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異世界チートで友達づくり  作者: マカダミア
4/6

新たな世界

 気がついたら俺は、巨木がところせましとそびえ立つ大森林のど真ん中に、仰向けに寝転んでいた。木漏れ日に照らされながら、まだ重たい体をゆっくり起こして辺りを見渡す。

 植物についてそこまで詳しいわけではなかったが、地球には存在しない植物せある事は一目見ただけで分かった。なんか巨大な花とかがそこらじゅうに咲いてるし、花粉とかヤバそうだな。

 「・・・・・・ほんとに異世界に来たんだな、俺」

 ある日突然、見ず知らずの子供を助けるためにトラックにはねられて命を落とし、気がついたら自称神様に異世界に送り込まれた。今考えても信じられない出来事の連続だったと思う。

 地に着いていた右手の土を服ではたいて落とし、ゆっくりと自分の目元を手探りで探る。

 「・・・・・・分かるわけ・・・・・・ない、か」

 さすがに手探りで自分の顔を正確に把握するには無理があった。

 まぁできるだけ早く確認したいことだけど、今無理に調べる必要はないか。どこかに公衆トイレなんかがあれば・・・・・・って、こんな森の中にあるはずねぇか。

 とりあえず、人里に下りてみないと何も始まらないな。

 そう思い、まるで久しぶりに帰ってきた故郷を懐かしむかのように、周囲の珍しい景色を楽しみながら歩き出したのだった。途中、所々に生えている食べらるかどうか分からないキノコを非常食として取りながら。


 結果から言おう・・・・・・なにも無かった。

 あれから体内時計で2時間程森の中を歩き続けたが、人里どころか人の通った痕跡すら発見することができなかった。俺の体内時計は親父の特別な訓練を受けているため、間違えなく正確だ。異世界といっても地球と時間の感覚は一緒だろう。

 まぁ今はそんなことは置いといて、あれから道中にあるキノコをちょくちょく採取しながら歩き続けて、結構な数の非常食を確保できた。気温はそこまで低くなかったので、着ていたTシャツを脱いで袖口と首もとを結んで袋状にした物に放り込み、なかなかの量になっていた。

 食べられるかどうかを無視してほぼ無意識に放り込んできたが、全部食べられなかったら取り越し苦労になるな。できれば一種類くらい食べられるキノコがあってほしいんだが。

 そう思いながら袋からキノコをひとつ眺めている時ーーー。

 『ステータスウィンドウを表示します』

 「うわっ!?」

 急に頭の中に男か女か分からない中性的な声が響いた。と同時に、目の前に2つのコンピューターのような画面が表示された。

 突然の事で思わず後ろに尻餅を着いてしまった。

 こんなに驚いたのは小学生の頃、親父と一緒にお化け屋敷に行った時以来かもしれない。物陰から驚かせに来た幽霊役のスタッフさんが、親父の顔を認識した時の恐怖に歪んだ顔を今でも鮮明に覚えている。

 とまぁ、そんなことは今はどうでもいい。問題なのは、このゲームのようなウィンドウだ。完全に宙に浮いていて、触ろうとしてもすり抜けて感触も全くない。まるで俺の眼の表面に表示されているみたいに。完全に未来の技術だ。いや、人間の進化か?

 ウィンドウには見たことのない文字が書いてあった。これがこの世界の文字なのか? なんとなく形は難しくなさそうなので、練習すれば書けるようになると思う。

 初めて見る文字にも関わらず、まるで日本語を読んでるみたいに内容をしっかりと理解できた。どうやら最初にジジイが言っていた通り、言語のズレはどうにかしてくれたらしい。

 とりあえず、ひと通り目を通してみる事にした。



 《ステータス》

 名前:アオイ   種族:人間   性別:男   レベル:1

 職業:無職    流派:自己流派

 称号:怖い人

 スキル:威圧

 固有スキル:神眼

 耐性スキル:なし

 魔法:なし

 状態:なし


 《能力値》

 攻撃:100   防御:75   魔力:15   敏捷:50

 魔攻撃:20   魔防御:15

 力:70   魅力:5   運:-3



 《所持金》

  0z


 《アイテムポーチ》

 奮炎茸×48、聖命茸×32、魅了茸×22、青キノコ×43、紫キノコ×36、うるわしキノコ×40、精力茸×29



 左側のウィンドウには《ステータス》《能力値》が、右側には《所持金》と《アイテムポーチ》が書かれていた。

 この世界の能力は全て数値化されているようだ。ゲームと同じく経験値を積むことでレベルが上がり、能力値もそれに応じて増えていくという感じだろう。まるでRPGゲームの世界に迷い混んだみたいだ。そろそろモンスターとか魔物が出てきてもおかしくないな。

 そしてこの称号の所の『怖い人』ってのがどうしても気になるんだが。

 そう思うと一際小さいウィンドウが表れた。どうやら意識することで操作ができるようだ。


 称号『怖い人』・・・常人より威圧感があり、相手に恐怖心を抱かせる者に与えられる称号。スキル<威圧>を覚える。


 とうとう友達ができるか不安になってきたな。あのジジイ、ちゃんと目付きの悪さ治してくれたんだろうな。目付きが同じだったらいくら親父の名前が無くたって友達ができる気がしないんだが。治ってなかったらあのジジイを今度こそシメないといけねぇな。

 そして今気づいた事なんだが、さっきまで山ほどあったキノコの山(笑)が消えていたのだ。予想だが、意識したことによって全て《アイテムポーチ》にしまわれたのだろう。

 そう思い意識を集中させると、またしても小さなウィンドウが出てきた。それを順番に見ていく。



 《奮炎茸(ふんえんだけ)》(食物種)

 赤色の斑点模様が特徴のキノコ。食べることによってしばらくの間興奮状態になり、身体能力増強【小】と痛覚鈍化【小】が付与される。この効果は重複する。


 《聖命茸(せいめいだけ)》(食物種)

 全体的に綺麗な緑色をしているのが特徴のキノコ。食べることによって一定時間後、体力を微回復する。加工しポーションにすることで効果を増幅させる事ができる。


 《魅了茸(みりょうだけ)》(食物種)

 全体的にピンク色をしているのが特徴のキノコ。食べることによって一定時間の間、魅了アップ【小】を付与させる。この効果は重複する。


 《青キノコ》(食物種)

 名前の通り全体的に青色をしているのが特徴のキノコ。単体での効果はないが、調合次第で効果増強の効果を付与する。


 《紫キノコ》(食物種)

 名前の通り全体的に紫色をしているのが特徴のキノコ。単体での効果はないが、調合次第で作用時間の遅延の効果を付与する。


 《精力茸》(食物種)

 男性器のような見た目をしているのが特徴のキノコ。食べると一定時間の間、生き物の精力を大幅に増幅させる。効果が強すぎるため、ポーション等で薄めて使用するのが一般的。


 ポーションとかもあるのか、いろいろ実験して調合とかしてみたいものだ。

 そして今度は取り出そうと思うと、頭に思い浮かべた数だけ取り出すことができた。この《アイテムポーチ》には上限というのはないのだろうか。

 その事も含めていろいろと検証してみることにした。


 しばらく検証して分かった事がいくつかある。

 まず一つ目は、わざわざ毎回アイテムポーチを開かなくてもアイテムの出し入れができるという事だ。取り出したいアイテムのイメージさえあれば、自由に出し入れできるようだ。

 二つ目は、自分の手の届く範囲の物しか出し入れできないということだ。念じることでアイテムが光の粒になって消えた。だが、地面等に張り付いている物はしまえなかった。範囲に慣れるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。


 そして最後に気になるのはこの固有スキルの『神眼』っていうところなんだが。

 ーーーガサガサッ!

 「ッッ!?」

 突如近くの草むらから物音がしたので、反射的にその場から飛び退き距離を取り構えを取った。そして音のしている方を静かに見据える。

 人か? いや、こんな森の中で警戒もなしに不用意に物音を立てるとは思えない。そうなるとついに魔物かモンスターか? 素手でどこまで通用するかだな。

 そして草むらから飛び出してきたのはーーー。

 「・・・・・・うり、坊?」

 一匹のウリ坊だった。体長は地球のものとさほど変わらなかったが、明らかに地球のウリ坊と違う点があった。下顎から小さいながら確かに、白い牙が伸びていた。

 それにしても警戒心が全くない。俺が近くにいるにも関わらず、辺りの匂いを嗅ぎ回っていた。

 「・・・・・・」

 野生の生き物がこんなに警戒心の無い状態で大丈夫なのだろうか。

 そう思いながら俺は構えを解き、脱ぎ捨ててあった服の結び目をほどいて着た。横目にウリ坊を観察しながら全ての動作を行った。

 「よぉウリ坊、もしかしてお前も迷子か?」

 よく見ると、そのウリ坊は酷く痩せ細っていた。親とはぐれて長いのか、それとも育児放棄か、それか既に親はいないのか。

 そして俺はウリ坊をひと撫でした後、道中採取していたキノコを一式(精力茸を除く)を与えた。

 「・・・・・・強く生きろよ」

 そう言ってその場を後にした。

 野生の生き物に手を加えすぎると自分で生きていくという意志を奪ってしまうらしいので、これ以上の情けをかけなかった。


 ーーーズズズズッ!

 そこから数歩歩いた時に足を止めた。

 後ろの方から、あたかも漫画にありそうな不気味な擬音が聞こえてきたからである。

 今までに聞いたこともない物音に大いに恐怖した。まるで何かが急速に巨大化するかのような。

 そして音が完全に鳴り止んだ後、恐怖を必死に圧し殺しながらゆっくりと後ろを振り返った。

 「なん、じゃ・・・・・・こりゃあ」

 そこには体長5、6mはあろう巨大なイノシシがいた。

 誰もが恐怖すべきこの状況において俺は、全く違う感情を抱いていた。

 「・・・・・・ウリ、坊?」

 俺が持ったのは疑問だった。

 巨大イノシシが立っている場所には、先程まで俺の膝に届かないくらいの体長の小さなウリ坊がいたはずだ。

 ほぼ無意識に巨大イノシシの足元を見るが、そこには死体はなく、あるのは食べ散らかされたキノコの残骸が残っていた。


 ◆ ◇ ◆


 そんなこんなあり、物語の冒頭に戻る。

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