レベル100オーバー!?
なんだかんだで、ヴァンパイアの討伐に成功……したと言えるのかどうかはわからないが、危機は去ったので、成功したということにしておこう。
それはさておき、これからどうしようか? 当初の予定だと、この町……サンローズで生計を建てようかと思っていたのだけど。
「ていうかさ、ネウ。君って、国家レベルのお尋ね者だよね? 騎士団も壊滅させてるわけだし……」
「ん? 知らんのう。人間共の事情なんぞ、儂が知るわけなかろうに。安心するがいい。誰が来ようが返り討ちにしてやるのでな」
「いやいや、返り討ちにしたらダメだから! こんな風に悠長に町を歩いていていいのかなぁって……」
「それなら、心配いらないと思うわ。ネウの姿を見た人はたぶんほとんどいないだろうから」
「そうなのか? リリィ」
「そうじゃな。来た者は儂が殺すか、吸血して眷属にしてしまうからの。ちなみに、我が眷属はあの祠に置いてきたままじゃ」
「だめじゃん! 眷属おきっぱしたら、だめじゃん!」
「心配いらん。儂の命令なしでは動かんからの。儂が存在する限りは永久的に存在し続けるが、儂から魔力供給をしなければ、動くことはままならん。放っておいても問題なかろう」
「そうか、それならいいけど……」
「言っとくけど、私はあんたのことを許したわけじゃないからね」
そういって、ネウを睨みつけるリリィ。当然といえば、当然か。村の敵だし。ネウに殺されたり、眷属にされた人間は沢山いるだろう。それを割り切れとは、さすがに言えないし。酷というものだ。時間が解決してくれるのを待つしかない。
「好きに思うがよいわ。儂には関係のないことよ。儂と主の邪魔をするのであれば、容赦はせんがな」
「あんたなんかに、コタローは好きにさせないわよ」
「かっかっか! ほざきよるわ! 何も出来ず、ただ見ていただけの小娘がのぉ!」
「ネウッ!」
「二人共、やめないか! 町中だぞ!」
「「……」」
だめだこりゃ。先が思いやられる……。頭を抱える俺に、そっと寄り添ってくれたのは、サーシャだった。
「大丈夫ですよ、コタロー様。きっと、なんとかなりますから」
「その、サーシャは平気なのか? ネウのこと」
「平気、とまでは行きませんが……リリィよりは、自分を保ったままでいられると思っています。許すことは出来ませんが、時間が解決してくれると思っています」
「俺も同じことを考えていたよ。そうなってくれれば、助かるんだけど」
「ふふ、コタロー様と同じ考えだなんて……私たち、赤い糸で結ばれているのかもしれませんね」
「えっ……あ、いや。その……」
「ちょっと! そこ! 何いちゃついてんのよ!」
「そうじゃそうじゃ! 儂の主に手を出しよって!」
「誰があんたのよ!」
「なんじゃ!」
はぁ……いつまで続くんだろう。この言い合い。
彼女達の口論も一息ついたようで、静かになっていた。
「ところで、思ったんだけど。そんな災害級とかのモンスターがやってきて、俺の使っているようなレジェンド・レアの装備を店や国側は提供して討伐に向かわせればよかったんじゃないの? 俺でもなんとか立ち向かえるぐらいなんだから、プロが使ったら楽勝だろうに」
「ん? ああ、それは……」
「それは、出来ないんです。コタロー様」
「え? 何故?」
「ガチャは平等であるべき存在でなければならない。一部の特権で利用することを許されていないんです。そもそも、ガチャを創造したのは、この世界の創造神様です。私たちはガチャの中身も内部もまったくわからないのです」
「そうだったのか……創造神って……何者なの?」
「創造神は創造神でしょうが……この世界を造った神様よ。他にも神を名乗る存在はいるけど、本当の神と呼べる存在は創造神様だけよ」
「へえ……」
創造神が造ったガチャ、か。だから、こういう非常事態でもガチャ装備を支給したりすることは出来ないってことか。てことは、騎士が使ってたこのSSR防具も、店屋で頑張ってガチャって出したってことなんだよな……なんかそれも……どうかと思うけど。
ガチャの値段がどれぐらいか覚えてないけど、店によって違うかもしれないけど、そんな宝くじ当てるような確率で騎士団全員分の装備を揃えるのなんて、不可能だろうしなぁ……。思った以上に大変な世界なんだな……。
「あのさ、自分たちで装備を作ったりすることはできないの?」
「出来ますが……せいぜい、R程度の性能ですよ?」
「なるほど……制限がかけられるわけか。どうにもならないな、そりゃ」
「そういうことね。戦士を育成するより装備を揃える方が遥かに大変らしいわ。逆に言えば、装備一つで一騎当千にもなるらしいけど」
たしかに、武器一つであの性能だ。全身レジェンド・レアで揃えたらどうなるのか。そのレジェンドシリーズも種類がいっぱいあるだろうし。確率も違うみたいだし……凄い世界だなぁ、ほんと。
この世界の特徴については、なんとなく理解した。運が全ての世界……たしかにそうだ。
「ところで、コタロー。あんた、ステータスの更新、した?」
「え、更新?」
「スキルとか、ステータスのステ振りよ。ネウとの戦闘でレベル上がってるんじゃないの?」
「あ、ああ。そういうことか……たしかに。ちょっと確認してみるわ。どれどれ……ぶっ!」
「きたなっ! なにしてんのよ!」
「い、いや……こ、これっ」
「はあ?」
俺は驚いていた。当然だ。驚くに決っている! なんだこれはぁああああああ!
「れ、れ……レベルが、100を超えている……」
「「え、えぇえええええええええっ!?」」