8 清眼家の食卓
朝です。新しい一日の始まりです。
時間は六時くらいでしょうか。いつも大体それくらいに起きますから。
辺りはとても静かです。マンションの皆さんは夜に行動する方ばかりなので、今、眠りにつこうとしているのかもしれませんね。
さて、もうそろそろ起きないと、朝の仕度ができません。
とはいえ、冬の朝は寒いので、あまりお布団から出たくないですね。
ですが、あと二時間もすればお仕事の時間です。名残惜しいですが、魅惑のお布団ワールドから抜け出します。
途端、襲ってくる冷気に体が震えてしまいました。ぷるぷる。
逃れる術はただ一つ。
「すぐさま着替えることだけ…」
私は、クローゼットにしまってあるメイド服を取り出し、着替え始めました。
お布団の中で着替えるという方法もありますが、それをするとしわができてしまうのでえぬじ~です。
は~。朝の試練は厳しいですね。
私は布団に包まりたい衝動を抑えながら、朝の試練に立ち向かいます。
まずはパジャマを脱いで、と…。
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厳しい試練を乗り越え、私は覚醒しました。
「特別な力に」ではなく、「意識が」ですが。
ちょっと上手いことを言ってみました。えへへ。
以前、月子さんからお借りしたDVDを見て思いついた洒落です。月子さんに言ったら喜んでくれるでしょうか? 今度話してみましょう。
さて、カーテンを開けると、光が射し込んできました。新しい朝という感じがして、とても気持ちがいいです。また一日が始まります。
やるべき仕事はたくさんあります。そのためには精をつけなければなりません。これについては、有名な言葉が残っています。
「腹が減っては戦ができぬ、ですね」
そう、私のお仕事もまた、「戦」なのです。埃や塵、汚れとの戦いです。
ゆえに、ご飯を食べるのは義務なのです。決して私が、食べることが大好きな食いしん坊というわけではありません。ないのです!
…ないのですよ?
こほん。
気を取り直して、今日は何を食べましょうか?
ご飯は炊き終わっていますから、お味噌汁でも作りましょう。あとは、目玉焼きやウィンナーでも焼きますかね。焼き魚は、後片付けが手間ですから控えておきます。
「うーん、あと一品くらい欲しいですね~。ここはひとつ、冷凍食品のおかずから選ぶことにしましょう」
私は、冷蔵庫の冷凍室を漁りました。最近の冷凍食品は凄いです。大抵の食品がありますし、何より美味しいです。お料理にかける時間を短縮できますし、良いこと尽くめですね。
とはいえ、私はお料理を作るのも好きなので、冷凍食品をメインにすることはあまりないのですけど。まぁ、忙しい朝の心強い味方ではあります。主婦・主夫の方々の味方でもありますね。
「今日はこれにしましょう」
取り出したのは、二、三日前に買ったものです。レンコンの間に魚のすり身などを挟んで揚げたものですが、食感といい、お味といい、素晴らしいの一言。重すぎないし、朝食には良いと思います。
レンジでチンすれば、すぐにできてしまうので、先にお味噌汁づくりに取り掛かります。もちろん、出汁から取りますよ? こうした一手間がお料理を美味しくするのです。具材は、自家製のお野菜です。
そうです、家庭菜園でお野菜を育てています。お料理と同じで、お野菜も手間暇をかけると美味しく育ってくれるのです。広い面積で育ててはいないので、そこまで手間でもありません。
そんなお野菜を、刻んで出汁に入れていきます。時間短縮のために、同時進行で目玉焼きやウィンナーを焼いていきます。
あとは、頃合いを見て味噌を溶かしたり、目玉焼きとウィンナーをお皿に盛りつけたり、レンジでチンをしたりします。
そんなこんなで、お料理完成です。
お茶碗にご飯をよそって、美味しい朝の食卓です。
「では、いただきます」
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「ごちそうさまでした」
お布団で寝るのと同じくらい、至福の時間でした。
食卓の描写に文字を費やそうと思えば、それこそ原稿用紙五十枚分を費やせるのですが、朝から疲れてしまうのは私の本意ではありません。ですので一文だけで止めておきます。
さて、お次はお仕事ですね。頑張りましょう!
不羅宇「甘いものも好きですが、その他の食べ物も大好きです」
彼女は、食べる行為そのものが好きなようです。