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決戦!ネウ・ルクス・ビルロード!

 薄暗い、闇の中。明かりがちらほらとまばらに点いたり、消えたりしている……。なんとも、不気味な場所だった。祠って言ってたな……元々は神を祀る場所だったのだろう。それを、ヴァンパイアが自分好みに改築したってところか。悪趣味なことで。


 奥に進むと……コウモリの数が次第に増えていった。嫌な感じがする……。


 汗が……止まらない。ひやっとする。緊張しているのだろう。当然だ。今から、生死のかかった戦いが始まろうとしているんだ。それも、戦うのは俺一人とか。


 剣を握り締める。自然と力が入ってしまう。落ち着け。


 暗闇から突如として、明るい場所へと出た。おそらく、ヴァンパイアがいる。そう、何故か確信めいたものを感じていた。


 そして、それは的中した。

 声が、聞こえてきたのだ。


「ふはーっはっっは! よくぞ、参った! 恐れずに我が前に立ちはだかるは何者ぞ? 儂はヴァンパイアの王! ネウ・ルクス・ビルロードである!」


 ……。

「え~っと……」


 目の前には、こじんまりとした体格をした幼女がいた。しかし、これが話に聞いていたヴァンパイアの姿だとは……誰が想像しただろうか。どう見ても、ただの幼女だ。たしかに小さな黒い翼のような羽のようなモノが背中から生えていたりするけど、他は普通の人間の幼女にしか見えないって、何回幼女連呼してんの、俺はぁ!


 ピンクの髪の幼女とか、ヤバイだろ! 犯罪でしょ! 違うよ! 何いってんの! もう、わけがわからないよ!


「なんじゃ、コヤツは……急に頭を抱えよって……儂の存在に恐怖でもしよったか?」

「いや、君。誰? 本当にヴァンパイアなの? 君みたいな可愛らしい幼女が?」

「誰が幼女じゃ! 儂はこれでも、二千五百歳じゃぞ!」


「2500!? いや、もう桁が違いすぎてよーわからん。これが、所謂……ロリババアというやつなのか……恐ろしい」


「なんじゃ、この失礼な奴は! もう許さんぞー!」

「うわっ!」


 そういって、急に闇の波動みたいなものを俺に向かって放って来た! 俺はなんとか、それを回避する!


「何やってるの! 相手は凶悪なヴァンパイアよ! 油断しないで!」

「見た目に惑わされては行けません、コタロー様!」


 そうだった。相手は『災害級』のモンスター! あんな幼女にしか見えない姿だけど!

 俺は剣を構える。


「ほう。わかるぞ。その剣……かなりの業物じゃな。嫌なオーラを出しておるわ。うかつに近づかん方がよさそうじゃな」


 さすが年の功。この剣の凄さを一発で見抜かれてしまった。どうする? 闇雲に突っ込むのも、さすがに危険だろう。


 だからといって、距離を取られてはこっちが不利だ。都合よく、剣からビームとか波動みたいなもんでねーかなぁ。


 そう思っていると、剣が光り始めた。え、まさか……。


「む?」

「これは……やれってことなのか?」


 剣は尚も光り輝き続ける。やって、みるか!


「うぉおおおおおおおおお!」


 俺は剣を思いっきり、振り回した。


「何っ!?」

 すると、剣から光の波動が発生し、ヴァンパイアの王、ネウに向かって突き進む!


「小癪な!」

 ネウは、マントで体を覆い隠して、それを思いっきり広げた。

 すると、光の波動が弾き返されてしまった。


「強い……」

 のか? わからん……少なくとも、一撃で倒したレベル45のあいつらよりは確実に上だろう。俺の攻撃を受けて、ノーダメージなんだから。


 俺のレベルは1。だが、俺には相手のレベルをそのまま自分にプラスすることが出来る剣の能力がある。故に、レベル差はないといえる。となれば、あとは装備のステータス差ぐらいだろうか。


 レベル差がないとはいえ、ステータスの伸びとかまでが全て同じなわけないだろうし、その辺はなんとも言えないものがあるが。


 ついでにいえば、経験の差は歴然だろう。相手は2500歳。ヴァンパイアの王として君臨し続けてきたということは、それだけの戦闘行動を行っているに違いない。


 こっちは、異世界にやってきたばかりで戦闘経験はゼロ。

 レベル差がないなら、後は経験がモノをいうだろう。となれば、こちらに勝ち目はない……かもしれない。だからといって、諦めるわけにもいかないが。


 取り敢えず、遠距離攻撃出来るようになっただけでも、大きい。これで牽制しつつ、相手との距離を詰めることができれば……まあ、俺だって剣道ぐらいはしてたしな。


 ある程度、剣の扱いぐらいは出来ないわけじゃない。真剣持ったことなんて、ほとんどねーけどな。それも、実戦なんてない。とはいえ、要領は同じだろう。


「くく、どうした? 来ないのなら、儂から行くぞ!」

「!」


 今度は飛びかかって来た!? しまった、相手が距離を取るって発言をしていたからか、向かってくるとは思っていなかった!


 言葉の使い方が上手い……完全に、油断していた!

 俺は相手の攻撃を剣でガードする。早い……! この間の連中とは、訳が違う!

 しかし、早いということは……俺のスピードも同じぐらい出せるはずだ!


「ほうっ! 儂のスピードについてくるとは……中々。ここ、数百年ほど見ておらんかったのう……お主のような奴はっ!」


「くっ!」

「どうした、どうした? 防戦一方では、敵わんぞ~」


 隙きが……ない。剣道をしているとわかることだが、有段者……特に上の段にもなると、その実力差は歴然だ。基本的に、自分より上の段位を持っている人にはまず勝てない。


 レベルは同じはずなのに、これほどまでに……差があるとは。


「──考え事はいかんな」

「しまっ──」


 瞬間、首に激痛が走った。

「ぐっ……ああああああああっ!」


「コタロー!?」

「コタロー様!」


 首を……噛まれたんだ。後ろから、回り込まれて……ぐあっ。


「くくっ……中々、美味じゃったぞ。お主の血の味は……。儂は、おなごしか好かんが。悪くない。お主のような戦士の血じゃ。当然と言えような」


「ぐ、あああっ……」


 俺は手で首を押さえる。止血をしないと……まずい、か?

 すると、剣が光出す……え?


 みるみるうちに、首の傷が癒えて行く……これって。


「なんと。ヒーリングまで使えるのか、その剣は。便利じゃのう……儂も欲しくなってしまったぞ」

「はあ……はっ……!」


「くっく……しかし、傷は癒えても、儂の吸血行動はそれだけでは済まないことを知っておるじゃろう? 儂に血を吸われた者はどうなるか……」


「眷属に……なる、のか」


「その通りじゃ! かーっかっか! お主は儂のモノとなる! その剣も儂のモノじゃあ! はーっはっっはぁ!」


「……」

「……」

「……」


 あれ? 別に、なんともないような……。


「ん? おかしいのう……どうして、『支配』が通用せんのじゃ?」


 相手もこれには驚いているようだ。何故なのか……そうか、状態異常無効か!

 まさか、ヴァンパイアの吸血すら無効化するとは……さすが、レジェンドレアだぜ!


「また、その剣の力か……厄介じゃのう。その剣をお主から引き剥がすしかなかろうな……いや、しかし主を決めた剣は、離れていても効果を発揮するやもしれぬ……参ったのう。持久戦になりそうじゃぞ」


 瞬間。右上のステータスバーにあるSゲージがMAXへと溜まっていた。

 チャンス到来だ。相手は驚いて、動作が遅れているはず。今しかない!


「スーパーブレイク発動!」

「何ッ!?」


「アルティメットォオオオオオオオオオ、ブレイクゥウウウウウウウウウウウウ!」


 一瞬の隙をついた俺は、最大の必殺スキルで相手を攻撃した。

 それは、ネウに直撃したようだ。ネウはその場に倒れ込んだ。


「やった……か?」

「コタロー!」

「コタロー様! やりましたね!」


 その姿をみて、駆け寄ってくる二人。まだわからない……。

 俺は、ゆっくりとネウの近くへ足を運ぶ。


「……」


 気絶……しているのか?


 よく見ると、服が完全にボロボロになり、ほぼ素っ裸に近い状態になっていた。これはいかん。幼女……もとい、少女の全裸なんて完全に、アウトだ。アウト!


「サーシャ、悪いけどその上着を貸してくれないか」

「え? あ、はい……」


 俺は、サーシャに借りた上着を、ネウの体の上に被せた。


「ちょっと、相手はヴァンパイアよ! 私たちがどんな目にあったと思っているの!」

「そうかもしれないけどさ……なんかこう、見てられないだろ」

「あのねえ……!」


 リリィが怒るのも、無理はないだろう。村の敵に優しくしてやる必要なんてない。そう言いたいのはわかるが……こんな可愛らしい女の子とは、思いもしなかったし。


「……ふ」

「え?」

「こいつ……まだ、意識がっ!」


 慌てて、警戒態勢を取る俺たち。すると、ネウは。


「くくっ……くーはーっはははぁ! よいよい! 面白いっ! あっぱれじゃっ! この儂にトドメを刺すつもりもなく、はだけた肌を隠す為に上着をよこすとは! 傑作よのう! くく……くはっ。このまま嬲り殺してやろうと思うたが……気が変わったわ」


「……まだ、やるつもりなのか?」


「先程の発言から見て、村の敵を取る為にここに来たのであろう? ならば、結構! 儂を殺すがよい。お主のような奴に殺されるのも、また一興じゃ」


「……えっと」

「やって。コタロー」

「でも……」


「放っておいたらまた、被害が出るわ! 今、倒すしかないのよ!」

「くく、小娘の言うとおりじゃぞ。儂はまた、おなごを取りに村に向かう」

「ほらっ! コタロー!」


 殺すしか……ない、のか? けど……こんな見た目の。幼い少女にしかみえない子を殺せとか言われても……出来るわけ、ないだろ。せめて、凶悪なバケモノのような見た目をしていれば、いざしらず。こんな子を……。


「こんな、可愛い子を殺せるわけないだろ!」


「「!?」」


「くはっ……ぷ、ぷはははははっ! 可愛いと申すか! この儂を! 世界中の人間共に恐れられた、この儂を! 変わっておる! 変わっておるのう! お主はっ! ハハハハハッ!」


「……そうかもしれない。でも、やっぱ無理だわ。てわけでさー、悪いんだけど。人間襲うの、やめてくんない?」


「くひっ……ふふふ、ハハッ。お主、儂を笑い殺すつもりか! 今度は人間を襲うなと! ハハハッ!」


 ま、たしかに。人間にメシ食うなって言ってるようなもんだしな……。ヴァンパイア相手に、何言っちゃってんだか、俺は……。まあ、でもあれが本心だ。


 さすがに、俺はあんな見た目の女の子を串刺しにして殺すなんて、できねーし。どうしたもんか……このまま、放置するわけにもいかねえしなあ。


 あ、そうだ。


「じゃあさ、俺の仲間になれ」

「は?」


「いやだから、人間襲うのやめる代わりに、俺が血を提供するから。俺の傍にいろってこと」

「……とことん、変わっておるのう。お主。ヴァンパイアに求婚する人間がおろうとは、思わなんだぞ」

「え?」


「あ、いや! そういうわけじゃなく! だから……」

「くくっ……面白いっ! よかろう! おなごの血が吸えんのは、不満じゃが……それを勝るぐらいに、お主と行動するのが楽しみじゃ。愉快、愉快であるぞ! 少年! 名はなんと申す!」


「えっと、コタローです」

「コタローか。よい名じゃな。儂のことは、ネウで構わんぞ。この儂がお主のモノとなってやろうというのだ。ヴァンパイアの王である、儂が!」


「え、えええええっ!? いや、モノとか。そういうのは……」

「うるさい! もう、決めたことじゃ。今後は、儂のことを好きにするがよいぞ、我が主よ。くくくっ……!」


 ど、どうなってんだぁあああああああ! これはぁあああああああ!

 そうして、村に平和が戻った……。



 村へと帰って来た俺たちは。

「色々と世話になったわね。その、ありがと……礼を言うわ。はい、これ。報酬の5千ジェム」

「サンキュ。俺の方も、ギルドのこととか、世話になったし。キにするなよ」

「ほんと……あんたって変わってるわね」


「それで……コタロー様。私たちをどうなさるおつもりですか?」

「え?」


「……ほら。言ったでしょ。私たちのことを……好きにしていいって」


 え、あれって……マジだったんですかぁああああああ!?


「い、いいの?」

「いいわよ……あんたになら」


 そういって、目をつぶるリリィ。くぅ~、なんて可愛いんだ!

 じゃ、じゃあ……失礼して……って、そうじゃないだろ! 何をやってるんだ、俺は!


「あのさ、よかったらなんだけど。リリィ達も俺らと冒険しないか?」


「「え?」」


「せっかくの出会いを、これっきりにしたくないっていうか、ね。ダメ……か?」

「くすっ……」


 リリィとサーシャは笑みを浮かべていた。


「バカね。ダメなわけないじゃない!」

「それじゃ……!」

「行くに決まってんでしょ!」


「私もです! これからも、よろしくお願いしますね。コタロー様!」

「ああ! よろしくな!」


「なんじゃ、お主らもついてくるのか。せっかく、主と二人っきりの結婚旅行を楽しめると思ったのにのう」

「結婚してないからっ!」

「そうよっ! 私だってコタローのこと……」


「え?」


「な、なんでもないわよっ!」

「ふふ、楽しくなりそうですね。コタロー様。私もお慕いしてますよ」


 なんか知らないけど、三人に抱きつかれて、てんてこ舞いの俺だったとさ。


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