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111話 兄さんの力?

 男性はニタニタと笑いリルの返答を待つ。

 しかし、リルはそれに応えることはなくぁなわなと震えながら彼を指さした。


「ん? どうした?」

「に、兄さん?」


 彼のアバターを知っているわけじゃない。

 しかし、何度も声を聞いた覚えがあった。

 だからこそ、彼が兄さんだと気がついたのだ。

 すると――。


「ああ、皆のお兄さんだ! 抱き着いて良いんだぞ?」

「……抱き着かないよ!?」


 いったいこの人は何を言い出しているのだろうか?

 リルは疑問に思いつつもツッコミを入れると――大きくため息をつく。

 間違いない、このふざけた感じはあの兄さんだと確信をした。


「……通報しますよ?」


 先ほどの発言で顔をひきつらせたベールがそう言うと兄さんは大げさに笑って見せる。


「そうなったら困るなぁ!」


 ならなぜ、そんな事を言うのだろう?

 ベールが訝しむような表情を見せたところでリルは彼女の方へと向き首を横に振る。


「昔からこんな人だし、考えるだけ無駄だよ? 疲れるだけだから」

「酷い言われようだ」


 リルの言葉にさえ笑って見せた彼は今度はニヤリと笑う。

 酷いと言いつつまったく気にしていないようだ。


「それで? どう動く?」


 そして彼はそう言うとリルへと再び目を向ける。

 どうやらミリーを助けるのに手を貸してくれるらしい。

 しかし……。


「どうって……」


 リルは戸惑いつつ、先ほどの書き込みを見る。

 するとそこにはもうすでに新しい書き込みが増えていた。


『可愛ければ何でもいいのかよ!』

『兄さん出てきたwww』

『兄さんのいう事だからそうなのかもなーってなるかい! 笑わせるなコーヒー返せ!』


 いつの間にか矛先は兄さんの方へと向かっているものも多く、それどころか彼が掲示板に書き込んだことでミリーに対する声も若干穏やかになっていた。

 それだけではない。

 決定的になるような書き込みも再び現れたのだ。


『これ、俺見たんだけどさこの子に女性プレイヤーが詰め寄ってなんか言ってたんだよなぁー、嫌がってたけど』

『あー、俺も見た、つか皆冷静になって見ろよ……原石の値段ってアルケミストなら割と楽じゃね? それにポーションの説明って確か追加で書き込むことはできても効果を偽る事って出来んのじゃ?』


 今までどうしても傍観に回っていたのだろう人の書き込みだ。

 わらわらと掲示板に群がり増えていく書き込みを見てリルは……。


「もう、解決してるんじゃ……」


 あきれたように笑う。

 兄さんはいつもこうなのだ。

 なぜか彼のいう事は信じてもらえる。

 いや、ゲーム内の彼の行動を見ればそうなるだろう。

 誰もが楽しめるように動く、それが彼なのだ。

 かわいいは正義だろという言葉……一見すればバカバカしい書き込みにしか見えない。

 しかし、誰を責めるわけでもなく、ふざけた書き込みで笑わせ、冷静なものがそれにさらに書き込んでいく。

 恐らくは彼がそうなると理解をしていたのだ。


「…………す、すごい」


 ベールは感心したかのように掲示板を見つめ、兄さんはキョトンとした表情で……。


「おやぁ? なんだか穏やかな感じになってきたなぁ」

「…………良く言うよ」


 リルは自分の出る幕はなかったと肩を落とすのだった。


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