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選択の時

「そうか。じゃあ俺達はこのまま王都へ行かせてもらう。」


アベルはそのまま部屋を出て行こうとした。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


「ソラの事は心配だけど他のみんなのことはどうするんだ?」


ミルクとデクがアベルを止めた。

アベル達の当初の目的はこの街で冒険者になり金を貯め、自分達の街を作ることだった。


(そうだ、それはわかってる。でも仲間を見捨てていいのか?)


アベルはこの体制を作った貴族達を憎んでいる。

その貴族に大切な仲間が連れ去られた様なものなのだ。


「アベル様。貴方様はどうされたいのですか?

一つ、ソラ様を追われ王都へ向かう。

二つ、当初の目的の冒険者になる。

三つ、私の手を借りる。

一つ目と二つ目は、恐らくどちらか片方しか手に入れることができません。

ですが三つ目でしたら、望むモノ全てを手に入れられますよ?」


カノンが三択を出した。


「……。お前すげー生活悪いな。

いいぜ。お前の企みに乗ってやるよ。

お前に協力する。だから、俺の望みを叶えろ!」


アベルはカノンの企みに乗った。

この場ではそうするのが最善だと思ったからだ。


ありがとうございます。と言いカノンはニッコリと微笑んだ。

そして、


「ゲイル様。アベル様達に手出しをしない約束はお忘れですか?

約束を違えると言うことは、私も国王とお会いする約束を守れませんが。

如何なさいますか?」


「ふん。手を出したのはそちらが手を出して来たからだ。

ソラ様に関しては伯爵様の元へ帰っていただいているだけだ。約束を反故にはしておらぬ。

故に国王には会っていただく。」


「そうですか。わかりました。

では、馬車には不幸な事故にあっていただき、ソラさんは返していただきます。

そして、国王には会わずに帰ります。

カゲマルとクロヒメは馬車へ。シロヒメはこちらへ。」


そうカノンが言うと三つの影が揺らめき姿を現した。

その場に居合わせた皆が驚いているとそのうち二人は一瞬で姿が見えなくなった。

そして残る一人も一瞬姿が消え、次の瞬間には押さえ付けられているデクとミルクの前に姿を現した。


トン、トン、


一瞬の事だった。

姿を現した瞬間、デクとミルクを押さえ付けている兵士は倒れ、そしてまた次の瞬間にはカノンの元へと戻っていた。


「ありゃ噂に聞くヒノクニのカゲって特殊部隊だね。

まさかあそこまでの実力があるとは…。

てことはソラ様の方も追い付かれちまうな。」


ゲイルの隣にいる甲冑の男がポツリと言う。


「ゲイル様。私達はこのまま帰らせていただきます。

この度はお世話になりました。

国王様にはこの件を書状にて送らせていただきます。

それでは失礼いたします。

アベル様、行きましょう。」


カノンは一礼すると出口へと歩き出した。


「くっ、何をボサッと見ている!あの女を帰らすな!捕まえろ!」


ゲイルは大声で兵士に命令をする。

だが、一瞬で自分の仲間がやられたのを見ていた兵士達は動こうとしない。


そしてカノンを先頭に一行は屋敷を後にした。


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