99話 情報
その日はクロネコに任せることにし、リルたちはログアウトをすることにした。
勿論、クロネコには断ってのことだったが……。
翌日、学校が終わったリルたちがログインをすると目の前にはクロネコが待っていた。
何か情報があるのだろうか?
そう思ったのだが……。
「結果から言うと情報はなかった」
「そんな!?」
ベールは身を乗り出しクロネコに詰め寄るが、彼女は首を横に振るだけだ。
「無い物は無いんだ……二人のことも考えて、最近狩場でPKしているやつを探してたんだけど……」
「探してるのは落とし主だよ!」
ベールは訴えるがリルは彼女を止める。
何故ならクロネコは間違っていないと考えたからだ。
「それで、被害者がいないって事なんだね……」
「そういう事……こういった情報を集めると大抵被害にあった人を紹介されたり、被害者本人に会ったりするんだ」
彼女はそう言うと身をテーブルに投げ出す様に寄りかかり……。
「でも、ない、ひとつも……」
「……なんかおかしいね」
いないわけがない。
リルはそう考えたが……同時にあることも考えたのだ。
「って事はこの装備」
「多分盗品じゃないかな? それ更に盗られたとかさ」
「……うわぁ」
面倒なものを拾ったなぁ……そう思い昨日拾った装備を見て見る。
分類は武器だ。
リルが使えない装備であり、長剣タイプ。
レア装備なのかは分からないが昨日よく見ていなかった装備の説明を見て見ると――。
「ツーハンドソード……思ったより普通の装備だけどスキルが幾つかついてるみたい」
「ツーハンかぁ……」
リルとクロネコ大した装備じゃないことにほっとしたのだが……。
「じゃぁ、元の人を探さないと!」
「いや、それこそ無理でしょ……それについてるスキルも……」
大したことがなかった。
「体力上昇+30にATK-15……それにAGI-70かぁ……完全にタンク用だね」
「いや、微妙だけどさ……そもそもこのゲームでAGI上げるのはあんたみたいな人か、私のような間違った人だけだから」
クロネコはそう言うが……。
「いや、だとしても微妙じゃない? 体力って事はHPじゃないでしょ?」
「……いや、体力は一応HPだけど……まぁ30は微妙だね」
「微妙かどうかって……困ってる人はいるんだよ?」
「いや、うん……だろうけどさ、流石の私もお手上げだよ……PKの情報はあっても鉱山ではないってことになってるしね」
そう言われてしまうとこの武器の持ち主が気になってしまうが、探しようがないのでは仕方がない。
「この武器プレイヤー製だとは思うんだけど……銘が入ってないもんね」
がっくりと項垂れたリル。
そう、その武器には名前が一切入っていなかったのだ。
「せめて銘が入ってればね」
「銘? 刀とかみたいに?」
二人の言葉に首を傾げながら問うのはベールだ。
彼女の問いに二人は揃って首を縦に振る。
「プレイヤー製は銘が入れられるんだよね……正しくは入るって言ったほうが良いかも」
「そう、だけどねー」
はぁ……と大きくため息をついたクロネコはネコの様に伸びながら口にする。
「選べるんだよ、入れるか入れないかを……」
「うう……だろうとは思った」
リルはそう言うと椅子へともたれかかり大きくため息をつく。
するとベールは――。
「じゃぁ……元の人は……見つからないの?」
残念そうにそうつぶやくのだった。




