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10話 追放と通報

「俺らが邪神のささやきだったらなんだよ?」


 ニタニタと笑う男たちだったが、力の差が歴然としているのは分かりきっている。

 しかし、それでも笑う理由は絶対的な自信があるからだろう。


「可哀そうな人たちだなぁ」


 そんな彼らを見てリルはそうつぶやいた……。

 周りには聞こえないようPTチャンネルに切り替えてだ。


「どうしたんですか?」


 すると当然PTメンバーのベールは反応をしてしまう。

 そんな彼女にPTチャンネルの使い方を教えたリルは……。


「レッドギルドが初心者を仲間に入れるわけないでしょ? 恐らく面白そうだからって理由でいらない装備を渡したんだと思うよ」

「え?」

「下手すれば盗品やコピー、データ改造品なんていうのもあるからね……」


 そんなものを押し付ける理由……。

 裏切られたと知った時、彼らがどんな行動に出るのか? それを見てギルドの人たちはあざ笑うことはだいたい予想が出来た。

 いや、恐らくはそれが目的だという事も何となくわかってしまった。

 借り物の力でリルたちを倒し、意気揚々としているところを外野に関係性を聞かれ――。

 そして――。


「お、おい!」


 一部彼らの思惑とは違うだろうが変化は訪れた。

 僧侶が焦り始めたのだ。


「なんだよ?」


 へらへらと笑う男はまだ気がつかない。

 だが、もう一人大盾も顔を真っ青にしている。


「ギルド追放されたんじゃないかな?」

「え?」


 リルがそう予想をし言葉に出した時だ。

 彼らの身体はデータの屑となって消えていく……。


「…………」


 それを見て剣士はため息をつきながら振り返ってきた。

 どうやら、もう終わりと言いたげなようだ。


「通報されたみたいだな」

「通報?」


 ベールが首を傾げて口を開くが、彼には聞こえない。

 PTチャンネルのままだからだ。


「現実と同じだよ110番して捕まえてもらったって思えばいいよ」


 リルもまたPTチャットで答えると――。


「あの、このゲームのレッドはどんなギルドなんですか?」


 彼に尋ねると彼は優し気な笑みを浮かべた。


「ああ、情報については掲示板の方が詳しく書いてあるよ……被害者の会専用でゲーム内の部屋にあるんだ。これがカギさ」

「あ、ありがとうございます」


 出来るだけレッドとは関わりたくない。

 そう思っていたリルはありがたく手渡されたカギを受け取る。

 ふと時計を見るといつの間にかもう0時になっていた。

 そろそろ寝よう、そう思いベールの方へと目を向けようとしたのだが……。


「それよりも君、凄いね……女の子なのにあのプレイヤースキル」

「な、なんでリルさんが女の子だってわかるんですか!?」


 警戒するように声を荒げるのはようやくオープンチャンネルに戻したベールだ。

 しかし、そんな彼女に苦笑をしつつリルは答える。


「このゲーム性別設定ないでしょ? 多分自動でギアのユーザー設定から判断してるんだと思うよ」

「そういうこと、だからこのゲームにネカマやネナベはほとんど居ないわけだ……まぁ、不都合が多いからね」


 数年前の事件で女性アバターを使っていた人がレディースディが使えないことに激怒したりと自認している性別がちぐはぐになってしまった事もある事から偽らないことを義務づけられているのだ。

 勿論、肉体と精神が一致しない人達は望む性別を選べるようになってはいる。


「それで、どうだい? 君とその友達……僕たちの女神の騎士――」

「お断りします」


 リルははっきりとそう言うと彼の鎧にぼんやりと映る自身の姿を見る。

 そう言えばアバターをじっくり見ていなかったなと考えつつも――。


「ギルド、自分で作りますし……兄さんを越すって言っちゃったので」

「そ、そうなのか……でも、ほら僕たちのギルドはトップギルドで……」

「だとしても、兄さんが作った”世界樹の騎士”以上の仲間を集めるって言っちゃったから、あの人約束守らないといじけるんですよ」


 あはは、と笑うリルだったが、周りがざわめいたことに気がつくと目を丸め首を傾げるのだった。

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