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英雄から一転、国家罪へ転落!?

 俺たちは今、お城にいる。ていうか、謁見の間にいる。


「国王陛下の~、おな~り~」


 来た。国王陛下だ。ネウがガキとか言ってたから、若いのかと思ったら、普通におっさんじゃねーか! って、そうじゃなくて。いかんいかん、礼儀正しくしてないと。


 俺たちは跪いたが、ネウだけは腰に手を当てて棒立ちのまま。おいっ!


「そこの者、無礼であろう!」


 大臣が注意をしたが、国王陛下は手でそれを静止させた。


「よくぞ参った。戦士たちよ。生ける伝説、ヴァンパイア・ロードを討滅したと聞き、誠に感謝している。奴の所業には、我々も困っていたところでな。礼を言う」

「い、いえ……」


 やっべ、マジ緊張してきた。しどろもどろになってんじゃねーか!

 そりゃそうだ。こんな光景、見たことねーよ。騎士達がずらーっと並んで、大臣とかのお偉いさんがいっぱいいて、中央に国王陛下とか。膝がガクガクしてんぞ!


「表をあげよ。君たちには報酬として、三億ジェム支払おう」

「さ、三億ジェムぅ!?」


 さ、さ、三億ぅううううううううううう!? なにそれ、一生遊べる金額じゃん!

 なんかもう、冒険とかどうでもよくなってきたんじゃね、これ? いやいや、ダメだろ。それだったら、レジェンド・レア売り払えばいいことなんだから。ダメダメ。こんな金額に負けるな、俺! 三億かぁ……しばらくは豪遊生活だな。


 大人のおねーさん達といっぱい遊べる店いきてーなー。って、俺。未成年だけど。

 いや、18歳だからセーフか? セーフセーフ。セウト!


 ダメだ! ナニ考えてんだ! 国王陛下の前だぞ! しゃきっとしろ! 変な妄想してる場合じゃない!


「時に、コタローとやら。騎士団に入る気はないかね?」

「え? 騎士団、ですか?」

「そうだ。我が国の騎士として、この国の為に戦って欲しい」


「……せっかくですが、俺は……」

「そうか。仕方あるまい。無理強いはせん。実はな、近日……魔王軍の幹部、獣王ベイザスとの戦いを控えているのだ。奴はこの国に対して、宣戦布告をしてきた。直にこの王都は、戦の場となろう」


 魔王軍の幹部ぅ!? おいおい、冗談だろ。なんてものと戦わせようとしてんだ! あっぶねーーーーーっ! 断って、大正解じゃねーか! 騎士特権とかで、ウハウハ生活しようとかちょっと夢見たけど、マジ危なかったー!


「その幹部、ベイザスにも懸賞金は掛けてある。そなたの腕ならば、打ち勝てるやもしれぬ。期待しておるぞ」


 何、勝手に期待しちゃってんの、このおっさん! それって俺に倒せって言ってるのと同義だろ! ふざけんなっ! 金より、命っ! 自分の命の方が大切ですから! しかも、三億貰ってまだ、金の為に戦う奴がどこにいるんだよ! いねーよ! ハゲっ! ハゲじゃねえけど! この、ハゲッ!


 ぜぇぜぇ……いかん、何一人で頭の中で突っ込んでいるんだ、俺は……。


「久しいのう、ビルネクス。ガキんちょだったお主も、今や民衆の上に立つ王とは、かっかっか! 人間の人生は短いもんだの」

「何……?」


「貴様っ!」

 騎士たちが集まって来た! やめろ、ネウっ! 何言い出してるんだ!


「儂のことを覚えておらんか? 無理もないか。儂が城内に侵入して遊んでおった時のことじゃよ」

「……城内に侵入……? まさか……」


「思い出したか? そうじゃ。儂じゃよ。ネウ・ルクス・ビルロードじゃ」

「ヴァンパイア・ロード……!」

「なっ……ではっ!?」


「余を謀るとは……貴様がしそうなことだ。この私を殺しに来たか、ビルロード」

「何をゆーておるのか、お主らが勝手に勘違いしただけのことよ。儂はお主の命なんぞに何の興味もないわ。あったら、とっくにあの時に殺しておる」


「……」

「貴様っ! 陛下! お下がりをっ! ええい、何をしておる! 出会え、出会えっ!」


 国王陛下は俺を見た。ひっ、こわっ。鋭い視線で睨みつけられるのすげー、怖いんですけど。


「……なるほど。どうやら、ギルドが勝手に勘違いしたようだな。貴様の姿を知るのは、この私ぐらいしかいないであろう。少年、君とビルロードの関係はなんだ?」

「えっと……この二人、リリィ達に頼まれてヴァンパイアを退治しにいったのは本当です。それで、結局……殺す気にはなれなくて。だから、一緒に冒険しようって……」


「……」

「かっかっっか! この儂に求婚した男じゃ、こやつは」

「ちがっ! 俺の血を吸う代わりに、他の人間を襲うなって話したろ!」


「なるほど、そういうことか……しかし、目を瞑ることはできんな。ヴァンパイア・ロードを譲り渡すのならば、よし。でなければ、国家罪として、そなたらを幽閉することになる」


「そんな……」

「ふん、こんな阿呆の言う事なんぞ、聞く必要もなかろう。やろうと思えば、儂一人で全滅させることも余裕じゃろうて。試しにやってみるかの?」


「出来るのならば、してみるがいい」

「ふん……」


 ダメだ。ネウの眼がマジになった。ヤバイ。止めないと。どうしてこう、上に立つ連中って高圧的なんだ! 思いやりとかそういうのないんですかね! 立場上、仕方ないとしたってさぁ!


「逃げるよ! ネウっ! リリィ達も! 早く!」

「なっ……ここからが、面白いところだというのに!」

「逃がすなぁ! 追えー、追えーっ!」


 ぜぇぜぇっ、なんでっ、こんなことにっ! 王様に報酬貰いに来ただけだったのに! ネウのせいで一大事じゃないか! くそ、やっぱり断っておけばよかった!


「くっく……面白くなってきたではないか。こうでなくては、旅はつまらん」

「こんなスリルは求めてませーん!」


「追手が来たぞ、主よ。どうして参る?」

「どうするって……殺すのはダメだって!」

「自分が死ぬかもしれんのに、躊躇してる場合かの?」


 走りながら。必死に、走りながら問答する。くそっ! なんでこうなる!


「お前なら、殺さずにやっつけられるだろ!」

「なんじゃ、儂頼みか? 構わんが……後でキスしてくれるかのー?」

「キスでもなんでも、してやるから、なんとかしろっ!」


「かっかっか! よいよい! いい返事じゃ! では、助けてやろう!」


 誰のせいだと思ってやがる! あっという間に、英雄からお尋ね者だよ! そんな上下激しい動きとか、株とかFXでもねーぞ!


「深淵よ……我は闇に住まいし者なり。我と汝は共同し、我の敵となりし者を討たんとすることを!」

 魔法……か!?


「ダーク・ストームッ!」


 ネウの手から闇の波動が走り出す! 俺に使った時は、無詠唱だったよな……詠唱したってことは……より威力が増しているってことか!


「ぐああああっ!」

 闇の波動によって、騎士たちが吹き飛ばされていく。殺してないだろうな……。


「やれやれ。騎士のレベルや、鎧の防御力、障壁率など……全て計算に入れなければならんのじゃぞ。殺すよりも、無力化する方がよっぽど大変じゃというのに。それを簡単に命令してくる主とは、なかなか……」


 たしかに。ガキの喧嘩じゃあるまいし、殺し合いの場で、相手を殺さずに無力化するなんて、並大抵のことじゃない。歴戦の猛者であるネウだからこそ、出来る芸当だ。


「ま、儂の場合は立場上、相手を無力化してから吸血しておったからの。殺してから吸ってもマズくなってしまうからのー。そういう面でいえば、相手を殺さず無力化する方法には、長けておるわ」


 今回は、そのおかげで助かったといえる。元はと言えば、ネウのせいなんだけどさ。


「光よ、我を照らし……導け! セイント・ビーム!」

「むっ!」


 ネウはとっさに、マントでそれを防ぐ!


「上級の光詠唱魔法!? 誰が……!」

「貴様が、佐藤小太郎か。某と勝負しろ!」


 俺たちの進行先に立っていたのは、赤いポニーテールの女騎士だった。誰? なんで、俺のこと、しってんの? ていうか、今、それどころじゃないんだけど!


「いたぞー!」

「げっ……!」


 後ろからも騎士達が大量に!


「どうすんの、コタロー!」

「コタロー様!」

「ええい、面倒じゃ! 全部、殺してしまうか!」


「んなこと言ったって……! あの、そこの人! 貴方は城の兵士ではないんですか!」


「違う。某は、ナユラ・サムラ・イジャパーンだ。某と一対一の決闘を申し込む! 正々堂々と勝負しろ!」


 侍ジャパン? 野球か! って、ちげーよ! ていうか、何いっちゃてんの、この人! ここが、どういう場所かわかってんの!? ああ、もう!


「わかった! わかったから、今は無理! 追われてんの! 後でいくらでもしてあげるから! どいてっ!」

「何? ……よかろう。その約束、必ず守るのだぞ!」

「ありがとう!」


 なんだったんだ……あの人は。

「何だ、貴様! 奴らの仲間か! ひっ捕らえろっ!」

「ふん、某の剣……お主ら風情が、捉えられるものではないわっ!」


 なんか、戦ってるし! 今のうちだ! チャンス! 誰だか知らねえけど、助かった! 今のうちに逃げよう!


「佐藤小太郎! 必ず、某と戦うのだぞ!」

 あーあー、キコエナイキコエナーイ。逃げろー。

「ぜぇ……ぜぇ。はぁ……どうして、こんな目に。ネウ、お前が余計なこと言うから!」


「かっかっか! 退屈な日常に潤滑油をくれてやっただけではないか。それより、はようキスせい。ディープなやつで頼むぞ」

「くそ……ああ、もうっ!」


 俺は一気にネウの体を掴んで強引に引き寄せた。


「ちょっ……」

 これには、ネウも驚いたようで。


「んっ……んんっ、あっ……ぷは……れろれろぉ……ぷはぁ……」


「……」

 ネウは、放心状態だった。


「はっ……」


 慌てたように、手を口に当てるネウ。ぽかーんとしている様子がなんとも、可愛らしい。リリィとサーシャも両手を手で覆って、驚いていた。


 俺だって、やる時はやるんですよ。うん、完全にハイになってて勢いでそのまましちゃっただけなんですけどね。


「……もう一回」

「嫌です」


「ちっ……ケチじゃのう。いきなりしよって……突然すぎて、全然感触を楽しめなかったではないか!」


「知るかよ、そんなこと……もういいだろ。それより、これからのことを考えようぜ。どうすんだよ、もうこの町じゃ生きてけねーぞ。完全にお尋ね者じゃねーか」


「そうですねえ……遠くの国でひっそりと生きていくしか、ないんじゃないでしょうか」

「やっぱ、そうなるかあ……はー、まさか異世界に来て、犯罪者になるなんてなあ」

「それか、獣王ベイザスとやらをやっつければ、許してくれるんじゃないでしょうか」


「え?」


 なんて言った? まさか、あのサーシャからそんな発言が出てこようとは。俺を殺す気ですか、君らは戦わないのに。


「ちょっと、サーシャ。正気なの? 魔王軍の幹部よ! 魔王軍の幹部っていったら、全員がS級!『破滅級』なのよ! 冗談言わないで!」


「お、魔王軍の幹部とやる気か? 儂は構わんぞ。魔王の小僧には、煮え湯を飲まされておるからのー」


 その発言は色々と怖いんですが、ネウさん。過去に魔王となんかあったのか? ていうか、魔王クラスと渡り合えるほどの存在だったの? ネウって……いや、ヴァンパイアの王っていうから、凄いのは知ってたけど……。


 なんでもう魔王の幹部がどうとかいう話になってんの? 普通は、ゴブリンとかそういうのから倒していくのがセオリーでしょ! セロリーでしょ! 何いってんの! 俺!


 もう、頭こんがらがってきた! 逃げるか、魔王軍の幹部倒して許して貰うかって……うん、決まってんだろ。逃げる一択だ!


「よし、逃げよう。どこまでも! 地の果てまでも!」

「はやっ! 即決ね! まあ、私もさすがにそっちに賛成かしら」

「ていうか、リリィ達まで巻き込んじゃって、悪かったな。もう、村に帰れそうもないけど……」


「別にいいわ。というか、半分以上は私たちのせいでもあるし。私があんたにヴァンパイアの討伐を頼まなければ、あんたはこんな目に遭うこともなかったろうし」


 あ、そこは自覚してたんだ。よかったよかった。逆ギレされたら、どうしようかと思った。

「ねえ、今、なんか失礼なこと、考えなかった?」


 目が笑ってないです、リリィさん。怖いです。やめて下さい。その拳をしまって下さい。


「私はコタロー様に従いますので」

 別にサーシャも意見言ったっていいんだぞって、もう言ったか。うん、却下したけど。


 そういえば、さっきの女騎士は一体、なんだったんだろう……俺のこと知ってたみたいだけど。どうして、俺を付け狙うのか。賞金稼ぎで獲物を取られた逆恨みとか? うーん、わからん。どうでもいいか。もう、二度と会うこともないだろうし。


「よし、取り敢えずは町の外に出よう。早くしないと、検問が掛けられるだろうし」

 あーあ、結局三億はパァかあ……とほほ。


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