不審者にはご用心
無言でドアの隙間から覗き込む私とすやすや眠っている銀髪。
ええ、家の中にあげちゃいましたよ・・・
だって、いくら怪しいと言っても私が気絶させちゃったわけだし、そのまま外に寝転がしておくわけにもいかない。警察に引き取ってもらうということも考えたんだけどこの状況を説明するのもやっかいだということで却下。
結局、見たところ目立った外傷もないし病院にも連絡しないで寝かせておこうということで落ち着いた。もちろん、私だって警戒心を落としてきたわけではないので、寝かせてあるのは外から鍵がかかり、はめ殺しの窓がついた物置に使っている部屋だ。もし、こいつが危険人物だったら鍵をかけてこの部屋に閉じ込めておける。
「んっ、うーん」
わずかなうめき声をあげて男が目を覚ました気配がする。いつでも逃げられるように私の準備はOKだ。そして、銀髪が私を見つけてこっちを向いた。
「えーっと、いつきちゃんがここまで運んでくれたの?」
のんびりと問いかけてくる男に無言でうなずく。
「そっか、ありがとう。でも、こんなに怪しい男をほいほい家にあげちゃいけないよ」
「お前がいうなよ!!」
いけない、いけない。思わずツッコんでしまったではないか。冷静になれ私。
「さっきも聞いたんですけどあなた誰なんですか?座敷童子というふざけた答えは受け付けません」
「えーっ、そんなこといわれても本当に座敷童子なんだってば!!」
まだ、いうかコイツ!!本気で頭のおかしいヤツなんじゃないか?
「まあ、座敷童子でも頭のおかしいお兄さんでもどっちでもいいけど、さっさと出ていってよね。じゃないと警察呼ぶから」
110番の番号も押してあるし後は通話ボタンを押すだけで警察につながるようにしてある。ぬかりはない。
「あっ、そのことなんだけどね。僕をこの家においてくれないかな?」
しばらく、相手が何を言っているのか理解できなかった。ようやく理解出来ても内容を理解することを頭が拒否する。
・・・はっ?何言ってんだコイツ。座敷童子ってだけでも意味不明なのに更にトンデモ発言しちゃってるよ・・・
「ダメに決まってるでしょ!!なんで見ず知らずのあなたを置かないといけないんですか!!家に上げるだけでも譲歩してるんです。さっさと出てけ!!」
力の限り叫んでドアを指さす。
信じられない!!常識ないんじゃないの?・・・まあ、あったら自分のこと座敷童子とか言ってないし、こんな事態にもなってない。
「それは、無理だよ。それに見ず知らずじゃないし」
そう言って銀髪はポケットをごそごそやって一枚の封筒を取り出て私に渡した。
「見ず知らずじゃないってどういうこと?それにこの封筒は?」
「この中を見れば全部わかるよ」
恐る恐る封筒を受け取ってみると中には一枚の手紙が入っていた。銀髪に促されて手紙を開いてみると
(お父さんの字?)
手紙は確かに父の筆跡だった。