１１２話 兄さんの作戦？
リルは苦笑いをしつつ、掲示板の書き込みはとりあえずは何とかなったと考える。
しかし、自分では何もできなかったと少し落ち込んでしまう。
だが、そんな様子を見ていた兄さんは――。
「さて、よくわからないが書き込みは解決したようだが、この後どうする？」
と尋ねてきた。
「あ、あの……この後って……？」
ベールが訪ねてみると兄さんは大げさな態度を見せ――。
「恐らくハルはこの問題を面白おかしく動かすために書き込んだ人間を追い詰めるぞ？」
「…………」
それは別に仕方のない事だ。
なんてリルは言えるわけがなかった。
「それは……」
いやだ。
ハルは確かに酷い時はある。
しかし、本来は優しい人だったのだ。
だからこそ、多少のことは笑って済ませられた。
だが、今は違う。
彼女はレッドギルドに入ってしまった。
だからこそ、今回の問題で彼女が何かを起こす可能性がある以上。
「……どうにかしないと」
止めたかった。
これ以上、かつての友人が仲間が……レッド行為に走るのは見てられなかった。
「だな」
にかりと笑った兄さんへと頷いて答えたリルはベールの方へも顔を向ける。
「ごめん、ベール……ちょっと」
「うん！ 大丈夫、付き合うよ」
「……え？」
彼女の言葉にリルは目を丸める。
それもそうだろう。
いくら彼女としてもいきなり他者と競ったり、戦う事になると知ってはしり込みすると思ったからだ。
だが、それでも彼女は笑顔で――。
「だって、リルちゃんの友達なんでしょ？ 悪い事はやめさせないと！」
両手にこぶしを握り、それを胸の前へと持ってきた。
どうやら彼女自身の意気込みらしい。
驚きはしたが、リルはそんな彼女にほっともしたのだ。
このままハルと対峙をすることになって冷静でいられるだろうか？
確かに今現状であれば兄さんがいる。
彼の手を借りればハルを止める事は可能だろう。
だが……。
「ありがとう」
それでも元々仲間であった彼女を止めるというのはリルには難しいと考えていた。
だからこそ、ベールがいてくれることには安堵を覚えるのだ。
「ん？」
礼を告げると彼女は首を傾げるが、リルは微笑み――。
「えへへ」
と笑う。
するとベールもつられて笑い始めた。
それを見ていたミリーたちも笑い始めその場には和やかな空気が現れ始めた。
「さて、それでどう動くつもりだ？ リル」
暫くし、話を切り出したのは兄さんだ。
彼は真面目とは到底言えないが少し笑みを浮かべてリルへと尋ねる。
対しリルは表情を引き締め――。
「おびき出す……とは言ったもののどうやって引っ張ってくればいいかな」
邪神のささやきというギルドのメンバーで出会った事のあるのはハルだけだ。
他に誰が居るかは分からない。
恐らくは表立って動かないことでBANなどを避けるようにしているのだろう。
……しかしハルは違う。
実際に動き回り、この数日間何度か目にしている。
その理由さえ分かれば簡単におびき出すことはできるだろう。
しかし、その方法が分からないのだ……。
「ああ、それなら簡単だろう」
「……へ？」
だが、その方法に考えがあるのか兄さんは二カリと笑うのだった。
