勇者
ナユラの手続きが終わり、俺たちは解放された。
「改めて、自己紹介しよう。某はナユラ・サムラ・イジャパーンだ」
「俺は、佐藤小太郎です。こっちが、リリィ、サーシャ、ネウ」
「よろしく頼む。さて、さっそくだが。本題に入ろう。貴公の力を知りたい」
「……えっと、どういうことでしょうか」
「その力、見極めさせて貰いたいのだ。精霊王様に会われる前に」
「精霊王……誰なんですか?」
「何? 精霊王・アステラリファ様を知らんのか! 貴様は!」
そんな驚かれても……この世界に来たばかりで、世事に疎いんですよ。知識とか、全然得る機会もなかったし。
「その、アステラ様? って一体、どういう方なんですか」
「マナの木を管理なされておられる偉大なお方だ。我々ミルグ族は、代々精霊王とマナの木をお守りして来た一族。この世界はマナで満ち溢れている。人々はマナの恩恵なしでは、生きていけないのだ」
マナの木……ね。それは、生命維持に欠かせないというのことなのか、魔力とかの恩恵を受けているだけなのか。よくわからないけど。
「魔力の方だ。もちろん、生命に関しても、大きな影響を受けているといえる。直接的な生命維持には関係がなくとも、病気やケガ、寿命に大きく影響しているモノだ」
「なるほど……それで、その凄いマナの木とやらを管理している精霊王さんがどうして、俺なんかに用が?」
「様をつけんか! 様を! ……こほん。おそらく、貴公に勇者としての資質があるかどうか。見極めたいのだろう」
「勇者ぁ? いやいや、俺が勇者なわけないでしょ。何かの間違いですよ。それに、勇者つったら、ライナスだったっけ。さっき獣王ベイザスの手を吹き飛ばした凄い人がいましたけど?」
「あれは、真の勇者ではない。真の勇者というのは、マナに導かれし者、ただ一人。人間共が勝手に命名した名ばかりの勇者とは訳が違うのだ」
よく見ると、耳の形が普通の人間のソレと違う……なんか獣耳みたいな……赤いケモ耳をしている。ミルグ族って言ってたな……人間と、違うのか? ハーフ?
「聞いているのか!」
「は、はい! すみません!」
「まったく……とにかく、そういうことだ。精霊王様にお会いになられる前に、某は貴公の力を確かめておきたいのだ」
「確かめるって言われても……とにかく、一度。ここを離れませんか? まだ、戦場の真っ只中ですし」
「そうだな。では、この森を抜けた先にある港町まで先に進もう。それでいいな?」
「俺は構いませんけど」
「私も」
「私も構いませんわ」
「儂は主についていくだけじゃよ」
なんだか、とんでもないことになっちゃったなぁ……英雄から犯罪者になったと思ったら、今度は勇者ですか……。
正直、俺はモンスターと人間が共存しているっていう町に行ってみたかったんだけどなぁ。仕方ない。今はこの流れに身を任せますか……。




