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吸血鬼、月子さんの日常(仮)  作者: 半信半疑
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0 眠る吸血鬼

 そこは、冷房の効いたマンションの一室だった。人一人住む分にはかなり広めの部屋だ。

 黒桐町くろきりちょうという町にあるマンション、【フリークス黒桐くろきり】。五階の一部屋、2LDK。その中の洋室。


 適度に整理整頓された部屋には、多くの物がある。よく見ると、ゲームやライトノベル本の類が棚に入りきれずに、そこかしこに置いてあった。どうやら部屋の主は、日本のサブカルチャーにはまってるらしい。ある棚には、可愛らしいフィギュアが複数置いてある。中には熱血系主人公のものもあった。


 外では蝉が忙しなく鳴いていたが、それと反比例するかのように室内は静かだ。ただ、そんな部屋にも音は確かに存在する。よく耳を澄ましてみると、エアコンの駆動音に混じって、小さな寝息が聞こえる。すぅすぅという、可愛らしい寝息。


 部屋にあるベットで、白い肌の女性が静かに眠っている。お腹には、冷えないようにとタオルケットが掛けられていた。それにはデフォルメされた動物の絵が描かれている。呼吸に合わせて、その絵が浮き沈みしていた。


 彼女の白い肌はきめ細かく、金色の長い髪はさらりとベット上に投げ出されている。美しい金色、いや、黄金であった。何かで染めたようなものではなく、彼女のソレは、生まれた時から変わらぬ色だ。アオキ衣を纏って、降り立ってしまうくらいの金色。輝きが違う。


 ただ、見た目は少女のように愛らしい。大体、中学生くらいだろうか。小さくて細い手足は、触れれば折れてしまいそうだが、骨ばっているというほどではない。ほどよく肉が付いていて、女性特有の柔らかさも感じさせている。

 少しだけ開いた口からは、八重歯がちらりと顔をのぞかせており、女性の印象をさらに幼くさせていた。


 しかし、その見た目に反して、彼女の実年齢は、とうに二十を超えているという。幼さに反する年齢とのギャップは、とある界隈で歓迎される要素らしいが、彼女もその対象に入るかもしれない。噂では、彼女を応援する紳士の会合があるとかないとか…。


 彼女の寝姿から目を離し、窓の方を見ると、カーテンから茜色の光が漏れていた。

 日は西に落ちていき、太陽はその光を弱めていく。昼を生きる人間たちは、やがて来る暗闇に備えて、夕ご飯の準備や、家族の待つ家へ向かって足を動かしていた。電柱の明かりもポツポツと点き始めている。

 直に、夜が来る。


 彼女は吸血鬼。様々な言葉で語られる存在。

 人の生き血を啜る者。夜の支配者。深淵に生きる者。

 しかし、今はまだ眠ったまま。

 恐ろしい称号を持つ彼女も、ただただ可愛らしい、幼い少女にしか見えなかった。

続きはまだない。

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