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8/10

オークの次はドラゴン.....色々とばしすぎだろっ!な件

 ああ、目が回る。

 

 飼い主のアレックスに鷲掴みにされて投げられた。

 プロ野球選手のそれよりも力強い投球、ならぬ投スライムにより、僕は見事に二人に襲いかかろうとしたオークの後頭部に直撃し、その頭蓋骨が音を立てて粉砕する音を聞いた。気味悪!


 といっても、オークの頭を粉砕したのは二回目。

 恐らく、オークの頭を粉砕したスライムなんて僕ぐらいのものだろう。

 いや、僕だけの力じゃあないけどね?


 あんだけ無茶苦茶な事をされれば、いくら便利なスライムの体だって目ぐらい回す。

 揺れる視界の中、側でへたりこむミチちゃんの無事を確認して、安心する。

 ミチちゃんのその綺麗な柔肌に傷がつかなくて、本当に安心。

 ちょっと、変態っぽいね。


 「た、助かったよ。シリウス君。」


 あ、はじめて名前呼んでもらった。

 地面に尻餅をついてへたりこむミチちゃんは少し涙目で、さっきまでの凛々しさはどこへやら。

 下手したら、オークの攻撃をモロに受けていたのだから、やっぱり怖かったのだろう。

 やっぱり、女の子なんだなあとほっこりしたのも束の間、僕はミチちゃんに抱き抱えられた。


 「うー、失敗したあ!」


 そんでもって、ぎゅーと抱き締められる。

 お、おおおおおっぱいが!じじじじ直に!

 ミチちゃんは戦士なので、革鎧越しのおっぱいになるけれども、僕にはそんなの関係なかった。

 僕は幸せだった。

 女神様、僕は幸福です。


 しかし、この扱われ方はなんか、その、女子高生が自室でクッションを抱き締める的な?

 僕はクッションか、まあ、嬉しいけど。


 「ごめん、ミチ。私がヘマしたから。」


 「ううん、私も目の前のオークに夢中だったから、キルトのせいじゃないよ。」


 ばつの悪そうな表情で近づいてくるキルトちゃん。

 あれ、そういえばもう一体のオークはどうなった?

 ほら、ミチちゃんと戦闘してた奴。


 「ブギッ!」


 「ごちそうさまっ!!」


 そう考えた瞬間、オークの途切れるような悲鳴と、意気揚々とした言葉が。

 声がした方向を向くと、ちょうどアレックスが両手に持った巨大なハンマーでオークがぶちゅっと潰された。

 身長が十分の一位になったオークは明らかに絶命していて、まるで風船が破裂したかのように血飛沫があたりに散らばる。

 

 なんというオーバーキル。なんというスプラッタ。

 僕は恐怖のあまり、ミチちゃんにさらに密着した。


 「ふー、前菜にもならないわね。」


 「私たちがうち漏らした敵を.....ありがとうございます。」


 「気にしない、気にしない。一時的とはいえ、パーティーを組んでいるんだから持ちつ持たれつよ。」


 ハンマーを肩に担いで近づいてくるおネエ。

 不思議な事に返り血は一切浴びていない。


 楽しそうなアレックスの表情とは裏腹に、二人の表情は浮かない。

 ミチちゃんなんて、僕を抱き締めたまま、黙り込んでいる。

 オークにやられそうになったことを気にしているのだろうか。

 けれど、そんな二人の態度はアレックスの次の言葉で一変した。


 「それにしても、あんたたち腕をあげたわね。オークとやりあってる姿、なかなか様になってたわよ。」


 「ほ、本当ですか!?」


 「やった。」


 アレックスの言葉に先程までの浮かない雰囲気は吹き飛び、喜びあう二人。

 うん、やっぱり美少女には笑顔だよね。

 やっぱり、一流の冒険者であるアレックスに褒められるのは嬉しいんだろう。


 「でも、MVPはシーちゃんね。だって、四体の内、二体を倒したもの。」


 そんなアレックスの言葉に、二人は納得のいかないというような不満げな表情を僕に向けた。

 僕はゾクッと快感に近い何かが体に駆け巡るのを感じた。


◎◎◎


 そんなこんなで探索再開。

 

 ミチちゃんの腕に抱かれていた僕は、飼い主によって引き剥がされ、いつのもの定位置である肩にのせられていた。

 戦闘をアレックスがいき、後ろに二人が着いてくる。


 探索を再開して一時間ほど。

 魔物とは先程出会ったオーク以外には出会わず、アレックスは森の中を黙々と進んでいく。

 一体、どこまで行くのだろうか。


 「ねえ、アレックスさん。ここ、結構奥ですよ。そろそろ引き返さないと、日がくれるまでに帰れませんよ。」


 僕と同様の不安を抱いたのか、ミチちゃんがそんな発言。

 確かに、もう昼過ぎだから、ミチちゃんの言うことはごもっともだ。


 「うーん、もうそろそろなんだけどねえ。あ、見つけた。」


 何が?


 「何がですか。」 


 何かを見つけららしいアレックスが静かにというジェスチャーを後ろの二人に向けて、人差し指である方向を差した。

 そこには洞窟のような穴があって、その穴から何か巨大な生き物が存在するのが見えた。

 なんなんだ、あれ。


 「ど・ら・ご・ん。うふ。」

 

 うふじゃねえ。


 


 


 

 


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