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僕の飼い主が鬼畜すぎて動物保護団体に訴えたい件

 ヤバイヤバイヤバイ!!


 【魅了】のスキルを使ったら、女の子だけじゃなくて。見た目もあたま頭の中もヤバそうな大男が寄ってきた。

 しかも、完全に僕の事をロックオンしている。


 「あなた達、後からで悪いけどこの子私が買っていい?」


 良くない良くない良くないから!

 買うな。お願い。僕は女の子のペットになりたいんだ。

 オネエに買われてたまるかあ!


 しかし僕の願いも届かず、女の子達はしぶしぶが顔でオネエの要求を承諾した。


 「しょうがないですね。じゃあ、アレックスさん今度クエスト手伝って下さいね。」


 「それくらい御安い御用よ。じゃあ、お爺さん!このスライム買うからお会計い願いしまーす。」


 ああああああああああ。


 女神様!

 この仕打ちはないでしょう。

 なんでよりによってオネエなんだ。


 「おめえよかったな。この街のトップ冒険者、『圧殺』のアレックスに買われるたあ相当運がいいぞ。」


 最悪だよ。

 お爺さん、僕はこのオネエがトップ冒険者なんてどうでもいいんだ。 

 僕は女の子に買われたいんだよ。


 「じゃ、1キルね。」


 「毎度。」


 オネエーーアレックスがぴんと1キルの銅貨を親指で弾き、お爺さんがキャッチする。

 お爺さんは僕の代金を受けとると、懐から檻の鍵を取り出して檻の中から僕を解放した。


 「はいどうぞ。」

 

 「どうも。」


 お爺さんの手で取り出された僕はそのままアレックスに手渡される。


 「よろしくーうりうり。」


 「ぴぎー!(髭がじょりじょりする!)」


 アレックスに頬をすりすりされる。

 すごく気持ち悪いし、髭が痛い。


 「達者でな。」


 ああ、お爺さんが手を振って僕に別れを告げる。

 さようなら、お爺さん。

 

 こうして僕はオネエにお持ち帰りされた。



◎◎◎



 次の朝、僕はアレックスと共に街の外壁に沿って走らされていた。

 

 僕の場合は走るというより跳ねるだ。

 究極の全身運動に僕の体力はガリガリ削られていく。

 僕の方が足が遅いのでアレックスは僕に合わせて走ってくれている。


 「ハイハイシーちゃん!このペースじゃ昼までに終わらないわよ。街の外壁二十周!」


 「ぴぎぴぎ(ふざけんなこのオネエ)」


 日が昇る前の早朝から始めて、約三時間。

 アレックスに課された僕の朝のジョギングはまだ半分も終わっていない。

 僕、なんでこんな事してるんだろう。


 「イッチニーイッチニー。ファイトよシーちゃん!」


 シーちゃんというのは僕のニックネームだ。

 当然の事ながらアレックスは僕の飼い主なので名前を付けてくれた。


 正式名称は『シリウス・β・スラニウム十二世』だ。


 一体どういうネーミングセンスをしているんだろうか。

 どう考えてもふざけまくっている名前だが、この名前はしっかりとステータスに反映されてしまった。

 酷い話だ。


 「まだ半分だけど、今日はここで引き揚げましょう。」


 「ぴぎー(疲れたー)」


 さらに一時間程。

 二十周の内の半分、十周が終わってアレックスは止めてくれた。

 このオネエなら本当に二十周させかねないと思っていたが、そこら辺の配慮はあったようだ。


 限界を迎えた僕は地面にぐにゃーとなって、形を崩す。

 肺とかないから息切れとかないけど・・・きつい。

 全身に重りをつけられたようなそんな感覚だ。


 「お昼までまだいくらかあるけど、一度街に戻ってお昼ご飯にしましょうか。」


 「ぴぎっ(やった)」


 僕は疲れているので、アレックスの肩に乗せてもらって街に帰る。

 アレックスが向かったのは、街にある建物の中でも一際大きい建物、ギルド会館だ。

 ギルド会館の様相は僕が売られている時、檻の中からでも見えていたのでその存在は僕でも知っていた。


 アレックスの高い身長よりも高いギルド会館の入り口を潜って、外観通りとても広い建物内に入る。

 中に入ると、がやがやとした喧騒が聞こえてきた。


 「ギルド会館の中では、食事が出来るようになってるのよ。モンスター用の食事も提供してるから、便利よね。あら、スライムってなんでも食べていいんだっけ?」


 「ぴぎっ(そっすね)」


 僕はギルド会館は冒険者が使う建物ということは知っていたが、食事が出来るとは知らなかった。

 ギルド会館の一帯を占めている食事処の一席にアレックスは腰をかける。

 僕は肩から飛び降りて、机の上に着地した。


 「あー、アレックスさんですにゃ。スライムなんて連れてるにゃ。なんでスライムなんて激弱なモンスター連れてるにゃ?」


 「なによスライム可愛いじゃないの。それにあんたそのとってつけたような語尾止めなさいよ。バカっぽいから。」


 席に座ると、すぐに制服を身につけた猫耳の女の子がやって来た。

 どうやら、店員のようだ。

 スカートから出した尻尾をふりふりとさせ、手には注文を書き付ける為のメモとペンを手にしている。


 「にゃんですと!これはキャラ付けにゃ。可愛いですにゃ?」


 「にゃにゃにゃにゃうるさいのよ。猫でもあるまいし。」


 「猫の獣人にゃ。正真正銘の猫にゃ!」


 獣人はこの世界の種族の一つだ。

 普通に街中でもよく姿を目にする。

 

 「まあ、いいにゃ。ご注文はどうするにゃ?」


 「私はいつもの。シーちゃんにはモンスター用のランチデラックスセットで」


 「かっしこまりましたにゃー」


 猫の獣人の店員さんが尻尾をふりふりして走り去っていく。

 可愛かったなあ。あんな娘に買われたかった。


 「じゃ、食事が終わってから私と戦闘訓練、夜は筋トレするからしっかり食べて体力をつけるのよー。」


 「ぴぎー(まじか)」


 この飼い主、少しハードすぎやしまいだろうか?


 

 

 

 

 


 


 

 

 



 


 

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