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ルメーン

 ルメーンにたどり着いた俺たちだったが……町の様子を見て、唖然としていた。

「滅茶苦茶じゃないか……」


 ルメーンの町はあちこち破壊されて、酷い有様だった。中には復旧の終わった建物や、難を逃れた建物などが点在していたが……。


「恐らく、魔王軍の仕業だろう。この港町、ルメーンは補給の要だ。そこを先に潰したのだろうな。イルギス教会へ向かう。ついてこい」


「……」


 リリィ達の村のことを思い出す。獣王ベイザスによって、滅ぼされた村のことを。これが、この世界の現実……戦争。俺たちのいた世界じゃ無縁……いや、そうでもないか。少なくとも俺のいた日本では、無縁の世界だ。


 生物は何故、争うのか。わからない。ただ、本能がそうさせているのかもしれない。

 食物連鎖……食うか、食われるかの世界。世界を支配した人類は、それでも、人類同士で争い合っている。なくらない戦い、争い。なんて、醜いのだろうか。人間は。


 俺は周囲を眺める。あちらこちらで、復興活動をしている人たちがいた。この被害じゃ、町の復旧には相当の時間がかかるだろうな。俺たちに、手伝えることがあるだろうか。


「着いたぞ」


 ナユラの言葉で、視線を移すと……そこには、巨大な教会の姿があった。これが、イルギス教会……凄い大きな建物だ。

 中に入ると、避難所にもなっているのか、沢山の人たちがひしめき合っていた。


「どちら様でしょうか? 避難の方ですか?」

「いや、某はナユラ・サムラ・イジャパーンだ。責任者に会いたい。精霊王様の使者だ」


 そういって、イルギスの紋章を案内人に見せていた。

「こ、これは失礼致しました! 只今、掛け合ってみますので……少々、お待ち下さいませ……!」


 その人は、慌てたように、その場を立ち去った。

 ナユラって、教会じゃ相当偉いんだな。ちょっと、アホっぽいというか。猪突猛進的なところがあるから、そうは見えなかったけど。


 しばらくして。案内人が戻ってきた。

「おまたせ致しました。ご案内します。こちらです……」


 案内人に促されて、俺らは奥へと進む。しかし、広いな……ギルドみたいだ。訓練施設もあるって言ってたし、やってることはほとんど同じなのかもしれない。


「こちらです。それでは、私はこれで失礼致します」


 案内された扉を開ける。すると、そこには一人の老人と、傍らに品の良さそうな若い女性が立っていた。


「これはこれは……お久しぶりで御座います。ナユラ様」

「ああ、久しぶりだな。ラトマス。それに、ミユーナも」


「わたくしなどの名を覚えていて下さりますとは、光栄で御座います。ナユラ様」

「教会の被害はどうなっている?」


「はい。我々が全力を持って、対処しましたので、軽微で御座います。全ての復旧には、今しがた時間もかかりましょうが……特にこれといった問題は御座いません」


「そうか。港は?」

「残念ながら。港は、跡形もなく破壊されてしまいましたので……どれだけ尽力を尽くしても、半年はかかるかと」


「半年……船だけでも、なんとかならんのか」

「こちらに物資を届ける船がありますが……一月後になりますな」

「一月か……仕方がない。それまで、こちらに滞在させて貰うことになる」


「そうですか。歓迎致します。可能な限りのご用意をさせて頂きますので、ゆっくりと、お寛ぎ下さいませ。……ミユーナ」


「はい。長旅でお疲れでしょう。すぐにお食事の準備を致しますので……月の間へ、ご移動の方、お願い致します」


「わかった」


 一ヶ月、か……それまで、この町で暮らすことになるのか。結構、長いな。その間、俺が出来ることはなんだろう。何をするべきだろうか。


「ナユラさん、月の間ってなんですか?」

 そうサーシャが質問していた。当然の疑問だろう。


「月の間というのは、そうだな……特別な来客用の部屋だ」

 VIPルームってことか。何から何まで、優遇されているな。


 案内された部屋は広かった。長いテーブルがあり、そこに次々に食事が運ばれている最中だった。やることが、手早い。ていうか、腹減った。すげえ、美味そうだわ。


 早く食いてえなぁ。


 全員が席に着き、食事を開始した。後ろには、メイドがずらーっと並んでいた。こうしてみると、威圧感が凄い。俺、食事の作法とかまったく知らないんだけど? いいのかな、普通に食べて……。


「さて、これからのことだが」


 そうナユラが口に出す。俺は、食事に夢中だった。いや、俺だけでなく、ネウやリリィもだが。目線を移したのは、サーシャぐらいなものだ。


「……佐藤小太郎。貴様の力を見定める時が来た。後で訓練場まで行くぞ。ついでに、お前をさらなる高みへと昇華させる為、特訓を行う!」


「と、特訓っ!?」


「……」


 リリィとサーシャはお互いに目を合わした。

 ネウはむしゃむしゃと肉を頬張っていた。

 俺は……胃が痛くなった。


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