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最後の侍、異世界で幼女になる  作者: 井戸正善/ido
第一章:辺境の小さな侍
26/51

25.幼女は待っていた

よろしくお願いします。

すみません。眠さ限界でいつもより短いです。

肛門さん指ば(肛門に指を)入るっとは(入れるのは)戦場ん組討ちで(戦場の組討ちで)時々あっとよ(時々あるんだよ)ばってん(でも)おいのこの指ぎんた(俺のこの指だと)届かんけん(届かないから)串ば使うたとさ(串を使ったのさ)

「はあ……」

 ヴィーが語るのを、ブリジットはとてもまじめに聞き流した。


 墓地での戦闘が終わったあと、ヴィーとコレットはイアサントが用意した部屋に戻ってここ数日を過ごしており、今はコレットが夕食を作っているのを待っていた。

 ブリジットがいるのは、護衛を兼ねた連絡役としてイアサントに命じられてのことである。すっかりヴィーの訛りにも慣れた彼女が興味本位で戦場での動きについて尋ねたところ、ヴィーの口から次々と泥臭くて血生臭い内容が次々と出てきてしまった。


しっかい(しっかり)突き刺さっぎんた(突き刺さったら)力の入らんごと(力が入らなく)なっけん(なるから)後はどがんでん(後はどうでも)料理でくっとさ(料理できるのさ)

「ハイ、勉強ニナリマス」

「……大丈夫ね?」


 騎士訓練校で教えるような行儀の良い戦い方とは違うなんていう話どころでは無い。

 狙っての目潰しが如何に難しいか、鼻を叩くことの有効性などの話から入ったあたりまではまだ良かったが、槍に汚物を塗って破傷風を起こさせる話や先日の戦いでやった串を相手のまたぐらに刺す話になると、ブリジットは付いていけなくなっていた。

 落ち着いた日々だったが、ヴィーもコレットも王の命令で足止めを受けているも同然で、窮屈でもある。


「そう言えば、オディロンはどがんしたとね(どうしたんだ)?」

「彼は町の警備に当たっています。いつも通りと言えばいつも通りですが」

 彼は騎士隊の分隊長への昇進が決まっていたが、未だに危険が及ぶ可能性があるオレリや彼女の実家などを見張るため、自ら警備に励んでいた。

「同僚の騎士が一般の人に迷惑をかけていたことが堪えたようで、市民からの信頼回復のために奮闘しているようです」


あん人らしかね(あの人らしいな)

 ヴィーはオディロンという人物をすっかり気に入っていた。彼のような友人は得難いものだと知っているし、自ら危険に飛び込むことを厭わず、気付けば死んでいてもおかしくはない人物だとも判っている。

王都ば出て良か(王都を出て良い)ごとなっぎんた(ことになったら)挨拶ばしとかんばね(挨拶しておかないとな)


「やはり、王都を出るのですか?」

王様の許可が(王様の許可が)取れたらの話(取れたらの話)ばってんね(だけれどね)。コレットもおいも、この国ば見て回りたかけん」

 数日の間、ヴィーはコレットとじっくり語り合った。

 いつかコレットが話してくれた紀行文と地図を描く旅に、ヴィーはついていくことになった。


 そのために、彼女たちは互いに腹を割って話し、ヴィーは自分が元は伯爵家の娘であり、自分の父を断罪して貴族の位を捨てたことを伝えた。

 そして、コレットも子爵家の令嬢でありながら、自分の夢のために家を出て旅を始めたのだと教えてくれたのだ。

 二人は、貴族の地位を捨てた者同士であり、世界を見るという同じ目標を持つ仲間となった。


 話している間に、イアサントが訪ねて来た。

「失礼します。ヴィオ……ヴィーさん、少しお話が有ります。ブリジット、少し席を外してくれないか」

「コレットさんはお呼びしますか?」

うんにゃ(いいや)聞かん方が良か(聞かない方が良い)話んごたっ(話のようだ)


 ご明察です、とイアサントはヴィーの予測に同意し、ブリジットはコレットがいるキッチンへと離れていく。

 それを見届けたイアサントは、カーペットの上に胡坐をかいて座っているヴィーに倣う様にして、目の前に座った。

「……侯爵家の処分が決まりました」

「ん。聞かしてくれんね(聞かせてくれないか)


 イアサントはこの数日、一連の出来事についての後始末に奔走していたらしい。

 当然、断罪に関する決定権は王にあるのだが、裁定を行うためにはかなり多くの正確な資料が必要となる。

 膨大な情報をまとめて資料とするのも、彼の重要な仕事だった。

「侯爵家当主自身には、実質的なお咎めは無しです。例の墓地でヴィーさんが仕留めた男が死罪と認定され、侯爵は彼の動きを知らなかったと証言しました」


 貴族院の応援を得た侯爵は、自らの部下がとんでもないことをしたと言って被害者への金銭的な補償を約束し、むしろ立派な人物だと言う者さえ出たそうだ。

「手紙については知らぬ存ぜぬの一点張りで、部下が勝手に偽造したものだろうと話して、それが結果として採用されました」

 兵を率いた男は、後日に刑場の露と消える予定で投獄されているらしい。


「この件は、これで終了となります」

 侯爵は自領の開発が遅れることに歯噛みしているだろうが、金銭的な面と部下を数名失ったことで自らの身を守ったあたり、うまく逃げ切った格好になった。

「国王陛下は、王と言っても万能では無いことを嘆いておられましたね」

国のかじ取りてん(国のかじ取りなんて)難しかに(難しいに)決まっとっさい(決まっている)


 ヴィーの言葉に同意するように頷き、イアサントは話を続ける。

「それで、ヴィーさん。あなたからの要望についても相談いたしまして……許可が下りました」

そうね(そうか)……」

 スイッチが切り替わったかのように、ヴィーの表情は先ほどまでの可愛らしいものから一変、抜き身のような鋭い表情へと変わった。


「コレット。少し(少し)出かけてくっばい(出かけてくるから)

 奥の厨房に居るはずのコレットに声をかけ、ヴィーはするりと音もなく立ち上がると、部屋に置いていた剣を掴むと、ヴィーは玄関の前に立つ。

 ふと、ヴィーはイアサントを振り返った。

こいが終わっぎんた(これが終わったら)おいは(俺は)どがんなっとね(どうなるんだ)?」

「お望み通りの、自由が待っていますよ」

「ふふ……王様に(王様に)感謝ば(感謝を)伝えとってくれんね(伝えておいてくれ)


「ちょっと、どうしたの、ヴィー?」

 時刻は夕方。そろそろ夜が訪れようとする時間に突然の外出宣言だったので、急に何がと驚いて部屋に入ってきたコレットだったが、ヴィーの表情を見て悟った。

 彼女が何をやろうとしているのか、予め聞かされていたのだ。

「とうとう、その日が来たんだね」

「ああ、コレットは待っとって(待っていて)。……帰っぎんた(帰ったら)飯ば頼むね(飯を頼むよ)


 言い残して、ヴィーは建物を出て行った。

 目的地は、王都内にある侯爵の邸宅だった。

ありがとうございました。

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