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吸血鬼、月子さんの日常(仮)  作者: 半信半疑
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9 汚物は消毒だ!

 視点が変わります。

 月子さん以外もあります。

 

 コンビニを出ると、♭してしまった。

 …、あぁ、「ふらっと」だ。どうにも頭が働かない。ぼんやりとしてしまう。


 熱も上がってきているような気がするし、本格的に危ないかもしれない。

 寄り道せずに、さっさと帰ろう。


 私は、辛くない範囲で足を速めた。



▼△▼△▼



 私の名前は、汐留しおどめみちる。中学二年生。

 ないすばでーの持ち主だ。

 ……。

 自分で言っていて悲しくなったので、これからこの挨拶は封印しよう。


 今日は部活の会議が長引いちゃって、ちょっと遅めの下校途中。

 左手の腕時計を見ると、七時を大きく過ぎていた。


 季節が冬だから、午後七時ともなれば辺りは真っ暗だ。まるで墨を流したみたいにまっくろくろすけしてる。街灯の明かりも、何だか頼りなく見えてしまう。


 私の住んでるマンションは学校から少し遠いので、現在は小走りで帰っているところ。

 いつもは自転車で通学しているんだけど、今日に限ってパンクしてしまったので学校に置いてきた。


 遅くなることは事前にメールで知らせているから、ママは怒ったりしないだろうけれど、早く帰りたいのも事実だ。


 そんなこと、神様は知ってか知らずか、私に危機的状況を用意してくださった。

 それが、目の前にいるおじさんだ。


「へへ。

 お嬢ちゃん、ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど」


 ピンクのオーバーコートを着たおじさんは、前のボタンを一つ一つ外していってる。よく見ると、おじさんはズボンもくつ下もはいてない。不倫でもしてるんだろうか。


 さきほどの言葉も踏まえると、明らかに不審者だ。むしろ不審者じゃなければおかしい。


 こわい。


 不審者にからまれるのが、こんなにこわいとは思わなかった。痴漢の話を友達から聞いたことがあるけれど、あの時は「そんなの返りうちにしてやる」と強気に考えていたのに。


 種類は違うといっても、実際に変な人と出会ってしまうとやっぱりこわさが先立つんだなぁ。


 どうしようどうしよう。

 そんなパニック状態にいる間にも、おじさんは近寄ってくる。息が荒くなっているのが分かったけど、できれば分かりたくなかった!


「お嬢ちゃん、これが見せたいものだよ」


 そして、おじさんがコートの前をはだけさせようとした。

 その時だった。


 後ろから誰かが近づいてきた。

 ものすごい速さで。

 そのせいで突風が生まれて、私のスカートがめくれあがってしまった。でも、私はまだ恐怖から立ち直っていなかったので、スカートを押さえることもできなかった。


 今日はくまさんのプリントがしてあるものだった気がするけど、今はそんなことを考えるよゆうがない。


「ぐぇ」


 後ろから現れたその人は、通りすぎるやいなや、おじさんをけり飛ばしてしまった。

 おじさんは、つぶれたカエルみたいな鳴き声を発した後、地面を転がっていった。

 その、多分だけど、あれはすごく痛いと思う。


「い、いったい、何が?」


 私は思わず声に出していた。まるで、物語を進めるための台詞みたいだとは思ったけれど、つぶやかずにはいられなかった。


 私の少し前には、きれいな金髪をポニーテールにした、私と同い年くらいの女の子がいた。いや、マスクをしているから正確なところは分からないけれど、大きく外れてはいないと思う。


「こいつは?」


 私が彼女を観察していると、その本人から声をかけられた。少しかれているけれど、可愛い声だった。風邪をひいているのかな?


「え?」

「こいつは、なに?」


 な、何って、そりゃあアレですよ!


「へ、変態さんです! おそわれそうになりました!」


 ちょっと声が上ずってしまったけれど、きちんと答えを返すことができた。


「そう。じゃあ、潰しとくか」


 それから、私が止める間もなく、彼女は、そのおじさんのアレをつぶしたらしい。

 すすすっと近づいて、足のかかとでドン!

 まさに早業だった。


「パウッ!」


 おじさんは変な叫び声を上げた後、口から泡を吹いて動かなくなった。

 大丈夫かな? アレをつぶすなんて…。

 昔、お父さんのアレを思いっきりけった時に、すごく痛そうにしていたのを覚えているから、とても心配になる。おじさん、生きてるかな?


 不安な顔で見ていると、彼女が近寄ってきた。


「これで、大丈夫。悪は、滅びた」


 正面から彼女と向き合う。その時、彼女の目が見えた。

 トロンとしていたけれど、とてもきれいな目だった。正直、おじさんのことなど頭から消え去ってしまい、彼女の目に夢中になった。


 私に一言告げた後、彼女は役目を終えたウルトラ戦士のように、その場を去ろうとする。


 それと同時に私は正気に戻り、彼女にお礼を言った。


「あ、ありがとうございました。あの、あなたのお名前は?」


 ついでに名前もきいてみた。


「月子」


 月子さん……。

 なんて格好良くて、可愛らしいお方……。


 彼女の後ろ姿が消えるまで、私はその場で桃色光線を放ちつつ、その姿を目に焼き付けた。

 結果として、帰宅時間がすこーし遅くなってしまったのは秘密だ。


 おじさん? その場に放置してきたよ。



▼△▼△▼



 あー。

 頭がぼうっとして、よく覚えていないけれど、何か蹴った気がする。

 あと、人助けをしたような? よく思い出せない。

 いててッ。頭痛がした。早く家に帰ろう。


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