街へ
「よし、それじゃあ街に行こう!」
アベルは皆に言い、冒険者になるため街に向かった。
◇◆◇◆◇◆
「街までは戦場跡から五日くらいの距離だな。
水は途中にある川まで補給ができないから大切に飲むように。
食料は多少多く持って来ているが、獣を見付けたら積極的に狩ってそれを食べるようにしよう。」
道中は街道を進むためあまり魔獣は現れない。
その代わりに山賊が出ることがある。
商人や貴族が乗る馬車を襲うことが多いが、冒険者なども狙われることがあるらしい。
「その山賊って奴等と出会したらどうすればいいんだ?」
「悪い奴等なんでしょ?討伐しちゃえばいいじゃん!」
「えっ、でも人、ですよね?その、罪に問われたりしないんですか?」
デク、ミルク、ソラ。三人とも性格が違うからおもしろい。
「あぁ、山賊は討伐してしまって構わない。
だけど賞金をもらうためには先に冒険者になる必要がある。
だから山賊に襲われない限りは、こちらからは何もしないようにしよう。
まぁ基本的に山賊も商人や貴族を狙うから俺達は大丈夫だと思うけどな。」
そんな会話をしつつ、一行は街へと進んで行く。
道中は特に何もなく進んだ。
たまに獣を見付けるとアベルとソラが魔法で仕留め、それを晩御飯にする。
皆はじめての経験だ。
つい先日までは仕事に呼ばれるまでは特になにをする訳でもなく毎日を過ごし、食べる物もそこら辺で採れる芋と雑草ばかり。
寝る場所も廃屋か、自然に出来た洞窟や穴、路上が当たり前だった。
それが今は冒険者と言う仕事を目指し、食べる物も知識がついたおかげで木ノ実や野草、獣の肉などを食べれる。
寝る場所だけは今までとあまり変わらないが一人ではない。
ただ何もなく毎日を過ごしていた日々とはまるで違う、そんな毎日が訪れたのだ。
◇◆◇◆◇◆
「よし、予定だと今日中には街に辿り着くはずだ。
街に着いたら絶対に逸れないようにしろよ。
特にミルク!」
アベルは落ち着きのないミルクを名指しで注意する。
そんなアベルにミルクはブーブー言っている。
野営の用意を片し終え出発しようというときにそれは起こった。
「ん?なんの音だ?」
何かが近付いて来る音がする。
(気を付けろ。馬車が凄い勢いで近付いて来てる音じゃ。
もしかしたら山賊に襲われて逃げて来てる音かもしれぬぞ。)
「みんな、戦闘用意!馬車が凄い勢いで近付いて来てる。
もしかしたら馬車が山賊に襲われているのかもしれない。
もしそうだったら……。」
アベルは魔剣を構え音のする方を注視する。
それに続きデクが皆の前に立ち大盾を構える。
その死角に隠れる様にミルクが短剣を構える。
一番後ろにはソラがいつでも魔法を使えるように構える。
そして、
「馬車だ!なにかに追われてるみたいだ!」