5.新米冒険者 アイリとベティ
椅子を弾き飛ばす勢いで立ち上がった少女と、その少女に引っ付いている少女を酒場にいた男たちは囃し立てながら、美少女が美少女の胸を揉みしだいている光景を見ていることにしたようだ。
「お、元気出たじゃん!よしよし。おねぇさんはそんくらいの元気は必要だと思うよ?」
いまだに両手はアイリと呼ばれた少女の胸を弄るのに忙しなく動いている。
「ちょっと、ダメ、・・んぁ!?周りの人が見てるから・・・やめて・・ちょっと、聞いてるの?ベティ!?」
アイリの反応に満足げな顔をして胸を揉みまくっているベティと呼ばれた少女。年はアイリと同じくらい。金髪のショートヘアの上には自己主張する上向きの三角形の耳。ベティは猫獣人である。ぱっちりとした碧眼は周囲を興味深そうに見まわしている。
立ち上がったアイリとベティの身長は大体160~165cmといったところか。ベティのほうが全体的にスレンダーで、袖なしのポケットの多い上着に短パンを履いており、腰にもポーチをつけて動きやすい格好をしており、武器としてか短剣を腰に2本、太ももにそれぞれ一本ずつ装着している。
「周りの人が見てなかったらいいの?アイリ~?それにしてももうちょっと成長しないといい男は捕まえられないよ~?感度はいいみたいだけど~。」
「揚げ足をとるな!変なこというな!!胸だけがすべてじゃないし、平均くらいはあるもん!!・・・多分。」
ようやく拘束&揉みしだきからのがれる少し涙目で頬を真っ赤にしているアイリ。
「朝からなんてことを大声で言ってるんだか・・・」
これ見よがしにため息をつくベティ。
「あんたが言わせたんでしょ!?何自分には責任が無いみたいに言ってんのよ!?」
「あんまり怒るのは体に良くないと思うよ?ほら、クールダウン、クールダウン。」
「怒らせてるあんたが言うな!大体何がおねぇさんよ一つしか違わないでしょ?」
「あれ?そうだっけ?まぁアイリは可愛いからねー。私がおねぇさんとして守ってあげよう。」
「はいはい、ありがとうございますー。だからって私の胸を揉む必要はないでしょ。こんな場所で。」
落ち着いてきたのか再び席に着くアイリ。その隣に座るベティ。いいもの見れたと満足そうな男たち。氷点下の目で男たちを見ている女たち。通常通りのギルドの姿だった。
「で?なんでそんな落ち込んでたのさ、アイリ?」
「はぁ・・・ベティにならいいかな?あんたと一緒に獣人の国、『暴食国 グラットンリーフ』から迷宮都市に来たのはいいけど、いまだにEランクどまり。実家にいる家族のためにももっと稼がなきゃいけないのに自分の生活で精一杯でさ・・・。」
「あんまり難しく考えないほうがいいと思うよ?私たちもまだ若いんだからさ。」
「わかってるけど・・・どうしてももっと早く、たくさん稼ぎたくなっちゃって。」
「メンバー募集する?そうすればもうちょっと上の依頼もできるし。」
「でもそれだと一人頭のお金も減るよね?まだ二人でいたいかな?」
「うーん。装備を見直す?」
「見直しても、新調する余裕ないし・・・。」
「だよねぇ。」
そんな会話をしている時だった。ギルドのほうが突然慌しくなり、みんながそっちのほうを向く。そのうち大声で何が起こったかを誰かが教えてくれた。曰く
「Sランクパーティー、【滅龍の剣】が帰ってきた」と。