未来視の巫女 カノン
「いえ、是非とも部屋にお越しください。アベル様。」
巫女はそう言った。
「……。なんで俺の名前を?」
名前はまだ名乗っていない。
「はっはっはっはっは。びっくりしただろう。
巫女様は未来が見えるらしいのだ。
私も半信半疑だったのだがな。」
ゲイルは愉快そうに大笑いしている。
「私は貴方に会うためにこの街まで来ました。
貴方のこの先とその目的の為の大切なお話でもあります。
ですから、是非部屋までお越しください。」
巫女はそう言うとチラッと魔剣の方を見ながら
「アベル様、そちらの剣も一緒にお越しください。
他のお連れ様は申し訳ありませんが他の部屋でお待ちください。」
ニコリと笑いそう言った。
(あの女、お前に気付いてる口振りだな。
本当に未来が見えるのか?今は下手に逆らうのは得策ではないな。とりあえず話を聞きに行くぞ。)
(おもしろいではないか。
本当に未来が見えるのなら、貴様の望みを叶える力になるやも知れんぞ?)
二人の意見は一致した。
「わかった。俺もアンタには聞きたいことがある。付いて行こう。」
「ではこちらへ。ゲイル様、人払いをお願いいたします。私は大丈夫ですので。」
巫女は家主であるゲイルをも部屋に近付けさせず、アベルと二人っきりを望んだ。
魔剣アベルがいるので正確には三人だが。
◇◆◇◆◇◆
「改めまして先程はありがとうございました。」
巫女が改めて礼を言う。
「そんなことはどうでもいい。
俺を呼んだ理由はなんだ?そしてアンタは何者なんだ?」
疑問はたくさんあるが、まずは相手の考えを確認することにした。
「私としたことが。自己紹介がまだでしたね。
私はカノンと申します。
もうご存知でしょうが私はここより東の海を隔てた国、ヒノクニの巫女。他国風の言い方をすれば女王に辺ります。」
小さな大国ヒノクニ。
多くの国と人種族がいるアベル達の住むツチノクニ大陸とは異なり、ヒノクニは一国一種族。
ヒノクニ島と呼ばれる小さな島国国家なのだが、太古の昔より巫女と呼ばれる神の妻となる者が国を治めて来た歴史永き国。
国民は鬼人が多く、過去幾度となく大陸から侵略があったがその全てを追い返すほどの国力を持っている。
「私の様な小娘が国を治めているなどお恥ずかしい話なのですが……。
先程ゲイル様がお話された通り、私は未来を視ることができるのです。
幸か不幸か、私はその力故に今の立場にいるのです。」
未来を視る力。
本当にそんな力があるのなら、まだ17.8歳くらいの若さで一国を治めている理由に納得する。
「本当に未来を視れるのならな。」




