迫りくる脅威、獣王・ベイザス
俺たちは町の外に出て、森の奥深くにいた。絶賛、逃亡真っ最中だ。イエーイ。何が、いえーいだよ。アホかと。どうしてこんなことになったのだか。
つべこべ言ってもしょうがない。とにかく、逃げよう。取り敢えず、検問が厳しくなる前に町を抜け出せたのは大きかった。これなら、よほどのことがない限り、追いつかれることはないだろう。相手が早馬を使ったとしても、この森の中だ。探すのは困難だろうし。
ネウは年の功だけあって、土地勘も凄い。ネウについていけば、森を抜けるのは簡単そうだ。
その時だった。急に森がざわつき始めたのは。
正確にいうと、動物とか、虫とか。そういうのが、怯えだしたというか、慌てふためいている。なんだ?
「この魔力……奴か」
「え?」
「儂の近くへ来るんじゃ!」
「な、何? なんなの!?」
「いいから、はようせい!」
「わかった! みんな、集まって!」
ネウは何かを唱えている。魔法、だよな。今度は何の魔法を使うつもりなんだ?
「静かにしておれ」
俺たちは黙った。すると……。
「グガァアアアア!」
な、なんだぁ!? あのバカでかい怪物は!
「ど、ドラゴン……!」
「ドラゴンだって!?」
「声が大きいわい! 静かにせいと言ったろうが!」
「あ、すみません……」
幸い、竜の鳴き声のが大きかったようで、気づかれなかったようだ。セフセフ。
しかし、ドラゴンって……すげえ、大きさだ。二十メートル以上は、あるか?
こんな馬鹿でかい竜……この森に生息してるのか?
「こんなドラゴンが森に住んでいるなんて、聞いたことはありません」
違うのか。じゃあ……。
「阿呆。よく見てみぃ、竜の背中に乗っておるじゃろ」
「竜の背中……あっ!」
よく見ると、竜の背中に立っている黄金の鎧を纏った黒い獣みたいなのがいた。なんだ、あいつ?
「獣王ベイザスじゃよ」
「じゅ、獣王って……まさか」
「魔王軍の幹部!? どうして、ここに!?」
リリィが驚く。俺も驚く。ていうか、よく見るとすげえ数なんだけど! ドラゴンの数が……数え切れないぐらい後ろにいるっ! 一番前の馬鹿でかい竜よりは少し小柄だけど……そういう問題じゃない。
「ビルネクスが言っておったじゃろう。ベイザスがこの国に宣戦布告したと」
「そうだった……てことは、戦場になるのか」
「儂の魔法……インビジブルを掛けておる内は、見つけられんじゃろう。魔力感知もこのマントがあれば、無効化出来る」
便利だな……隠れ蓑って奴か。とにかく、助かったー。あんなバケモン達と戦うことになったら、命がいくつあってもたんねーよ。何、あの数! 百どころじゃないぞ! 千? いや……もしかしたら、もっと……。
空がドラゴン達で覆われて、見えないぐらいだ。とんでもねえ。これが、戦争って奴か……。
「……あのさ、悪いけど。先、行っててくれる? 私、村の様子が気になるから!」
「お、おいっ!」
そういって、リリィは走り出してしまった。ちょっと、待てよ!
「捨て置け。先を急ぐぞ」
「でも……」
「コタロー様……」
「どの道、ベイザスの一撃で村なんぞ、跡形もなく吹き飛ぶじゃろうて」
「!」
ネウの一言を聞いた俺は、無意識の内に、走り出していた。
「な、こらっ! 主っ!」
くそっ! どうして、俺は! 何をやってるんだ! わかるかよっ!
けど、走り出してしまったんだ! 止まらねえよ、もうっ!
馬鹿野郎が! リリィの奴、後で死ぬほど文句言ってやるからな!




