19.夢幻の魅せる悪夢:崩壊の足音
「パパ?ボーっとしてどうしたの?」
その言葉にハッとする。目の前には自分の妻をそのまま小さくしたような、4歳くらいの女の子。今の自分は部屋の中で娘を膝にのせて、何かの昔話を語っていたところだったと思い出す。
時間が経つのは早いもので、アンナの名前を思い出した日から5年の時が経った。とある貴族の後ろ盾も得て仕事も順調に・・・はて?自分は何の仕事をしていたんだっけ?
「あなた?マリー?ご飯ですよ?」
「はーい!ママ!もうお腹ペコペコだよ!」
そういってお腹を押さえる娘。心なしか亜麻色のツインテールも元気がなくなっているように見える。その姿に癒されながら配膳を待つ。5年前から変わらず美しい妻に、元気で可愛らしい娘。男にとって二人は何よりも大切な宝物になっていた。
男が気が付くと、自分の家のドアノブに手をかけたところで止まっていた。時刻は夕刻。人通りはない。何故か大きくなる心音に汗が止まらず、呼吸も乱れていく。
変なところは一つもないハズなのに、開けてはダメだともう一人の自分が制止する。そんな自分を一笑に付しゆっくりとドアを開けた。
出迎えの声は無く、目の前には見たこともない男が二人。妻と娘の喉元にナイフを突きつけてドアを見つめていた。意味が分からない。妻を押さえている男が口を開く。
「おかえりなさーい。待ってたぜ?もうちょっとで奥さんで楽しませてもらうところだったぜ。」
「・・・お前らはなんだ?何故こんなことを?」
「単刀直入に聞くけど、お前の後ろ盾について教えろ。」
「言えるわけがないだろう。そういう契約だ。さっさと二人を開放して去れ!!」
「だろうなぁ。んじゃ、これでいいか?」
「は?」
二人の男が素直に従うとは思わずつい声を上げてしまう。だが二人は解放され、胸に飛び込んできたのを受け止める。
「アンナ!マリー!無事か?」
「ええ、何ともないわ。マリーも大丈夫よね?」
「うん、ママ。」
パッと見た限りでは大丈夫そうだ。しかし分からないのは素直に二人を開放したことだ。普通なら二人を開放する意味はない。そう思っていたところに胸元から声がした。
「ねぇ、あなた。・・・あなたの後ろ盾について教えてくれる気はないの?」
「え?何故お前がそんなことを?・・・だがたとえお前にでも教える気はない。」
「そう。じゃあ・・・さようなら」
え?と思った時には遅かった。白魚のような指が胸を、心臓を破壊して突き抜ける激痛が走り、意識が飛びかけ足から力が抜ける。疑問ばかりが頭を巡り・・・気がつけば自宅の部屋にいた。




