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107話 書き込み

「ほんっっっっっと、人使い荒いね……」


 シィの店につくなりクロネコはリルを一切見ずにそう口にする。

 それに対し、リルは少し困ったように笑い。


「あはは……でも、これ皆に関係あるし、下手に襲われて装備を落とすのは……」

「分かってる、分かってるよ……」


 はいはい、そう口にするクロネコはゆっくりとリルの方へと向き……。


「で、送られた情報の信憑性は?」

「……たぶん、だと思う」


 話にならない。

 そう思ったのだろう、心底呆れた顔をするクロネコ。

 それに対しリルは困ったように眉を顰め。


「やっぱり、ダメ、だよね?」

「そりゃー嘘を流すわけにはいかないでしょ! いくらなんでも」


 彼女は情報屋だ。

 例えリルたちのギルドに所属しているとはいっても他のプレイヤーに情報を売らないわけではない。

 だからこそ、情報の正確さが大事なのだ。


「……それじゃ、どうにかして情報を」


 しかし、他にペットを連れている人がいない。

 いや、実際にはいるだろうが、知り合いにはいないのだ。

 現状ではどうやって見分けるのかが分からない。

 盗まれることを考え、隠しているのもいるだろう。


「トートに頼むんだね」

「トートさんに?」


 意外な人物の名前が出てきた事に驚くリル。

 するとクロネコは……。


「あいつは人が良いからね、知り合いが沢山いるだろうし、初めてあった人でも大体は会話してくれるはずさ」

「あ……確かに」


 リルは最初に出会った時の印象を思い出しながら頷く。

 確かに彼に対しては恐怖や嫌悪感を感じなかった。

 それどころか良い人だなと思ったのだ。

 彼なら情報を集めてくれる可能性が高い。

 クロネコも勿論動いてくれるだろうが……彼女もまたペット持ちだ。

 それをねたみ襲われたり、教えてくれない可能性だってあるのだ。


「それにリルが行くより絶対に良いよ」

「なんで……?」

「掲示板、見てないの?」


 はぁ、とため息をついた彼女はウィンドウを操作し何かを見せてきた。

 どうやら、掲示板の一部をメモしてくれたみたいだ。


「……なにこれ?」

「不正でペットを取得……なぜかすぐに「リルたんがそんなことするはずがない」なんてコメもついてるけど」

「……これさっきの人だ」


 リルはすぐにこの情報を流したのが誰か予想をつける。

 すると苦虫をかみつぶしたように表情を変え――。


「ほかに同じような書き込みは!?」

「え……あ、いや……確か合ったけど……」


 それを聞くなりすぐに入口へと向かい。


「ど、どうしたのさ!」

「トートさんにはお願いしておいて! 私すぐに行かないと!」


 そう残し、掲示板のある広場へと急ぐリル。


「はぁ!? ちょっと……どうしたって言うのさ!!」

「大事な事なの!」


 リルは最後にそう声を上げると真っ直ぐと前を見つめ走るのだった。

 頭に思い浮かぶのは先ほど出会った少女ミリーだ。

 彼女もまたペットを売るように言われ、後悔するぞと脅されているのだ。

 きっと彼女の事を悪く言ったものが描きこまれているのだろう。

 そう判断し、リルはそれを確認するために掲示板へと向かう。

 彼女一人が行ったところで何かが変わるわけじゃないかもしれない。

 しかし、彼女だからこそ書き込めることもあるのだ。

 少なくとも、今は一人でも味方が居た方がいい、リルはそう思っていたのだが……。

 掲示板へと向かう前に人垣を見つけ、それが何か騒いでいることに気がつく。


「……なに?」


 いやな予感がした。

 その予感を信じそちらへと向かってみると――。


「お前、ルートしたアイテムで薬作ってたのかよ!!」

「泥棒! どうせそのペットも盗んで手にいれたんだろ!」


 怒鳴りつける声と――。


「ちょ、ちょっと、まってください!」


 この数日間でやけに慣れ親しんだ声が聞こえたのだった。

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