スライムに転生したら店頭で冗談みたいな金額で売られてた件
「はい。では、【魅了】でよろしいですね。」
「それでいいです。」
僕は即死ボーナスで選べる二つのスキル、【暴食】と【魅了】の内、【魅了】を選ぶ事にした。
理由は簡単だ。
僕は戦いたくないし、【魅了】を使って可愛い女の子にペットとして飼われようと思ったからだ。
ぐふふふふふふふ、一緒にお風呂とか、ぬるぬるぬるスライムプレイとかしてやる。
「では、スキルを付与しますのでじっとしてて下さい。」
女神様が両手を宙に向けると、上空から光の粒のようなものが降ってきて僕の体に降りかかった。
これで、スキルが付与されたのかな。
「はい。もうスキルは付与されましたよ。転生したら、脳内でステータスを確認できるので、確認しておいて下さい。」
「わかりました。」
あ、ステータスとかあるんですね。
まあ、そっちの方が分かりやすくていいか。
どんな世界なんだろう。楽しみだな。
ケモミミとかエルフとかいるかなあ。
「では、もう転生してよろしいでしょうか。」
「構いません。」
いや、だってもうやることないしね。
女神様の美貌を眺めるなら、眺めててもいいんだけど。
「では、転生させますね。転生する場所は原則ランダムなんですけど、今回だけは特別にあなたの取得した【魅了】にスキルが役立つ場所に転生させますね。」
「あ、ありがとうございます!」
女神様、まじ女神。
僕もう、リリアス教に入教しますわ。
毎日、祈りを捧げますわ。
「ふふ、ありがとうございます。では、あなたの行方に幸多からんことを、願っています。」
「では、またいつか。女神様。」
「またいつか。あなたの魂が新たな行方を求めるその日まで。」
僕は女神様の笑顔に見届けられて、意識を失った。
◎◎◎
直後、意識を取り戻した。
「ぴ、ぴぎっ?(もう、転生したのかな?)」
突如、暗転した視界が開ける。
さっきまで目の前にいたはずの女神様の姿はなく、建物のような壁がいつの間にか目の前に出現していた。
「ぴぎっ(って早速文明圏かよっ)」
よく周りを見てみると、建物だけじゃなく、人も通っていた。
スライムはモンスターのはずなのに、誰も気にせず僕の目の前
を通りすぎていく。
女神様は僕の【魅了】のスキルが役立つ場所に転生させると言っていたが多分その結果が今の状況なんだろう。
確かに、可愛い女の子のペットになりたい僕からすれば、人が多い場所の方が好都合だ。
流石女神様。
だけど、どうしてスライムなのに襲われないんだろう?
まさか、弱すぎて街中にいても無視されるとか?
「ぴぎー(あれ、ちょっと待てよ)」
よく見たら、目の前に等間隔で鉄の棒が縦に並んでいる。
いや、目の前だけじゃない、その鉄の棒は僕の周りをぐるっと一周して・・・ってこれ檻じゃないか!
なんと僕は檻の中に閉じ込められている。
誰も襲いかかってこない筈だ。
だって、僕は檻に閉じ込められて手も足も出ないんだから。
いや、手も足もないけどね、スライムだから。
でもどうして檻の中に?
多分女神様がやってくれたんだろうけど、これは一体どういう状況なのだろうか。
「ぴ(あ、値札)」
しかし、答えはすぐに見つけられた。
僕を閉じ込めている檻の上部に、細長い紙がくくりつけられていた。
見たこともない字だけど、転生した特典なのか何故か読む事が出来た。
その紙にはこんな事が書いてある。
『スライム 2キル』
・・・売られてた。
僕、売られてる。
しかも、2キルて。この世界の通貨事情は把握していないが絶対安いに決まってる。
でもまあ、スライムだしなあ。安いよなあ。
安いというのに、行き交う人達は僕の方を見向きもしない。
ちらりとも見ない。まるで僕の存在なんてはじめから無いような扱いだ。
ちょっちひどくないと思うが、そういえば僕には【魅了】というスキルがあった。
【魅了】さえ使えば、皆僕にめろめろになるに違いない。
そういえば、女神様がステータスを確認してくださ言ってたような。
脳内に情報が浮かぶんだっけ?
ステータス!
おおっ、情報が浮かんできた。
『名前 未定
種族 スライム
Lv1
保持スキル
【吸収】【分裂】【魅了】』
うわー、シンプル。
各スキルとかの情報は確認できるのかな?
おお、出来た。
『【吸収】
対象を呑み込み、消化する。
消化出来るものは自身の能力値に依存する。
消化したものから経験値を一部取得する。』
これは【暴食】のスキルの下位版だったかな。
説明からすると、攻撃用のスキルみたいだ。
さて、次は。
『【分裂】
分裂する。
分裂した分体のLvは本体が分けた経験値による。』
あまり使いたくないスキルだなあ。
自分を分裂させるってどんな感じだろうか。
どのみち、こんな狭い檻の中で使ったら、僕がところてんになってしまうよ。
後は期待のスキル、【魅了】だ。
『【魅了】
発動した対象の好感度が上昇する。
対象が敵対者の場合、敵対心が低下する。
効果は自身の能力値と対象の能力値によって変化する。』
ふむう。
先頭にも普通の時でも使える便利スキルか。
効果は女神様が言った事とそんなに変わらない。
不安材料は、効果が自分の能力によって変化する点か。
なにせLv1だし、発動したところで可愛い女の子に効くかどうか。
まあ、そんなに急ぐ必要もない。
まずは販売スライムとして、4日か5日程檻の中で、異世界の情報収集をしよう。




