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第一章3

 城下街の異常事態に、近くの村に居た臨時兵も駆り出され始める。

「くそ!こんな事今まで一度もなかったのに!」


 そう、今まで鬼人が表立って事を起こす事はなかったのだ。


「ルーク君、これが最後の手伝いだ。街の、故郷の人々を救ってくれ」

「手伝いじゃなくてもやるさ」

「私は立場上ここから動けない。こう見えて、剣術の心得はある。屋敷の者達を守ることにするよ」


「あの!スレイブ様!俺もこの方と共に行かせて下さい!」


 魔法講師のヘンリーだ。この男が名乗りを挙げるのは予想外だった。


「そんな先生!危険です!」

「魔法では腕に覚えがあります。頼みます!」

「・・・・なら、お願いします!」



 馬をジェイコブに借り、ヘンリーと、数人の臨時兵と共に城下街へ向かう。

 ヘンリーには聞きたい事がある。


「なあ、ヘンリー先生。あんた、魔法の講師なんかじゃないだろ」

「え、何の事ですか?」

「とぼけるな。昨日の夜の会話は聞かせてもらったぞ」

「・・・・・・・ああ。そうだ」


 もっと、シラを切るかと思ったが思ったよりも早く認めた。


「屋敷に居た目的はなんだ」

「今日の為だ。・・・詳しい事は後だ。今の俺の最優先事項は、街の鬼人の殲滅だ。お前も、そうだろ?鬼人の子」

「何故それを知ってる」

「詳しい事は後だ。と言ったろ」


 この男への疑問は募るばかりだが、街も近くなり疑問を追及する暇がなくなる。


 街の入り口が見えてくる。

 街の入り口はとても大きく長い。

 門を開けてもしばらく歩かなければならない程だ。


「チッ。厄介だ。門の上まで弓を持った鬼人共が占拠してる」


 選択肢は一つ。全速力で正面突破だ。

 幸い門は開いている。


「ヘンリー先生!矢に当たる覚悟は?」

「あるよ。その呼び方はもうやめろ!」

 門まで一直線の所まで来た。

「よし、突っ切るぞ。ヘンリー」

「・・・ああ」


 矢の雨を避け、なんとか門を超える事に成功した。


「よし。急ごう。被害がこれ以上拡大する前に」



 街は、想像していたよりも酷い状態だった。

 住民は逃げ惑い、断末魔の叫びをあげる者も居る。

「大半の住民は城に避難したらしいが、こりゃ予想以上だ」


 ずっと棒立ちで見ている事は出来なかった。考えるよりも先に体が動く。


 その体はその場に居た誰よりも速く、通った所を鬼人の血で染めていく。

 その姿はさながら修羅のようで。

 その眼は鬼のように紅く、揺らめいていた。

「あれが噂のなんでも屋か。化け物だ、敵の視界に自分の姿を映す前に斬っていく」


 鬼人達は、自分が斬られているという意識が痛みと共に脳に伝達される前に命を落としていく。

 斬っても斬ってもきりがない。


「指揮をする者がいるはずだ・・・何処にいる」


 一人だけ斬る前に尋問をし、仲間の場所を問う。


「はは、はははははは!!!赤いローブを着た男だ、目立つからすぐに分かるさ。はははははははは」


「なんだ?ここにいるぞぉ?!」

「!?」


 飛んできた剣撃をギリギリ避けることに成功した。

 その赤いローブの男は真後ろにいた。

 セイジの森に居た、鬼人だった。

 あの時と同じ、またもや不意だ。


「お前だったのか。お前の所為で苦労したよ」

「我々の計画を邪魔するのか」

「ああ。今度は前みたいにはいかないぞ」

「やってみろ!!」



一方その頃、ヘンリーは。

「なんだあいつ、魔法を唱えずに放ってるぞ!」

手を向けた方向の敵が吹き飛んだり、凍ったり、燃えたり。

敵を近づける事すら許さないその連撃に鬼人でさえ圧倒され、逃げ出す者もいた。


「 ははは!今回集められた鬼人は雑魚しかいないようだな!」



 

ぶつかりあう二本の剣は重い金属音を響かせている。


「馬鹿な!前よりも遥かに速い」

「前のが本気だとでも思ったか。笑わせるな!!」


 次第に常人が目で追える剣はその場になくなった。


「これで終わりだ」


 金属音は止み、赤いローブを着た男のその首は高く宙を舞った。

 辺りを見回すと残りの鬼人達は皆、死んでいるか逃げ帰ったかのどちらかだった。


「終わったか。あんたすげえな、聞いていた通りだ」

「ヘンリー、あんたも只者じゃないだろ。唱えずに魔法を放ってた。そろそろ詳しい事を教えてもらおうか」

「俺は鬼伐団精鋭部隊所属、ヘンリー・シュライクだ」

「鬼伐団。最近設立されたっていう対鬼人団体か、その人間が何故あの屋敷に?」

「俺の任務はこのカロリド城下街に出現する鬼人の殲滅と、もう一つある」

「潜伏している鬼人の偵察だ」

「おい、まさか!」

「そう、ジェイコブ・スレイブ。あの男だ」



 街の鬼人の殲滅が終わり、屋敷に戻っていた。


「今頃ジェイコブは死んでるさ。他の部隊の奴らを70人屋敷に向かわせてる、任務はジェイコブの殺害だ。

「その部隊の奴らがやられる可能性は考えなかったのか」

「あるわけがない。精鋭部隊じゃなくても、対鬼人のエキスパートだ」

「そうか、ならいい」


 屋敷に着いて愕然とした。屋敷は、地獄絵図だった。

 死体は屋敷の中まで続き、辺りは血塗れだった。


「こりゃ酷い・・・・」

「バカな。一人で対鬼人兵士を70人全員やったってのか」

「ジェイコブの部屋に行こう。逃すわけにはいかない」


 広い屋敷の中を全速力で駆け抜ける。

ジェイコブの部屋がある二階に着くとどこからか悲鳴が聞こえた。


「リリーの声だ!お前はリリーを頼む。俺はジェイコブの部屋に行く」

「おい!待て!」


直接会って、真相を知りたかった。その一心でまっすぐ彼の部屋に向かう。


























































































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