101話 原石
リルは椅子に座ったままもう一つの疑問に対し首を傾げる。
「なにか問題あるの?」
クロネコは何かまだあるのか?
そう思いながら訪ねてきたのだ。
それに対し、リルはベールの方へと目を向け――。
「実は――」
リルはウィンドウを操作をし……。
原石をオブジェクト化する。
「な!?」
それを見てクロネコは机に手を置き立ち上がる。
一体どうしたというのだろうか?
リルとベールは首を傾げていると……。
「どうしたんですか?」
「どうしたもなにもないよ!! オリハルコン原石!!」
オリハルコンといわれてもリルは首を傾げたままだ。
実際前作には存在しなかった鉱石なのだ。
「ねぇ、それで……オリハルコンってなに?」
「……し、しらないの?」
クロネコの言葉に二人は頷く。
意外そうな顔をしたクロネコだったが……。
「これ専用のクエストがあるんだ……実際に武器にすることはできないんだけどさ……」
「……クエスト専用」
「鉱石を持ってこいってクエストなんだ……それでオリハルコンが最高の素材として判断されるみたいでさ……特別なアイテムがもらえるなんて噂があるんだ」
「噂……」
噂という事は実際にやったことはいないか少ないのだろう。
しかし、噂が立つという事は何かしらの理由があるはずだ。
「そのクエストって?」
「難しいの?」
リルとベールが食いつくとクロネコは笑い。
「「な、なに?」」
「いや、予想通りの食いつきっぷりだったからさ」
彼女たちの反応が思い通りだったのだろう。
クロネコは座り込み――。
「それじゃ、これからそのクエストやるからさ……一緒に行こうか?」
「え? でも……」
リルは彼女がオリハルコンを持っていないと思い引け目を感じた。
しかし……。
「実は持ってるんだなぁ」
クロネコはいらずらっ子のように笑い、原石を見せてきた。
間違いなくリルたちが持っている原石と同じものだ。
どこで手にいれたのかは気になったが、とりあえずはそれは聞かないことにし……。
「わ、分かった行こう!」
リルの返事を聞くなりクロネコは嬉しそうに笑う。
「そんなに難しいの?」
それに対しベールはそんな質問を投げかけるが、クロネコは首を横に振り。
「何がもらえるか分からない以上、護衛が居た方がいいからね」
「……なるほどって……私達まだLv低いからね?」
クロネコの言葉に対し納得をしかけたリルだったが、すぐにそう返すと……。
「Lvだけで判断したらいけないっていうのを君たちが教えてくれたようなものなんだけど?」
「…………そうなの?」
「あー……」
彼女の言葉に疑問を感じるベールと納得してしまうリル。
確かにVRゲームであればプレイヤースキルで何とかなる部分も多いのだ。
だからこそ、彼女は護衛対象に二人を選んだのだろう。
「それじゃー行こうか?」
「そうだね」
何も言い返せなくなってしまったリルはクロネコの言葉に頷く。
「え? え?」
しかし、合点がいかないベールだけは何度も首を傾げリルの袖を引っ張り始める。
「うん、クロネコの言う通りだから」
「なんで? れべる……って強さの度合いじゃ?」
「そうだけど……まぁ、それだけじゃないから……」
苦笑いをするリルと眉を顰めるベール。
そんな二人を見てクロネコはひそかに笑うのだった。




