始めて二日だ。

 それはリルも同じことではあったが彼女は別のVRゲームを体験していた。

 だからこそ、動くこと自体は問題は無いし、また戦闘タイプも得意な回避型だ。


「武器壊されちゃったらパリィもできないからね」


 普通はできない方が当たり前と言ったほうが良いのだが、それは彼女にとっては関係のない事だ。


「そういうものなの?」

「パリィは武器で武器をはじく事だからね、ナイフがないと……最悪剣でもいいけど」


 正確にははじくというより受け流すのだが、そんなことは些細な違いだとリルは考えた。

 そして、自分の持っていたMPポーションを数本手に取る。


「ベール、これも持ってて、この先はベールの魔法だよりだから、それと炎の魔法が聞かない時のために別の属性の魔法を取っておいてくれると助かるかな」

「う、うん! アイス、ランス? って言うので大丈夫かな?」


 首を傾げつつ尋ねてきた彼女に対しリルは頷く。

 そして、伸びをした後立ち上がると――。


「さ、行こうか?」


 ベールを立たせると共に歩き始める。


「この先どんなことがあるんだろう?」

「予想はつかないからダンジョン探索は楽しいんだ」


 リルはそう言うとまだ見ぬ先へと心を躍らせるのだった。

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