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宗教勧誘はお断りです

私、峰矢ほうやいつきは先日父親を亡くした。父親は私にとって唯一の肉親で、父親が亡くなった今はいわゆる天涯孤独ってやつだ。

救いなのは家のローンも払い終わっていて、いつ貯めたんだか遺産も結構な額が残されていたから生活の心配はないこと。これならば、一人でも生きていける。

 

お葬式までは、色々忙しかったから感じることもなかったが、お葬式が済んでしまうと心にぽっかり穴が開いてしまったようだ。

「今までも世界中飛びまわってていないようなもんだったからあんまり実感わかないけど、もういないんだよね・・・」

遺影を見ても、父親はまだ生きているような気さえしてしまう。ずいぶん突然だったから心の準備も出来ていなかったし。そんなことを考えていると言い知れぬ感覚に襲われそうになって自分を叱咤する。



「私はこれから独りで生きていかなきゃならないんだから強くならなきゃ」

「ピンポーン」

そう気合いをいれるとちょうど玄関のチャイムが鳴った。

「お線香あげに来た人かな?はいはーい、今出ますよ」

急いで玄関に向かいドアを開ける。そこには銀色の髪をした綺麗な顔の青年が立っていた。

長身で切れ長の目に白い肌をした和風男子といった感じの容貌だ。

こんな頭の宅配便やセールスマンのお兄さんはいないし、やっぱり父親の知り合いだろう。

しかし、父親の知り合いにはトリッキーな人も多かったが銀色の髪の人は見たことがない。



「いつきちゃん?」

「はい、そうですけど・・・」

誰だろうと考えている所にそう尋ねられて素直に答えてしまった。頷いてしまってから警戒心という言葉を思い出す。

「失礼ですが、どなた様ですか?」

「申し遅れました。僕は、あなたを幸せにするために来ました座敷童子です」



「・・・・・はい?」

座敷童子って、家にいる間はその家に繁栄をもたらしてくれるけど出ていったら家が没落するっていう、アレ?


いやいや、ありえないっしょ!!

とってもいい笑顔で自称座敷童子さんは自己紹介してくれたけど私からしてみれば頭のおかしい人だ。



(はっ!!もしかして新手の宗教勧誘?)

きっとそうに違いない。そうとわかれば早めにお帰りいただかなくては!!



「えーと、宗教とか興味ないんで別にいいですから・・・」

では、失礼します、と言ってドアを閉めようとしたが、その時超高速でドアの隙間に手が差しこまれた。



「ま、待ってください。僕は宗教関係者じゃありません!!怪しい者でもありませんから、お話を聞いてくださいー」

「もう、十分怪しいですから帰ってください!!」


やばい、コイツやばいやつだ!!絶対、家に入れちゃいけない!


そう思ってドアを力いっぱい引くけれども相手もさるもので力を緩めようとはしない。





プッチーン


しばらく、押し問答をしていたが、あまりのしつこさに私の我慢が切れる音がした。自慢じゃないけど普段は我慢強いほうなんだからね。





「もう我慢ならん!!警察に突き出してやる!!」

そう言い放って、逆に思いっきりドアを開け放ってやる。

「えっ」

銀髪は驚いた顔をして吹っ飛んで倒れ込んだ。相手もドアを開けようとする力を緩めなかったもんだから二つの力の反動でそのままバランスを崩して吹っ飛んでしまったんだろう。


「はっはっはー、参ったか」

悪役よろしく銀髪を見下ろすが、反応がない。


(ん?)


「おおーい、警察いきますよ?」


しーん


(・・・・・あれ?)

やっぱり反応がない。


(やばい、私ってば人殺しちゃった・・・)

ざーっと全身の血の気が引いていき、急いでかけよって呼吸を確かめる。


(よかった・・。呼吸はある。気を失っているだけか)

ひとまず安堵してつめていた息を吐く。

(えーと、頭をうっているといけないから救急車呼ばなきゃ)


「すみません。今、救急車呼びますからね!!」

頭を揺らさないように肩をたたいて呼びかけ、家に電話をかけに戻ろうとするといきなり足をつかまれた。


「待って・・・・。病院だけは・・・ダメ・・・・」

途切れ途切れの声で告げるとそのまままた意識を失ってしまった。


「えっ、ちょっとちょっと!!私にどうしろっていうのよー!!」

しかし、それから銀髪は揺らしても叩いても起きることはなかったのだ。


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