アベル
「これからみんなには自分の名前を考えてもらう。」
そう、俺達には名前がない。
勿論、俺にもない。
「俺はアベルと名乗る。これから俺に用があるときはアベルって声をかけてくれ!」
魔剣がボソッと呟く。
「アベルとは我の名前とおなじではないか。」
「あぁ、俺とお前は一心同体なんだろ?だからアベルって名前にしたんだよ。」
「ふん。我と同じ名前なんぞ生意気な奴よのぉ。じゃが、まぁ、それもよかろう。」
魔剣アベルはなにやら嬉しそうにしながらそっぽを向いた。
それからグループ事に行動を開始した。
◇◆◇◆◇◆
「このグループは冒険者になってお金を稼いでもらう。
冒険者と言うのは、村や街などにあるギルドで依頼を受けてそれを達成してお金を稼ぐ人達のことだ。
とりあえず俺と一緒に近くの街に行ってもらう。」
冒険者グループには騎士団達の服や武器、防具を売らずに残しておいた分を着てもらっている。
これで見た目は怪しまれず冒険者として街に入れる。
その前に冒険者グループの実力を知るために訓練と魔獣狩りをすることにした。
このグループはアベルを含めて16人。
冒険者のパーティーは4人一組が基本のため四組のパーティーに別ける。
前衛、重装、支援、治療が基本となる。
「問題は支援と治療だよな…。」
前衛は武器を持ち攻撃をメインに行う。
重装は盾や鎧を着込み囮になったり隙きを見て反撃も行う。
支援は弓や魔法で遠距離攻撃を行う。
治療は道具や魔法で回復や補助を行う。
前衛や重装は教えればあとは実戦経験次第でなんとかなるだろうが、支援や治療は専門知識が必要なのだ。
「アベルは魔法使えたりするのか?」
「無論、我は魔剣じゃからの。魔法も使えるぞ?」
そう言うと魔剣アベルは掌に炎を浮かべた。
「なら魔力合わせも出来るってことだよな?」
「無論。オイ、そこの女。こちらに来て座って目を瞑れ。」
魔法アベルは冒険者グループの中にいた女の子を自分の前に呼んだ。
女の子が座って目を瞑るとその子の頭に手を置き、魔力を流しはじめた。
「こやつは適切ありじゃの。
オイ、次のやつ、こっちへ来て座って目を瞑れ。
こやつはダメじゃな。オイ、次!
こやつもダメ。
……………」
魔剣アベルはどんどんと魔力合わせを行い適正を調べて行く。
「何やっておる。最後は貴様じゃぞ、アベル。早う座って目を瞑れ。」
そう言われアベルも皆と同じように座り目を瞑った。
魔剣アベルの手が頭に乗っかる。
それと同時になにか暖かいモノが自分の中に流れてくるのを感じた。
そのナニカが頭から喉を通り、心臓を通り、そして臍の辺りで渦巻く。
そしてまた、ナニカは心臓を通り、喉を通り、そして頭から魔剣アベルの手へと返って行った。
「まぁ貴様は当たり前に魔力はあるな。」