103話 お楽しみは……
暫く待つことにはなったが、ようやくリルたちの番になった。
原石を手渡すとNPCは嬉々としてプレゼントのような箱を渡してきたのだ。
恐らくはこの箱の中に装飾品が入っているのだろう。
「何が入ってるんだろう?」
「楽しみだね」
リルとベールは互いにそんな話をするのだが……そんな中、クロネコは祈るように箱を開け始め。
「………………っ!」
その目を輝かせる。
それだけで何が出たかは一目瞭然だろう。
「猫ちゃんでたの?」
リルが訪ねると彼女はこくこくと頷き出てきたアイテムを早速装備して見せる。
すると肩にしがみつく猫の姿が現れ……。
その猫は先ほどそれを見につけていた人のものとは違い、尻尾を揺らし……。
『ナァ~』
「……鳴いた! 鳴いたよ!」
クロネコが嬉しそうにそう言うと猫はすりすりと彼女の頬にすり寄る。
「……なにこの神装備!? ねぇ見た!? 見た!?」
「う、うん……」
見るからに先ほどの上位互換と言って良いだろう。
しかも猫好きにはこれほど嬉しい装備は無いはずだ。
「えへへへ……」
よほど嬉しいのだろうその顔は歪みきり、頬は少し赤く染まっていた。
「それじゃ私達も……」
「うん!」
二人は同時に箱を開ける。
リルは首を傾げつつ出てきた装備を見つめ――。
「笛?」
首から下げるペンダントにも見える笛だ。
「私はなにかの卵みたい」
ベールの方は何か卵のような物を見せてきた。
二人は合点がいかず首を傾げるのだが……。
「うわ!?」
クロネコの声に驚き二人はそちらの方へと向く。
すると肩に乗っていたはずの猫が地面におり歩いているのだ。
「……へ?」
ただの装備のはずだ。
そう思ったリルだったがすぐにもしかしてと考える。
「ペット?」
「そ、そうなのかな?」
クロネコは困惑をしながらも猫へと手を出してみる。
すると猫は機嫌がよくないのかそっぽを向き……。
更に構おうとするとクロネコの手を噛み始めた。
「猫だ……」
クロネコは噛まれていたがなぜか嬉しそうにしていた。
だが、それのお陰でリルは合点が行ったのだ。
「これやっぱりペットだよ……って事はベールのも本当に卵かも」
「本当? それじゃ温めてみるね!」
彼女もうれしそうにしていたのだが、リルはがっくりと項垂れる。
何故なら彼女が手にいれたのは笛だ。
「私の分はハズレ……か……」
二人のようなペットが欲しかった。
そう思いつつも彼女は手にいれた笛を吹いてみる。
すると――。
「え? えええ!?」
何かの音に気がついたリルは振り返ると目を丸め驚く。
その様子を見ていたベールとクロネコも固まっていた。
それもそのはず、そこに居たのはタカだ。
バサバサと羽をはばたかせるタカはじっとリルの事を見つめていた。
敵意も何もなく、ただじっと見つめてくるのだ。
「……え、えっと」
恐る恐る鷹師がするように手を差し出すと腕に厚手の手袋が現れ、タカはそれを確認したかのように降り立つ。
「……嘘」
驚きつつも自分もペットを得たことにリルは少し、いやかなり喜んでいた。
そんな時だ……。
「……なんだよあれ」
「いや、あんなの貰えるのかよ……ってか、本当にもらえんの? だとしても」
ずるいなどの言葉がいきかう中、リルたちはその視線に気がつくとそそくさとその場を去るのだった。




